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2011年5月

2011年5月31日 (火)

日本遊戯銃協同組合事件の百選解説について

事業者団体による共同ボイコットが問題になった著名な事件である日本遊戯銃協同組合事件の解説が、経済法判例・審決百選の45番にありますが、解説が一部間違っていますので、注意喚起しておきます。

解説では、

「本判決は、本件の事実関係に基づいて、

特に事業者団体の構成事業者でない三懇話会会員(問屋)がX〔注・原告デジコン電子〕と競争関係にあると位置付けて

Y1〔注・被告日本遊戯銃協同組合〕が

これらに

Xに対する間接の共同ボイコット(旧〔昭和57年〕一般指定1項2号)を行わせた

という法律構成を採用している。」

とされています。

しかし、判決文では、(ちょっと長いですが引用すると)

「〔一連の被告組合の行為は〕

事業者団体である被告組合が、

互いに競争者の関係に立つ事業者である被告組合の組合員、

及び

同様に競争者の関係に立つ事業者である三懇話会会員

に要請し、

一致して、小売店に対し、

特定の事業者である原告との取引を拒絶させる行為(・・・一般指定1項2号)をさせるようにする行為であって、

独禁法の定める事業者団体の禁止行為である『事業者に不公正な取引方法に該当する行為をさせるようにすること』(・・・独禁法8条1項5号・・・)という構成要件に形式的に該当すると認められる。」

とされています。

判決は、よく読むと分かるのですが、単純に、事実関係を独禁法8条1項5号(当時)に当てはめているだけです。

まず前提として、当時の一般指定1項(共同の取引拒絶)は、以下のようなものでした。

「正当な理由がないのに、自己と競争関係にある他の事業者(以下「競争者」という。)と共同して、次の各号のいずれかに掲げる行為をすること。

1 ある事業者に対し取引を拒絶し又は取引に係る商品若しくは役務の数量若しくは内容を制限すること。

2 他の事業者に前号に該当する行為をさせること。」

本件では、2号の共同の間接取引拒絶のみが問題になっているので、条文を再構成すると、

「正当な理由がないのに、競争者と共同して、他の事業者に、ある事業者に対し取引を拒絶する(←「拒絶する」のは、「他の事業者」)ことをさせる(←「させる」のは、違反者自身)こと。」

となります。

さらに独禁法8条1項5号に、一般指定1項2号を取り込んで、条文を再構成すると、

「事業者団体は、

事業者に

『正当な理由がないのに、競争者と共同して、他の事業者に、ある事業者に対し取引を拒絶することをさせること』

をさせるようにすること」

となります。

そして、判決は、本件をこの条文にきれいに当てはめています。

つまり、

「事業者団体〔=被告組合〕は、

事業者〔=被告組合の各組合員、および各問屋〕に

『正当な理由がないのに、

競争者〔=被告組合の各組合員にとっては、他の組合員。各問屋にとっては、他の問屋〕と共同して、

他の事業者〔=小売店〕に、

ある事業者〔=原告デジコン電子〕に対し取引を拒絶する(←「拒絶する」のは、小売店)ことをさせる(←「させる」のは、被告組合の組合員および問屋)こと』

をさせる(←「させる」のは、被告組合)ようにすること」

となります。

判決が、

「互いに競争者の関係に立つ事業者である被告組合の組合員」

「同様に競争者の関係に立つ事業者である三懇話会会員」

といっていることからも分かるように、判決は、被告組合の組合員は相互に競争者であり、三懇話会会員(問屋)は相互に競争者である、という認識です。

また、それだけで、一般指定1項2号の要件は、十分に満たされます。

百選の解説にあるような、

「本判決は、・・・問屋がXと競争関係にあると位置付けて、」

というような認定は、どこにもありません。

本件はむしろ、判決がやったように、淡々と事実関係を条文にあてはめていけば、必然的に条文に該当するような事実関係だったので、何も、「問屋が〔メーカーである〕Xと競争関係にある」などという認定をする必要はなかったのです。

解説がなぜ判決を、百選記載のように読んだのか、定かではありません。

われわれ実務家は、愚直なくらい、淡々と条文へのあてはめをするというクセが身に染みついていますので、判決の法律構成は非常に明快で、分かりやすいです。

これに対して、研究者の先生方はどうも、「事業者団体による間接の共同ボイコット」とか、講学上の概念(あるいは、レッテル)が頭に染みついていて、解説も、そういうレッテルに引っ張られる傾向があるような気がします。

ともあれ、有斐閣の判例百選といえば、いろいろなところで参照される文献ですし、学生さん達に誤解があってもいけないので、注意喚起をしておく次第です。

2011年5月30日 (月)

リーニエンシーの共同申請の際の注意点

平成21年改正で、グループ会社共同でリーニエンシー(課徴金減免制度)の申請ができることになりました(独禁法7条の2第13項)。

そしてこの場合、減免規則6条の2では、減免申請の報告書は、

「連名で提出しなければならない」

とされています。

ですので、減免申請の報告書の作成者欄を複数つくって、各社の名称、住所、代表者の役職名等、書式の所定の事項を、全社分記入して、ハンコを押す、ということになります。

しかし、ここでちょっと問題があります。

書式では、申請者の名称は申請書の冒頭(標題、日付、宛先(公取委)の次)に記載することになっています。

ですが、この冒頭部分に、例えば申請グループ会社5社の分のハンコをつくとなると、1枚の紙が5社を回ることになります。

これは、一刻を争うリーニエンシーの申請の場合、致命的な遅れになりかねません。

そこで、ハンコを押す部分を(冒頭ではなく)末尾に回すことにして、記名押印部分を別の紙として(よく、契約書でサイン欄が別になっているイメージです)、1枚に1社、会社名と住所、そしてハンコをついて、例えば親会社にファックスかPDFで送り、親会社で取りまとめて1通の報告書の体裁にして、公取にファックスする、という方法を取ることが考えられます。

