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2011年7月10日 (日)

下請法の「情報成果物作成委託」について

下請法の対象である「情報成果物作成委託」について、まとめておきます。

「情報成果物作成委託」というのは、簡単に言うと、システムソフトの作成をお客さんから受注したソフトウェアメーカー(親事業者)が、その作成を下請に出すような場合です。

ですが、「情報成果物」は、下請法2条6項で、

 プログラム(・・・)

 映画、放送番組その他影像又は音声その他の音響により構成されるもの

 文字、図形若しくは記号若しくはこれらの結合又はこれらと色彩との結合により構成されるもの

 前三号に掲げるもののほか、これらに類するもので政令で定めるもの」

と、何でも入るような、かなり幅広い定義がされています(単純な商品は、2条1項の「製造委託」でカバーされます)。

つまり、「情報成果物」というラベルに反して、

「情報」(=「ある事柄に関して知識を得たり、判断のより所としたりするために不可欠な、何らかの手段で伝達(入手)された種種の事項(の内容)」・新明解国語辞典)

という日本語に即した絞りは、まったくかけられていません。

むしろ情報成果物作成委託は、それまで下請法にあった製造委託や修理委託でカバーできない物の作成の委託をカバーするためにできた概念なので、「情報」で絞られていないのは、当然といえば当然かもしれません(なので、ちょっとネーミングに難あり)。

4号の政令は、今のところありません(もし規定されるとしたら、「下請代金支払遅延等防止法施行令」に追加されるのでしょう)。

でも現行法でも、

2号で「映像(視覚に訴える動く物)and/or 音声(聴覚に訴えるもの)」が、

3号で「文字 and/or 記号 and/or 色彩(視覚に訴えるが、動かない物?)」が、

1号で、コンピュータに働きかけるプログラムまでもが、

カバーされているので、既に相当広く、4号に何が来るのか(1~3号でカバーされず、しかも製造委託でもカバーできないもの?)、ちょっと想像できません(大脳中枢に直接働きかける電気信号とか?ほとんど、「マトリックス」の世界ですね・・・)。

なお、製造委託と情報成果物作成委託の違いをイメージ的に表現すると、

製造委託→物理的生産物、ハードの作成に重点、

情報成果物作成委託→知的生産物、ソフトの作成に重点、

という感じです。

公取委のQ&AのQ15では、

ポスターのデザインの委託→情報成果物作成委託、

ポスターの印刷の委託→製造委託、

と整理されています。ややこしいですね。

さていよいよ本題ですが、情報成果物作成委託は、下請法2条3項で定義されていて、大きく分けて2種類のものがあります。

1つめ(2条3項の前半)が、

「事業者が

①業として行う提供

若しくは

②業として請け負う作成

の目的たる情報成果物

作成の行為の全部又は一部を他の事業者に委託すること」

というものです。

①は、「(自ら)業として行う提供(の目的たる情報成果物の作成の委託)」なので、そういう情報成果物(プログラムとか)を、親事業者自らお客さんに提供している、という類型です。

②は、「業として請け負う作成(の目的たる情報成果物の作成の委託)」なので、情報成果物の作成を親事業者がお客さんから請け負っている、という類型です。

①と②の区別は場合によっては微妙ですが、どちらでも結論には違いはないのであまり気にしなくていいでしょう。

・・・と言ってしまうと身も蓋もないので(笑)、まず②から説明すると、②は、親事業者とお客さんの関係が請負(請負人がある仕事を完成することを約し、注文者がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約すること。民法632条)である場合です。

請負なので、仕事の完成に、お客さんの注文の力点があります。

例として、

「ソフトウェア開発業者が、ユーザーから開発を請け負うソフトウェアの設計書の作成を他のソフトウェア開発業者に委託すること」

というのが挙げられています(粕渕他編著「下請法の実務(第3版)」p49)。

開発を請け負うわけですから、特注のソフトなんでしょうね。

(細かいことを言うと、上の例では、お客さんが親事業者に発注しているのは、ソフトウェアの開発で、親事業者が下請に出すのは、ソフトウェアの設計書の作成です。なので、「設計書の作成」は、「ソフトウェアの開発」の「一部」だ、という整理なのでしょう。)

これに対して、①は、親事業者自身がそのお客さんに対して情報成果物を提供する(報告書なら、報告書を渡す。プログラムなら、ライセンスしたり、CDロムに焼いて渡す)、という場合です。

仕事の完成はお客さんからの注文の目的ではなく、もっぱら情報成果物の提供が注文の目的である、ということです。

例として、

「プログラム開発業者が、ユーザーに提供する汎用〔広くいろいろな用途に使える〕アプリケーションソフトの一部の開発を他のプログラム開発業者に委託すること」

というのがあります(前記粕渕p47)。

こちらは、汎用品なわけですね。

でもよく考えてみると、請負の場合でも、目的物は普通、お客さんに「提供」するでしょうから、そういうものは、①に入れても②に入れても構わない気もします(お客さんに情報成果物を提供しない請負の場合(例えば、市場調査の依頼を受けて、お客さんにプレゼンだけして、報告書は渡さないような場合?)には、②だけに当たることになります)。

それをあえて(常識的に)分ければ、

成果物の提供が注文の主な内容の場合→①、

仕事の完成が主な内容の場合→②、

というところでしょうか。

情報成果物作成委託の2つめ(2条3項の後半)が、

「事業者が

その使用する〔つまり、自己使用〕情報成果物の作成を業として行う場合に

その情報成果物の作成の行為の全部又は一部を

他の事業者に委託すること」

というものです。

自分で使う物を「業」といえるくらいに反復継続して社内で作っている場合に、あえて外に発注する場合ですね。

自前でもできるけど外注に出す場合には、下請いじめが起きやすいので、下請法の対象にした、ということです。

なので、自前で作っていない(作れない)場合は、この類型の情報成果物作成委託には該当しません。

公取委の「下請取引適正化推進講習会テキスト」p12では、

「事務用ソフトウェア開発業者が、自社で使用する会計用ソフトウェアの一部の開発を他のソフトウェア開発業者に委託すること」

という例が挙がっています。

事務用ソフトウェア開発業者なら、会計用ソフトウェアも自社で作ろうと思えば作れるので、情報成果物作成委託にあたる、ということですね。

ところで、「情報成果物作成委託」の「委託」の意味については、事務総長通達「下請代金支払遅延等防止法に関する運用基準」で、

「この法律で『委託』とは,事業者が,他の事業者に対し,給付に係る仕様,内容等を指定して物品等の製造(加工を含む。)若しくは修理,情報成果物の作成又は役務の提供を依頼することをいう。」

とされていますので、製造委託の場合によく問題になる、既製品の売買は「委託」にあたらない(仕様等を指定していないので)、という論点は、情報成果物作成委託の場合でも、一応問題になります。

でも、情報成果物の場合には、オーダーメイドが普通で、既製品というものはあまりないので(お客さんに売るのが汎用ソフトでも、汎用ソフトの全部または一部の開発が、親事業者からの仕様の指定も不要なくらいに規格化されて定型的にできる、ということはないでしょう)、事実上、この論点が問題になることは少ないのでしょう。

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コメント

親会社の企画部門より同社社内システムの開発依頼を受けて支払を請求書で行うとなった場合、同社システム部門より「情報成果物を転売商品のように扱うことは違法です。」
と注意されたのですがどういうことでしょうか。

キーワード検索をして探してもこれといった回答が見つけられません。
どのようなことが想定されると思われますか。
下請法にも抵触しないような気がしますが。。。

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