【独禁法実務の参考文献】
「独禁法でどの本がお勧めですか」という質問を時々受けるので、私が仕事でよく参照する文献を挙げておきます。
(あまり人様の書いたものをどうのこうのいうのは性に合わないのですが、自分が知らない分野を勉強するとしたら、何が信頼できる文献かはやっぱり真っ先に知りたい情報ですから、情報提供のために、率直に書く次第です。)
①白石忠志「独占禁止法(第2版)」(有斐閣・2009年)
言わずと知れた、東大白石教授の基本書です。
この本だけを読んで理解できる人には、実務の理論面については、この一冊でほぼ充分だと思います。(個別のケースは原典を自分で読んで理解する。)
おかしな特定の立場に染まらず、学説の紋切り型思考にはまることもなく、実務のありのままの姿を描こうという客観的な姿勢が、実務ではとても参考になります。
脚注で、判決、審決、ガイドラインなどにも網羅的に触れられているのも便利です。とにかく、情報量とその正確性は圧倒的です。
あと、条文の文言をていねいに拾って解釈されているので、実務で初めて出会う問題を考える際の参考となります。他のどの本にも書いていないことがこの本には書いてあって、「さすがだなぁ」と思ったことが何度もあります。
ただ、「同じことはまとめて総論に書く」という立場が徹底されているので、世の中でオーソドックスな切り口からこの本を紐解くと、「○○の点は総論○頁で既に述べた」みたいに、別の章に飛ばされるので(それでも、相互参照が極めて丁寧なので困らないのですが)、独禁法の体系が理解できていないと、例えばこの本を読んで意見書を書くときには、あっちにいったりこっちにいったり、ということが必要になり、自分の頭で組み直す必要があります。
「もっとオーソドックスな本がいい」という方には、
金井・泉水・川濱他「独占禁止法(第3版)」(弘文堂・2010年)
をお勧めします。
②厚谷他編「条解独占禁止法」(弘文堂・1997年)
既に絶版ですが、未だに利用価値の高いコンメンタールです。
条文の文言を丁寧に拾って解説してあり、あるべきコンメンタールの姿です。
実務では、何はともあれ、条文の文言をとっかかりにしてリサーチが始まり、条文の文言を舞台に議論が展開されますので、時間の限られた実務家にとってコンメンタールはどの法分野でも重要なツールですが、独禁法の世界では、今でもこの本がバイブル的な存在だと思います。
今アマゾンで見たら、中古で1万円近くします(定価8400円)。
手に入るうちに、手に入れておきましょう。
③伊従他編「実務解説独禁法Q&A」(青林書院・2007年)
真に独禁法実務を知る、一流の独禁法実務家からなる執筆陣による、Q&A形式の実務書です。
目の前の問題に、大まかでも良いからすぐに答えを出すには、これに勝る本はありません。
記述もかなり踏み込んでおり、実務の本当の姿が分かります。
独禁法の専門家でなくても、この本は理解しやすいし、この本を読めば大きく間違った答えをすることはないでしょう。
④川濱他「企業結合ガイドラインの解説と分析」(商事法務・2008年)
学者の方々による執筆ですが、ガイドラインの解説なので、実務で大変重宝します。
企業結合の意見書を書くのによく参考にします。
⑤山木編著「Q&A特許ライセンスと独占禁止法」(別冊NBL59号・商事法務・2000年)
旧ガイドラインの公取委職員による解説書ですが、未だに利用価値が高いです。
公取委の方の著作とは思えないくらい(失礼!)、踏み込んだ、かつ合理的な内容の記述で、未だ類書もなく、とても参考になります。
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でもまだ手に入るだけましなほうで、私は数年、アマゾンで探しました(事務所の図書館にはあったけど)。
⑥「独占禁止法関係法令集(平成22年版)」(公正取引協会)
その名の通り、独禁法の法令集です。通称、「黄色い六法」(と呼んでいるのは、うちの事務所だけかな)。
規則やガイドラインまで網羅されているので、今ではネットで全て手にはいるとはいえ、やはりこの六法は実務では欠かせません。
⑦粕渕他「下請法の実務(第3版)」(公正取引協会・2010年)
公取委職員による下請法の解説書です。下請法実務はこの本で決まりです。
【2012年1月12日追記
優越的地位濫用と下請法については、
長澤哲也著「優越的地位濫用規制と下請法の解説と分析」(商事法務・2011年)
を強くお勧めします。
特殊指定もまとめて説明してあって、知りたいことが一冊ですぐ分かり、しかも公取委の見解がおかしな点は適切な指摘がされていて、一度使えば誰でも良さが納得できることでしょう。実務家必携です。】
⑧笠原他「景品表示法(第2版)」(商事法務・2010年)
消費者庁職員による景表法の解説書です。景表法も、ほぼこれで決まりでしょう。