あるいはバリエーションとして、記名欄は5社全部を1枚の紙にまとめ、各社自社の分だけ記名押印する(その結果、5社の記名欄のうち1社分だけ埋まって他の4社分は空欄の紙が、5枚できることになる)ことにしたほうが、共同申請であることが一層明らかになって、よいかもしれません。ちょっと見た目は悪いですが、見た目を気にしている場合ではありません(笑)。

(なお、公取へファックスした後、各社のハンコを押した署名欄の紙の原本は、本社で綴じて原本とし、遅滞なく公取委に提出することになります。減免規則1条4項。)

なお、減免申請は代理人名でもできますが(減免規則6条の2)、この場合には、報告書自体には代理人のハンコがあれば足り、会社のハンコは不要ですから、以上のような問題は生じません。

委任状は、共同申請の場合でも、各社別々で構わないと考えられます。

つまり、1通の委任状に全社が押印する必要はなく、同じ弁護士を(各社別々の委任状で)代理人として選任しさえすれば、委任状に敢えて「共同申請する権限の委任」とか書いていなくても、共同申請を委任する趣旨であることは明らかなので、問題ないと考えます。

2011年5月28日 (土)

企業結合の届出手続における問題解消措置の位置付け

企業結合の法定の届出手続の中には、いわゆる問題解消措置(レメディ)をどのように扱うのかについて、正面から定めた規定はありません。

唯一、株式取得に関する10条の9項(他の企業結合にも準用されます)において、

「当該届出に係る株式の取得に関する計画のうち、第一項の規定に照らして重要な事項が当該計画において行われることとされている期限までに行われなかつた場合」

には、排除措置命令を出すための事前通知の期限(届出受理から120日か、追加報告が完了してから90日の、どちらか遅い方)が適用されない、とされているだけです。

つまり、ここでいう、

「第一項の規定に照らして重要な事項」

というのが、いわゆる問題解消措置(この措置がなければ10条1項違反になるところ、この措置があるために10条1項違反を免れるような措置)のことであり、それが届出書に記載された期限までに行われなかった場合には、排除措置命令はいつまでも出せる、ということになります。

ところで、法定の届出の前にいわゆる任意の事前相談を行う場合には、事前相談で問題解消措置とその期限についても公取委と合意できていますから、その合意に従って、法定の届出書を提出すればよいことになります。

これに対して、事前相談を行わず、いきなり法定の届出をした場合には、どうなるのでしょうか。

まず、事前相談をしていないので、法定の届出書に問題解消措置を書くことは、通常、考えられません。

(理屈の上では、届出をする前に当事者の側で、「このくらいの問題解消措置を取れば結合は認められるだろう」と、先回りをして判断して届出書に問題解消措置を書くことも考えられますが、実際には、そのようなことはほとんど無いでしょう。)

ということは、問題解消措置は、届出後に、公取委の審査の過程で、公取委の反応を見ながら提案していく、ということになると思われます。

実際、今年の3月4日に公表された「企業結合審査の手続に関する対応方針(案)」(同日付プレスリリースの別紙2)では、

「届出会社は、届出規則第7条の2の規定に基づき、審査期間内において、いつでも、当委員会に対し、意見書又は審査に必要と考える資料の提出(問題解消措置・・・の申出を含む。)をすることができる。」

とされており、このことは、同対応方針(案)や届出規則改正がまだ成立していない現状においても、とくに異ならないでしょう。

(ちなみに、届出規則第7条の2というのは、

「(意見書及び資料の提出)

第七条の二 届出会社は、公正取引委員会が企業結合届出書を受理した日から法第四十九条第五項又は第九条の規定による通知を行う日までの間、いつでも、公正取引委員会に対し、意見書又は審査に必要と考える資料を提出することができる。」

という規定です。3月4日付プレスリリース別紙1

では、このような審査の過程で問題解消措置を申し出た場合、その後の手続(排除措置命令の期限や変更報告書の提出の要否)は、どうなるのでしょうか。

まず、変更報告書の提出の要否について考えてみましょう。

届出規則7条3項では、

「届出会社は、届出後株式の取得をした日又は合併、分割、株式移転若しくは事業等の譲受けの効力が生ずる日までに届出書類の記載事項に変更があつた場合(次項に規定する場合を除く。)は、遅滞なく、様式第十九号、様式第二十号、様式第二十一号、様式第二十二号、様式第二十三号又は様式第二十四号による変更報告書一通を公正取引委員会に提出しなければならない。」

とされ、同条4項では、

「届出会社は、届出後株式の取得をした日又は合併、分割、株式移転若しくは事業等の譲受けの効力が生ずる日までに届出書類の記載事項に重要な変更があつた場合は、改めて第二条の六〔注:株式取得の届出の規定〕、第五条〔同合併〕、第五条の二〔同分割〕、第五条の三〔同共同株式移転〕又は第六条〔同事業譲受〕の規定による届出書類を公正取引委員会に提出しなければならない。」

