HHIによる寡占度のイメージ
企業結合ガイドラインで用いられているハーフィンダール・ハーシュマン・インデックス(HHI)については、市場全体の寡占度(1500とか2500)よりも、HHIの増分の方が実務上大事だ、という趣旨のことを、だいぶ以前にこのブログで書きました。
要は、微妙な判断が迫られる場合というのはHHIが2500を超えていることが多いし、HHI増分は両社のシェア×2で簡単に出る(他社のシェアは不要)というのが理由です。
とはいっても、HHIの1800とか2500とかいう数値がどの程度の市場全体の寡占度を意味しているのかをイメージしておくことも大事だと思います。
最初にガイドラインを整理しておくと、結合後のHHIが1500以下(寡占度低)の場合、それだけで、セーフハーバーに該当(つまり、違反にならない)となります。
HHIが1500~2500(寡占度中)だと、HHI増分が250までなら、OKです。
HHIが2500超(寡占度高)の場合、HHI増分が150までなら、OKです。
そこでまず、HHI2500超のイメージですが、分かりやすいのは、シェア50%超の企業が1社(+その他無数に小さな会社)が存在する市場です(50^2=2500なので)。
逆に、できるだけたくさんの会社で2500を満たす場合、つまり各社のシェアのばらつきが最も小さい場合(=各社のシェアが同じ場合)は、25%のシェアの会社が4社ある場合です。
(式で書けば、シェアの等しいn社が存在するとして、
n(100/n)^2=2500
を満たすnを解くことになります。)
まとめると、HHI2500というのは、
1社で50%
という場合と
4社で25%ずつ
という場合を両極端に、その間のどこかにある、といえます。
次にHHI1500については、これを1社で満たす場合は、シェア約39%の会社が1社(+その他無数に小さな会社)ある場合です。
(式で書くと、
s^2=1500
を満たすsを解くことになります。
s=√1500≒38.73)
なので、40%の会社が1社でもあったら、即、1500は満たさないことになります。
逆に、できるだけたくさんの会社でHHI1500を満たす場合(=各社のシェアが同じ場合)は、同じシェアの会社が7社(+その他無数に小さな会社)ある場合です(この場合、各社のシェアは100÷7≒14.3%、HHIは約1429)。
(式で書けば、シェアの等しいn社が存在するとして、
n(100/n)^2=1500
を満たす最小の整数nを求めることになります。)
まとめると、
HHI1500というのは、
1社で約40%
という場合と
7社社で約14.3%ずつ
という場合を両極端に、その間のどこかにある、といえます。
最小の会社数でHHIを満たす場合(≒シェア格差が最大の場合)と最大の会社数でHHIを満たす場合(≒シェア格差が最小の場合)を意識することは、HHIのイメージを膨らますためには、いずれもそれなりに大事ではないかと思います。
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