届出前相談のタイミング
今年の7月1日から発効した「企業結合審査の手続に関する対応方針」では、従来の事前相談が廃止され、法律上の届出一本に統一されました。
そして、公取委との相談は、届出書の記載方法等に関してのみ受け付けることとされ、「届出前相談」と呼ばれています。
(「等」なので、厳密に届出書の記載方法に関しないものでも、相談に乗ってくれそうです。)
では、この届出前相談は、いつから受け付けてくれるのでしょう。
受付時期のお尻は、届出よりも前、ということで明らかなので、問題は、どれくらい早い段階で受け付けてくれるのか、ということです。
この点、対応方針では、届出前相談の時期については、
「当該届出を行う前に」
としか記されておらず、それ以上の限定はとくにありません。
パブコメ回答では、届出前相談のスケジュールについては、
「・・・届出前相談の時間的な制限が不明確ではないか。」
という質問(要は、すぐに回答をもらえるのか、2~3ヶ月かかるのか、という質問)に対して、
「・・・届出予定会社は、いつでも届出前相談を終了して届出書を提出することができるので、届出前相談をいつまで行うかは届出予定会社が決めることである。」
という回答がなされているだけで、どれくらい早い段階で相談を受け付けてくれるのかについては、とくに言及されていません。
ところで、法律上の届出をどれくらい早い段階でできるのかについては、法律上の制限はとくにありませんが、届出書には一定の添付書類が必要であることとの関係から、事実上、余りに早い(=添付書類が揃わない)時期における届出は、できないことになります。
例えば事業譲受の場合、届出規則6条2項に
① 当事会社の定款
② 当該行為に関する契約書の写
③ 当事会社の最近一事業年度の事業報告、貸借対照表及び損益計算書並びに総株主の議決権の百分の一を超えて保有するものの名簿
④ 当該行為に関し株主総会の決議又は総社員の同意があつたときは、その決議又は同意の記録の写
⑤ 届出会社の属する企業結合集団の最終親会社により作成された有価証券報告書その他当該届出会社が属する企業結合集団の財産及び損益の状況を示すために必要かつ適当なもの
が添付書類として必要であると規定されています。
①の定款、③の計算書類、株主名簿は、まともな会社なら通常あるでしょうから、問題ないですね。⑤の有報等も、とくに問題ないでしょう。
④の総会決議等も、あったとき(通常は、事業譲渡に法律上必要なときでしょう)に出せばよいので、無ければ出さないで良いです。
問題は、②の契約書の写しです。
ただこの契約書の写しは、どのような事業が譲渡されるのかが分かるような内容のものであればよく、いわゆるMemorandum of Understanding (MOU)のようなもので構いません(ただし、最終契約を締結した段階で追完する)。
なので、ひとまずMOUがあれば、普通は届出書は受理されます。
(これに対して、まだ買主候補の1つに過ぎず、ターゲットの入札参加中である、というような場合は、届出をするのは無理でしょう。)
では、届出前相談はどうでしょうか。契約書の写しは必要でしょうか。
あくまで届出前相談は任意の行政サービスですから、公取委に強制することはできませんが、私は、MOU締結前でも届出前相談は受け付けられると考えます。
理由は、届出書に必要な添付書類が揃って無くても、届出前相談に回答することは可能なはずであり、また、MOUの締結前に相談を受け付けて欲しいという需要は、スケジュールの関係から、それなりにあり得ると思われるからです。
ちなみに届出前相談の回答をもらうのにどれくらい時間がかかるのかについては、公取委のQ&Aで、
「
と回答されています。
(ただ、簡単な記載事項の確認なら、実務的な感覚としては2週間もかからず、即日とか、2,3日で回答してくれます。)
一定の取引分野についてが、まさに聞きたいことの中心であるので、早く回答して欲しいところですが、こればかりは、時間がかかるのは仕方のないことであり、「内容により回答に掛かる時間は異なります。」というのもやむを得ないでしょう。
ですが、そうであるからこそ、できるだけ早く届出前相談は受け付けて欲しいのです。
実務では、市場画定に関する公取委の考えが明らかになればほぼ結論が見える、というケースも少なくないので、市場画定に関する届出前相談は、あなどれないのです。
ちなみに、対応方針では、届出不要な企業結合に関する相談も任意に受け付けるとされていますが、その時期について、Q&Aでは、
「
とされています。
つまり、具体的な計画内容を示すことができれば、契約書(MOUなども含め)は不要、ということです。
実質的な回答をする届出不要事案の相談ですらそうなのですから、実質的な回答はしない届出前相談の場合にも、それと同じか、それよい早い段階で相談を受け付けるべきでしょう。
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