とされています。

つまり、重要でない変更の場合は3項に基づき変更報告書を提出し、重要な変更の場合は4項に基づき再度届出書を出し直す、ということになります。

そして、問題解消措置は、まさに結論に影響する記載内容なので、文言上は、「重要な変更」に該当すると言わざるを得ないように思われます。

またそのように解することが、独禁法10条9項1号の「重要な事項」が、問題解消措置を指すと解されていることとも整合的だと思われます。

しかしそうすると、法定の届出後に問題解消措置を申し出て公取委と事実上合意した場合には、必然的に届出規則7条4項が適用され、届出書を出し直すことになります。

そうすると、排除措置命令のための事前通知の期限は、出し直した届出書の受理の日から再度起算される、ということになります。

そうすると、届出受理の日から30日以内は取引を実行することができなくなります。

しかし、それは変だと思います。

公取委と事実上問題解消措置について合意しているのに(合意しているからこそ、変更後の届出書に書き込むわけです)、さらに30日取引実行できないというのは不合理です。

なので、この場合には、独禁法10条8項に従って、待機期間の短縮をするという取扱いにすべきでしょう。

そもそも論を言えば、問題解消措置の申し出が「重要な変更」に該当するとしても、届出書を丸ごと再度出し直さなければならないというのは、いかにも負担が大きいです。

というのは、審査には1年くらいかかることもまれではありませんが、そうすると、審査中に当事会社の事業年度を跨ぐことがあり、そすうると、直近事業年度の数字を再度集めなければならず、無用な負担だと思われるからです。

根本的には、本来審査の過程で内容の固まる問題解消措置(アメリカでもECでもそうです)の内容を、届出の段階で書かせることに無理があるのであって、そのようなことは事前相談をやることが前提でないと成り立ちません。

ですので、本来は、規則や法律の改正で、問題解消措置が申し出られた場合の取扱いについてきちんと定めておくべきなのでしょう。

そのような改正がなされるまでは、文言を杓子定規に適用せず、例えば、届出書全部を出し直すのではなく、出し直す届出書のうち問題解消措置を除く部分については当初の届出書を引用することにして(つまり、アップデート不要)、問題解消措置の部分だけ、具体的に記入し、提出することを認め、待機期間も0日に短縮する、という扱いにすべきだと思います。

2011年5月25日 (水)

外国競争当局との情報交換と守秘義務

平成21年改正により、公取委と海外競争法当局との情報交換に関する規定が独禁法に設けられました(43条の2)。

同条1項では、

「公正取引委員会は、・・・外国競争当局・・・に対し、その職務・・・の遂行に資すると認める情報の提供を行うことができる。」

とされています。

しかし、このことは、公取委がどんな情報でも外国の当局と交換できることを意味するわけではありません。

というのは、公取委の職員は、守秘義務を負っているからです(独禁法39条)。

この点、43条の2第2項では、

「公正取引委員会は、外国競争当局に対し前項に規定する情報の提供を行うに際し、次に掲げる事項を確認しなければならない。

 省略)

 当該外国において、前項の規定により提供する情報のうち秘密として提供するものについて、当該外国の法令により、我が国と同じ程度の秘密の保持が担保されていること。

号 省略)」

とされており、2号をみると、秘密情報も外国の当局に提供されることが予定されているのですが、だからといって、無制限に(守秘義務に反して)情報交換をしていいことにはなりません。

実際にも、公取委が当事者から入手した秘密情報を海外の当局と交換する場合には、当事者から同意を得ており、このような同意書は「waiver」と呼ばれています。

つまり、

①当事者から得た秘密情報を外国当局と交換するには、当事者の同意が必要(39条)、

②仮に当事者から同意を得ても、秘密の保持が担保されていない当局とは情報交換しない(43条の2第2項2号)、

ということです。

厳密に言えば、守秘義務の対象は「秘密」(39条)なので、「秘密」に該当しない情報であれば当事者の同意がなくても交換できるわけですが、秘密かどうかは微妙なことも多いですので、公の情報以外は基本的に秘密情報として扱うべきでしょう。

また、公取委が知った「事業者の秘密」は、「職務に関して知得した」(39条)ものであれば守秘義務の対象となるので、審査の対象になっている当事者から受け取った情報に限らず、第三者に対して審査権限を行使して任意または強制的に得た情報であっても、守秘義務の対象となると考えられます。

理屈を言えば、独禁法39条のような公法上の義務を、私人の同意により解除できるのか、という問題があり得ますが、当の本人が構わないといっているのですから、目くじらを立てることはないでしょう。

なお、独禁法39条では、「事業者の秘密」となっていますので、事業者でない法人や個人の情報は、同条の守秘義務では保護されないことになります。

これは、独禁法では違反者は事業者に限られることになっていることに引きずられたものと思われますが、公取委が審査の過程で事業者でない者から情報を得ることもあるでしょうから、あまり合理的な規定ではないと思います。

そのような場合は、国家公務員法100条の一般的な守秘義務で保護されることになります。

また、違反者が違反行為をした事実なんていうのは、最も秘密にしたい事実でしょうから、当然、守秘義務の対象になると考えられます。

したがって、被疑者自身の同意が無い限り、違反の事実を海外当局と情報交換してはいけないと考えられます。

2011年5月24日 (火)

独禁法の適用除外規定

海上運送法、道路運送法、航空法など、いくつかの法律では、明示的に、独禁法の適用が除外されています。

いずれの法律も似たような条文なので、海上運送法を例に取ると、同法28条では、

「(私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の適用除外)

