逆三角合併と届出
公取委の届出書式は、株式取得、合併、事業譲渡などがありますが、逆三角合併(reverse triangular merger)の独禁法上の届出はどのようにすれば良いのでしょうか。
まず逆三角合併というのは、買収者(A社)が、ターゲット(T社)を100%買収したい(かつ、許認可とかの関係でT社の法人格を温存したい)場合に、A社の完全子会社S社(もっぱら買収に使う目的で設立したSPCであることが多い)とT社を合併させるけれど、その際にS社が消滅会社、T社が存続会社となって、だけれども存続会社であるT社株主にA社株式を交付して、最終的にはT社がA社の100%子会社となる、というものです。
日本でこれに相当する制度はありません(存続会社の株主に合併対価を交付する制度がない)。
しかし、同じ結果は、
①S社とT社で、S社を完全親会社とする株式交換をA社株式を対価として行い(これにより、T社株主はA社株式を受け取り、T社はS社の完全子会社(=A社の完全孫会社)になる。三角株式交換)、
②その後、S社を消滅会社、T社を存続会社とする合併(これにより、A社は合併対価としてT社株式を受け取り、T社がA社の完全子会社となる)を行う、
というステップを踏むことにより、得られます。
で、本題ですが、結論をいうと、公取委の実務では、逆三角合併は、A社がT社の株式を取得する株式取得として届け出れば良いことになっています(公取委に電話で聞けばすぐ教えてくれます)。
逆三角合併の実質は、A社によるT社の買収であり、最終形ではT社はA社の完全子会社になるのだし、途中のS社の設立とかS社との合併とかは技術的なステップに過ぎないので、結論としてはこれで良いんだろうと思います。
公正取引723号(2011年1月号)の「公正取引委員会の将来像 - 畏敬される存在となるための具体的提言」という座談会でも、SPCを使った株式取得は株式取得として届け出ることが実務的に固まった、という趣旨の発言をされています。
これは主に逆三角合併の場合を念頭に置いているのでしょう。
ところで、この座談会は内容自体私も共感を覚える点が多いですし、非常に面白いので、手に入る方はぜひ一読をおすすめいたします。
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