リーニエンシーの共同申請の際の注意点
平成21年改正で、グループ会社共同でリーニエンシー(課徴金減免制度)の申請ができることになりました(独禁法7条の2第13項)。
そしてこの場合、減免規則6条の2では、減免申請の報告書は、
「連名で提出しなければならない」
とされています。
ですので、減免申請の報告書の作成者欄を複数つくって、各社の名称、住所、代表者の役職名等、書式の所定の事項を、全社分記入して、ハンコを押す、ということになります。
しかし、ここでちょっと問題があります。
書式では、申請者の名称は申請書の冒頭(標題、日付、宛先(公取委)の次)に記載することになっています。
ですが、この冒頭部分に、例えば申請グループ会社5社の分のハンコをつくとなると、1枚の紙が5社を回ることになります。
これは、一刻を争うリーニエンシーの申請の場合、致命的な遅れになりかねません。
そこで、ハンコを押す部分を(冒頭ではなく)末尾に回すことにして、記名押印部分を別の紙として(よく、契約書でサイン欄が別になっているイメージです)、1枚に1社、会社名と住所、そしてハンコをついて、例えば親会社にファックスかPDFで送り、親会社で取りまとめて1通の報告書の体裁にして、公取にファックスする、という方法を取ることが考えられます。
あるいはバリエーションとして、記名欄は5社全部を1枚の紙にまとめ、各社自社の分だけ記名押印する(その結果、5社の記名欄のうち1社分だけ埋まって他の4社分は空欄の紙が、5枚できることになる)ことにしたほうが、共同申請であることが一層明らかになって、よいかもしれません。ちょっと見た目は悪いですが、見た目を気にしている場合ではありません(笑)。
(なお、公取へファックスした後、各社のハンコを押した署名欄の紙の原本は、本社で綴じて原本とし、遅滞なく公取委に提出することになります。減免規則1条4項。)
なお、減免申請は代理人名でもできますが(減免規則6条の2)、この場合には、報告書自体には代理人のハンコがあれば足り、会社のハンコは不要ですから、以上のような問題は生じません。
委任状は、共同申請の場合でも、各社別々で構わないと考えられます。
つまり、1通の委任状に全社が押印する必要はなく、同じ弁護士を(各社別々の委任状で)代理人として選任しさえすれば、委任状に敢えて「共同申請する権限の委任」とか書いていなくても、共同申請を委任する趣旨であることは明らかなので、問題ないと考えます。
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