第二十八条 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律 ・・・の規定は、

次条第一項の認可を受けて行う第一号から第三号までに掲げる行為

又は

第二十九条の二第一項の規定による届出をして行う第四号に掲げる行為

には、適用しない。

ただし、

〔①〕不公正な取引方法を用いるとき、

〔②〕一定の取引分野における競争を実質的に制限することにより利用者の利益を不当に害することとなるとき・・・

は、この限りでない。

号~四号  (省略)」

とされています。

まず、独禁法全般の適用を除外することになっていますので、文言上は、私的独占も、不公正な取引方法(拘束条件付取引など)も、不当な取引制限も、いずれも適用されないことになりますが、想定されているのは、運賃カルテルなどの不当な取引制限です。

なぜなら、同条の1号~4号に規定される行為は、(上では省略しましたが)いずれも競争者間の共同行為だからです。

文言上は、「共同経営に関する協定」も適用除外の対象ですので、日本の独禁法で「共同経営」が企業結合として処理されるのであれば、その限りで企業結合も適用除外の対象になり得ます。

しかし、日本の企業結合は株式取得や合併などの一定の法形式を用いる場合に限定されるので、結論としては、企業結合規制は適用除外にならないと考えられます。

唯一適用があるとすれば、損益共通契約の締結(独禁法16条1項5号)でしょうか。

ただ、この適用除外規定は、よく読むと、意味がよく分からないところがあります。

つまり、上記②のように、仮に

「一定の取引分野における競争を実質的に制限することにより利用者の利益を不当に害することとなるとき」

には、たとえ認可を取得し(1~3号の場合)、あるいは届出をしても(4号の場合)、適用除外にならない、ということです。

競争の実質的制限は、不当な取引制限が違法になるための要件ですから(正確には、競争の実質的制限がなければ「不当な取引制限」の定義に該当しない)、競争が実質的に制限されないのであれば、そもそも届け出る必要はないはずです。

つまり、競争を実質的に制限するからこそ届出がなされるのであり、届出をしても競争が実質的に制限される場合には、適用除外にならない、というのでは、届出の意義が半減してしまうように思われます。

そこで条文上は、単に競争の実質的制限がある場合には適用除外されないとするのではなく、競争の実質的制限により、「利用者の利益を不当に害することとなるとき」に限って、適用除外規定が適用されない(つまり、独禁法が適用される)、としています。

しかし、どのような場合に「利用者の利益を不当に害することとなるとき」に該当するのかは、定かではありません。

たんに競争者間の協定によって運賃が競争価格よりも吊り上げられるということは、「利用者の利益を不当に害することとなるとき」には該当しないというべきでしょう。そうでないと、適用除外される場合が無くなり、適用除外規定を設けた意味がなくなるからです。

そうすると、ここでの「利用者の利益」とは、競争価格でサービスを利用できる利用者の権利とは異なる利益である、ということになると思われます。

例えば、安全なサービスを利用できる権利とか、そういうことが考えられるかもしれません。

しかし、安全性のような、独禁法上の利益と関係ないものがここでの「利用者の利益」であると考えると、そのような利益が害される原因というか、因果の流れが、

「一定の取引分野における競争を実質的に制限する」

というステップを踏むことを要求していること(「~ことにより」)との整合性が説明できないように思われます。

つまり、安全性などが確保されない場合を適用除外規定から除外するのであれば、「競争の実質的制限」というステップ(因果の流れ)を要求する必然性はなく、「競争の実質的制限」を介在させない利益の侵害でも、適用除外規定を不適用にすべきように思われるからです(安全性なんかは独禁法と関係ないんだから適用除外されなくてもいいじゃないか、というのも一つの割り切った考えかも知れませんが)。

とすると、やはりここでの「利用者の利益」とは、独禁法上保護されるべき利益(あるいは、少なくとも、独禁法と関係のある利益)を指している、と考えるべきなのでしょう。

例えば、協定により競争価格よりも運賃が上がるのはやむを得ないので適用除外とするが、あまりに法外な料金を合意するような場合が、利用者の利益を不当に害することとなるとき」に該当するといえるかもしれません。

ただ、これには2つの問題があると思われます。

1つめは、カルテルによる「ほどほどの値上げ」と、「法外な値上げ」というのを、実際上区別できるのか、という点です(明確性の問題)。

2つめは、そもそも経済理論からして、独占者であっても好きなだけ価格をつり上げられるわけではなく、独占者が利益を最大化するレベルで落ち着くはずである、ということです。

なので、理論上も実際上も、「ほどほどの値上げ」と「法外な値上げ」は区別できないと思われます。

実務上は、ともかく届出をしておけば公取委に摘発されることはないであろう、ということで決着がついてしまうのですが、よく分からないところではあります。

あと1つだけ、海上運送法28条について細かいことを言うと、同条1号から3号までは、同一航路で運航している競争者を想定しているのに対して(1号の、「当該航路」、2号と3号の、「同一の航路」)、4号だけは、

「本邦の港と本邦以外の地域の港との間の航路」

といっているだけで、協定参加者が同一航路で運航していることを要求していません。

なので、ロサンゼルスから神戸港まで運航する事業者Aと、神戸港からシンガポールまで運航する事業者Bとが協定をする場合も、4号でカバーされることになります。

このような場合、事業者Aと事業者Bは競合サービスを提供している競争者ではなく、補完サービスを提供している事業者(ロサンゼルスからシンガポールまで行きたい人を考えて下さい)なので、厳密に言えば、そもそも競争の実質的制限がない、ともいえそうですが(とくに、一般旅客定期航路事業の場合には国土交通大臣の許可が必要(海上運送法3条)なので、潜在的競争者とも言いにくい)、ともかく、4号でカバーされることにはなります。

2011年5月18日 (水)

古い独禁法審決・判決のありがたみ

たぶん多くの独禁法専門家が本音のところで共有している感想だと思うのですが、独禁法の世界では、古い判決、審決は、あまり意味がありません。

(判決は数自体が極めて少ないので、主に公取委の古い審決を念頭に置いています。)

民法や刑法の世界などでは、古い判例の方が重宝されたりします。

それはなぜかというと、何十年も前に出された判決が、今も基本先例として生き続けているというのは、それだけ理論の普遍性があったというか、時間に揉まれても生き延びた、というありがたみがあるのだと思います。

私もたまに、明治時代とかの古い判決から、目の前の問題の解決の糸口が見つかることがあったりして、そういうときは、歴史の重みというか、先人の見識を感じたりします。

判例のリサーチをしても、「大審院にこんな判例がありました」なんて言われると、それだけで思わず説得されそうになります。

民法や刑法の判例は、ワインみたいなもので(といっても、私はお酒は飲まないので、よく分かりませんが・・・)、古いほど価値がある、みたいなところも、なきにしもあらずだと思います。

ところが、これが独禁法の世界になると、話がまるで違ってきます。

戦後間もなくの、東京高裁が理想に燃えていて、才能溢れる裁判官に恵まれていた時代に出された東宝スバル東京高裁判決のように、一部の例外を除いて、現代において参照すべきような裁判例は、古い判例の中にはほとんどない、審決に至ってはまったく無い、と言い切って良いように思います。

その原因は、独禁法という法律自体の歴史が浅いということがあるかもしれません。

でもそれ以上に、独禁法の理論が、主に経済学の理論の発展と、実務家への浸透に伴って、時代と共にどんどん進化してきた、ということがあると思います。

アメリカで、シカゴ学派が反トラスト法の解釈・運用を、がらっと変えてしまったように、です。

はっきり言って、古い審決には経済学的発想が微塵も感じられないものが多いです。

独禁法も法律ですから、経済学は関係ない(経済学者の議論に惑わされない)、と割り切るのも一つの立場だと思いますし、私も、死荷重とか弾力性とか、経済学の概念が分かる人にしか通じないような説明しかできないのでは、法律とは言えないのではないかと思います。

しかし残念ながら、古い審決には、法律的な論理の展開という観点からも、法律論としても洗練されていないものが目に付くように思います。

ですので、独禁法の判決、審決は、一般的に、新しいほど価値がある、と言い切って良いと思います。

古い物が重宝される世界というのは、ベテランにとっては居心地が良い世界でしょうが、おそらく独禁法は、そうではありません。

今最先端の議論だと思っていることが、10年後、20年後には、まったく通用しないものになっているかもしれません。

でもそれは、独禁法の魅力でもあり、やりがいを感じるところでもあるわけです。

2011年5月16日 (月)

株式への質権設定と株式取得の届出

株式に質権を設定する場合に、株式取得の届出は必要でしょうか。

結論としては、不要です。

条文で確認しましょう。

独禁法10条2項では、

「会社・・・は、他の会社・・・の株式の取得をしようとする場合・・・において、・・・届け出なければならない。」

とされています。

このように、あくまで届出の対象は株式の「取得」なので、株式に質権の設定を受ける場合には、届出の必要はありません。

なお、質権を実行して所有権を取得する場合には、その時点で、30日前に届出が必要になることは当然です(他の届出要件を満たすことが前提)。

なので、質権の実行をすることにより、発行会社に対する持株比率が20%を超えてしまうような場合は、予め、手持ちの株式を売却してから実行するなどして、質権実行後に20%を超えないようにすることを考慮すべきです。

ちなみに、株式に質権の設定を受けるのは金融機関のことが多いでしょうが、銀行の場合には、他の事業会社の議決権の5%を超えて取得してはならないことになっていますので(独禁法11条1項)、注意が必要です。

なお、独禁法10条2項但し書きでは、

「ただし、あらかじめ届出を行うことが困難である場合として公正取引委員会規則で定める場合は、この限りでない。 」

とされており、これを受けて、届出不要な場合が届出規則2条の7に定められていますが、これらは株式分割など、取得者の投資意思決定に基づかない取得の場合ばかりであり、質権の実行による取得は例外として挙げられていません(つまり、原則通り届出必要)。

質権以外の担保設定として、例えば譲渡担保の場合などがありえますが、譲渡担保でもやはり、法律上の「取得」であると言わざるを得ず、譲渡担保設定時に届出は必要でしょう。

ちなみに、取得後の議決権を売主に留保するような契約は、そもそも会社法上も無効ではないかと思われますが(当事者間では有効かも)、独禁法上も、そのような契約をして議決権を売主に留保して20%の届出基準を超えないようにする、というのは、やはり認められないと思われます(よって、届出必要)。

2011年5月13日 (金)

【法律文書を読むコツ】

私が普段から考えている、法律文書(契約書とか、意見書を想定していますが、判決などにも応用可)を読むときのポイントを、思いつくままに挙げておきます。

(「思いつくまま」なので、また後で追加するかもしれません。)

①文書の作成日はいつか

いつその文書が作成されたのか、というのは極めて重要で、自然と真っ先に目が行きます。一日違いが大違い、ということもあります。作成日が書いてないなどは論外。

②文書の作成者は誰か

これが誰かによって、文書の持つ意味がぜんぜん変わってきます。デューディリジェンスなどをしていると、似たような文書が似たような作成者名でたくさん出てきたりしますが、たとえ中身が同じでも、作成者が違ったら大違いです。

③文書の宛先は誰か

これも要注意。排除措置命令の宛先に入っているかいないかで大違いです。宛先が子会社なのか、親会社なのか、紛らわしい名前のときにはとくに注意。

④期限、締め切りはないか。

裁判所からの呼出状で、反論期限を過ぎたらえらいことです。契約書なら、契約期間が満了して終了していないか。

以上は形式面です。次に、中身の読解のコツについて。

①主語は誰か。

あるいは、「行為の主体は誰か」といってもいいでしょう。

また契約書とかで、長い悪文を読むときは、主語が何かを常に意識します。英語の契約書で、"Seller shall ..."と始まったら、その条項はSellerが義務を負うことを定めているのであって、主語が誰かは、ある意味、義務の中身以上に大事です。

またこれをはっきりさせておかないと、例えば契約実行の条件としての法律意見書をどちらの当事者が出す義務を負うのかで揉めたりします。

②各文章の文末まで、きちんと読む。

日本語でもそうですが、案外英語でも、法律文書の場合は、大事なことほど文章の最後に書いてあったりして、当たり前のことがつらつらと書いてあるので油断してたら、最後の最後でどんでん返しがあったりします。

③否定語に注意。

「ない」、「除く」、「no」、「excluding」、「unless」などの否定語を読み飛ばしたりすると、意味が正反対になりますので、とくに意識を集中します。

意味が反対になるというだけでなく、否定語は、否定される対象の生じる可能性を完全に否定したい、という、筆者の強い意志が表れていることが多いので、本質的に強力であることが多いです。

④いつの時点の話なのか。

例えば、「破産手続開始申立時」と「破産手続開始決定時」と「破産手続開始決定確定時」とでは、ぜんぜん意味が違います。時点を示すフレーズが出てきたら、神経を研ぎ澄ませましょう。

また、「~前」、「~後」、というフレーズも、その前には時点を表す言葉が来るので、要注意です。

⑤行為の相手方は誰なのか。

日本語なら、「~へ」とか「~に」とか「~に対して」、英語なら「to ...」の部分を、まず頭に焼き付けます。細かい中身はその後に理解します。

2011年5月 7日 (土)

事業者団体が違反行為をした場合の課徴金(8条の3)

独禁法では、事業者団体の行為が違法とされることがあります(独禁法8条)。

そして、そのような違法行為がなされた場合には、「事業者団体に対し」(独禁法8条の2第1項)、排除措置命令がなされます。

そして、事業者団体が違反行為をした場合にも課徴金がかかりますが、注意すべきなのは、課徴金納付命令がなされるのは、事業者団体に対してではなく、事業者団体の構成事業者に対してであることです(独禁法8条の3)。

ところで、事業者団体が不当な取引制限をしたときに、これを構成事業者の行為とも評価できる場合には、その「いずれの刑責を問うか」は、公取委や検察官の合理的裁量に委ねられているというのが判例です(石油価格協定刑事事件・最判昭和59年2月24日)。

これに対しては、「いずれか」の刑責を問うのではなく、「いずれも」問えるとすべき、という学説の批判があるところです。

以上の議論の素材は刑事事件ですので、課徴金には直接関係ないですが、課徴金は、金額のみならず、課す課さないについても公取委の裁量はない、という建前を忠実に守ると、不当な取引制限が事業者団体で行われた場合、

①構成事業者の違反行為(3条)

②事業者団体の違反行為(8条)

の、いずれとも評価できる場合には、公取委には課徴金を課さないという裁量はないのだから、むしろ、いずれの行為としても課徴金を課さなければならないことになり、その結果、

①’構成事業者の違反行為に対する課徴金(7条の2)→構成事業者が払う

②’事業者団体の違反行為に対する課徴金(8条の3)→これも構成事業者が払う

ということになり、二重に課徴金が課される、ということになりそうですが、やはりそれはおかしいので、課徴金の場合も、団体の行為とみるか構成事業者の行為とみるかは公取の裁量に委ねられており、この場合は、どちらかを選択するしかなく、両方を選択することは許されない、と解すべきでしょう。

なお、課徴金がかかる行為類型は、不当な取引制限系のものに限られます(不公正な取引方法系はもちろん、私的独占系も、課徴金はかかりません。8条の3)。

せっかくですので、8条の3によって読み替えられた関係法条(7条の2第1項、3項、5項、6項、10項~18項、22項、23項、27項)を記しておきます。

◆読替後の7条の2第1項

事業者団体が、

不当な取引制限又は不当な取引制限に該当する事項を内容とする国際的協定若しくは国際的契約で次の各号のいずれかに該当するものをしたときは、

公正取引委員会は、第八章第二節に規定する手続に従い、

当該事業者団体の構成事業者(事業者の利益のためにする行為を行う役員、従業員、代理人その他の者が構成事業者である場合には、当該事業者を含む。以下この条において「特定事業者」という。)に対し

当該行為の実行としての事業活動を行つた日から当該行為の実行としての事業活動がなくなる日までの期間・・・における当該商品又は役務の政令で定める方法により算定した売上額・・・に百分の十・・・を乗じて得た額に相当する額の課徴金を国庫に納付することを命じなければならない。(以下省略)」

◆読替後の7条の2第3項(市場占有率の定義)→準用されるが、読替なし。

◆読替後の7条の2第5項

「第一項の場合において、当該特定事業者が次のいずれかに該当する者であるときは、同項中「百分の十」とあるのは「百分の四」と、「百分の三」とあるのは「百分の一・二」と、「百分の二」とあるのは「百分の一」とする。 (以下、省略)」

◆読替後の7条の2第6項(本文のみ、準用)

「第一項の規定により課徴金の納付を命ずる場合において、

当該特定事業者が、当該違反行為に係る事件について〔立入検査〕・・・が最初に行われた日・・・の一月前の日・・・までに当該違反行為の実行としての事業活動をやめた者(当該違反行為の実行としての事業活動に係る実行期間が二年未満である場合に限る。)であるときは、

第一項中「百分の十」とあるのは「百分の八」と、「百分の三」とあるのは「百分の二・四」と、「百分の二」とあるのは「百分の一・六」と、前項中「百分の四」とあるのは「百分の三・二」と、「百分の一・二」とあるのは「百分の一」と、「百分の一」とあるのは「百分の〇・八」とする。」

◆読替後の7条の2第10項

「公正取引委員会は、第一項の規定により課徴金を納付すべき特定事業者が次の各号のいずれにも該当する場合には、同項の規定にかかわらず、当該事業者に対し、課徴金の納付を命じないものとする。

 公正取引委員会規則で定めるところにより、単独で、当該違反行為をした事業者団体の特定事業者のうち最初に公正取引委員会に当該違反行為に係る事実の報告及び資料の提出を行つた者・・・であること。

 当該違反行為に係る事件についての調査開始日以後において、当該違反行為の実行としての事業活動をしていた者でないこと。 」

◆読替後の7条の2第11項

「第一項の場合において、公正取引委員会は、当該特定事業者が第一号及び第四号に該当するときは同項、第五項又は第六項の規定により計算した課徴金の額に百分の五十を乗じて得た額を、第二号及び第四号又は第三号及び第四号に該当するときは第一項又は第五項から第九項までの規定により計算した課徴金の額に百分の三十を乗じて得た額を、それぞれ当該課徴金の額から減額するものとする。

 公正取引委員会規則で定めるところにより、単独で、当該違反行為をした事業者団体の特定事業者のうち二番目に公正取引委員会に当該違反行為に係る事実の報告及び資料の提出を行つた者・・・であること。

 公正取引委員会規則で定めるところにより、単独で、当該違反行為をした事業者のうち三番目に公正取引委員会に当該違反行為に係る事実の報告及び資料の提出を行つた者・・・であること。

 公正取引委員会規則で定めるところにより、単独で、当該違反行為をした事業者のうち四番目又は五番目に公正取引委員会に当該違反行為に係る事実の報告及び資料の提出・・・を行つた者・・・であること。

 当該違反行為に係る事件についての調査開始日以後において、当該違反行為の実行としての事業活動をしていた者でないこと。 」

◆読替後の7条の2第12項

「第一項の場合において、公正取引委員会は、当該違反行為について第十項第一号又は前項第一号から第三号までの規定による報告及び資料の提出を行つた者の数が五に満たないときは、当該違反行為をした事業者のうち次の各号のいずれにも該当する者・・・については、第一項、第五項又は第六項の規定により計算した課徴金の額に百分の三十を乗じて得た額を、当該課徴金の額から減額するものとする。

 当該違反行為に係る事件についての調査開始日以後公正取引委員会規則で定める期日までに、公正取引委員会規則で定めるところにより、単独で、公正取引委員会に当該違反行為に係る事実の報告及び資料の提出・・・を行つた者

 前号の報告及び資料の提出を行つた日以後において当該違反行為の実行としての事業活動をしていた者以外の者 」

◆読替後の7条の2第13項

次条第一号(不当な取引制限に相当する行為をする場合に限る。)又は第二号(不当な取引制限に該当する事項を内容とする国際的協定又は国際的契約をする場合に限る。)の規定に違反する行為をした事業者団体の特定事業者のうち二以上の特定事業者・・・が、公正取引委員会規則で定めるところにより、共同して、公正取引委員会に当該違反行為に係る事実の報告及び資料の提出を行つた場合には、

第一号に該当する場合に限り、当該報告及び資料の提出を単独で行つたものとみなして、当該報告及び資料の提出を行つた二以上の事業者について前三項の規定を適用する。この場合における第十項第一号、第十一項第一号から第三号まで及び前項第一号の規定による報告及び資料の提出を行つた特定事業者の数の計算については、当該二以上の特定事業者をもつて一の特定事業者とする。

 当該二以上の特定事業者が、当該報告及び資料の提出の時において相互に子会社等(特定事業者の子会社・・・又は当該事業者と親会社が同一である他の会社をいう。次号及び第二十五項において同じ。)の関係にあること。 」

◆読替後の7条の2第14項(親子判定に対抗できない議決権も含むとの規定)→読替なし。

◆読替後の7条の2第15項

「公正取引委員会は、第十項第一号、第十一項第一号から第三号まで又は第十二項第一号の規定による報告及び資料の提出を受けたときは、当該報告及び資料の提出を行つた特定事業者に対し、速やかに文書をもつてその旨を通知しなければならない。」

◆読替後の7条の2第16項

「公正取引委員会は、第十項から第十二項までの規定のいずれかに該当する特定事業者に対し第一項の規定による命令又は第十八項若しくは第二十一項の規定による通知をするまでの間、当該事業者に対し、当該違反行為に係る事実の報告又は資料の提出を追加して求めることができる。」

◆読替後の7条の2第17項

「公正取引委員会が、第十項第一号、第十一項第一号から第三号まで又は第十二項第一号の規定による報告及び資料の提出を行つた特定事業者に対して第一項の規定による命令又は次項の規定による通知をするまでの間に、次の各号のいずれかに該当する事実があると認めるときは、第十項から第十二項までの規定にかかわらず、これらの規定は適用しない。

 当該特定事業者(当該特定事業者が第十三項の規定による報告及び資料の提出を行つた者であるときは、当該特定事業者及び当該特定事業者と共同して当該報告及び資料の提出を行つた他の特定事業者のうち、いずれか一以上の特定事業者。次号において同じ。)が行つた当該報告又は提出した当該資料に虚偽の内容が含まれていたこと。

 前項の場合において、当該事業者が求められた報告若しくは資料の提出をせず、又は虚偽の報告若しくは資料の提出をしたこと。

 当該事業者団体がした当該違反行為に係る事件において、当該事業者が他の事業者に対し(当該特定事業者が第十三項の規定による報告及び資料の提出を行つた者であるときは、当該事業者及び当該事業者と共同して当該報告及び資料の提出を行つた他の事業者のうちいずれか一以上の事業者が、当該事業者及び当該事業者と共同して当該報告及び資料の提出を行つた他の事業者以外の特定事業者に対し)当該違反行為の実行としての事業活動を行うことを強要し、又は当該違反行為の実行としての事業活動をやめることを妨害していたこと。 」

◆読替後の7条の2第18項

「公正取引委員会は、第十項の規定により課徴金の納付を命じないこととしたときは、同項の規定に該当する特定事業者が行つた同項第一号の規定による報告に係る事件について当該特定事業者以外の特定事業者に対し第一項の規定による命令をする際に・・・、これと併せて当該事業者に対し、文書をもつてその旨を通知するものとする。 」

◆読替後の7条の2第22項

第一項の規定による命令を受けた者は、同項、第五項、第六項、第十一項、又は第十二項の規定により計算した課徴金を納付しなければならない。」

◆読替後の7条の2第23項(1万円未満の端数の切り捨て)→読替無し。

◆読替後の7条の2第27項

実行期間の終了した日から五年を経過したときは、公正取引委員会は、当該違反行為に係る課徴金の納付を命ずることができない。」

2011年5月 1日 (日)

排他取引の正当化理由(流通取引慣行ガイドライン注10)

流通取引慣行ガイドラインの注10では、以下のように定められています。

「例えば、次のように、自己の競争者と取引することを制限することについて独占禁止法上正当と認められる理由がある場合には、違法とはならない。

①完成品製造業者が部品製造業者に対し、原材料を支給して部品を製造させている場合に、その原材料を使用して製造した部品を自己にのみ販売させること

②完成品製造業者が部品製造業者に対し、ノウハウ(産業上の技術に係るものをいい、秘密性のないものを除く。)を供与して部品を製造させている場合で、そのノウハウの秘密を保持し、又はその流用を防止するために必要であると認められるときに自己にのみ販売させること」

このうち、②は、このような制限を認めないとそもそも完成品製造業者が部品を外注するインセンティブを削いでしまうので、このような制限はむしろ競争促進的だ、という理屈で説明がつくと思います。

(ただ、細かいことを言うと、ノウハウの漏洩が心配されるのは、取引先(②では部品製造業者)が競争者(②では、他の完成品製造業者)と取引をする場合だけに限りませんので(最終的に、競争者に知られてしまったときに競争上のダメージが大きい、とは言えますが)、独禁法の視点から見た場合の正当化理由が上記のようなインセンティブ論なのであって、他の法律一般からみれば、ノウハウという財産権の便益を専有する権利(?)など、他の正当化の理屈もあり得ると思います。)

よく分からないのは①です。

というのは、仮に①のような制限を部品製造業者に課したとしても、その部品製造業者が他の原材料調達ルートから原材料を調達して部品を製造して他社に販売することを制限しているのでもない限り、①の制限だけではそもそも、

「自己の競争者と取引することを制限すること」(注10柱書き)

に該当しないのではないか、と思われるのです。

つまり論理的には、①の制限は、

「自己の競争者と取引することを制限すること」

の例外を認める正当化理由ではなく、そもそも

「自己の競争者と取引することを制限すること」

に該当しない場合を述べているのではないか、ということです。

おそらく注10は、部品製造業者が事実上完成品製造業者の系列あるいは下請に属していて、事実上原材料調達ルートが当該完成品製造業者しかいないような、日本でよくありがちな場合を無意識のうちに想定してしまっているのではないかと疑われます。

しかし、そのような場合でも、やはり他の調達ルートからの調達を禁じて他社への部品納入を禁じれば拘束条件付取引に該当しうるはずです。

なので、①は、論理的にはおかしいと思います。

ところで自分でいうのも変ですが、独禁法の体系的思考があれば、こういう細かいことに一目で気付くことは、そう難しいことではありません。

つまり、市場での供給者は誰で、需要者は誰で、誰が排除されているのか(場合によっては、さらにその川上と川下の市場にも目配りする)を、頭の中で図をかきながらイメージすることです。

そういう発想があると、①をみたときに、「自分が供給した商品かどうかで、(民法的な所有権の発想ならいざ知らず)どうして拘束条件付取引の例外になりうるの?」という素朴な疑問が浮かんできます。

それをちょっと推し進めると、上記のような矛盾に気付くわけです。

この例に限らず、公取委のガイドラインでは、字面だけを追っていると混乱するようなものが時々あります。

私も、お客さん宛のメモを書くときは、いちいち上のような講釈は垂れないで、「ガイドラインにこう書いてあるからOKです」と書くでしょう。

でも、基本的な考えを理解していないと、現実の当てはめでとんでもない勘違いをしかねません。

やっぱり、実務でも基本は大事です。

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