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2011年3月24日 (木)

「企業結合審査の手続に関する対応方針」(案)について

3月4日に公取委から公表された「企業結合審査の手続に関する対応方針」の案について、気が付いたことを記しておきます。

まず、これまで「事前相談」と呼ばれていたものがなくなり、「届出前相談」になりました。

(ちなみに、「事前相談」は、prior consultationと訳すことが多かったですが、「届出前相談」は、pre-notification consultation ですかね。)

両者は名前が変わっただけではなく、その実質もまったく異なるものです。

つまり、「事前相談」は、本来法律上の届出後になされるべきような実質的な競争制限に関する審査がなされる(その後の法律上の届出はフリーパス)ものであったのに対して、新しい「届出前相談」は、届出書の記載方法などについて相談するものです。

ですので、新しい「届出前相談」では、実質的な審査までなされることは予定されていません。

ただ、届出前相談の例として、一定の取引分野についての公取委の考え方を相談できるとされていますが、このような相談をする必要性がある場合はかなり限られるのではないかと想像します。

というのは、公取委との相談が必要なくらいに一定の取引分野(市場)が何なのかの判断が難しい事例では、当事者と公取委が協議を重ねて、詳細な審査を行った上で、初めて「一定の取引分野」が明らかになることが多いと思われるからです。

ですので、そのような微妙な事案では、届出書は当事者が考える市場に従って記載し、届出書をさっさと受理してもらって、「一定の取引分野」については届出後の審査の中で争っていく、というのがオーソドックスになるのではないかと思います。

しかも同方針ではご丁寧に、

「届出後の審査において、届出前相談における当委員会の説明が修正されることがある。」

とされています。

つまり、届出前相談で決まった市場画定が、届出後の審査で覆されることがある、ということです。

しかも、どういう場合に覆されるのかの限定がないので、何の理由も無しに覆せることになっています。

これでは、届出会社が届出前相談で市場画定について詳細な議論をする意欲がますます萎えるのではないでしょうか。

おそらく公取委としては、事前相談が批判の的になったために廃止された(もともと事前相談は企業側の要望で取り入れられたものなので、公取委を批判するのは筋違いと思いますが・・・)という背景があるため、届出前相談は法律上の届出書の記載に関する相談に限って行う、という建前があり、そのため、届出書の記載事項の中で書き方が一番難しそうな「国内の市場における地位」を例として掲げたのでしょう。

しかし、そもそも実務上は、届出書の「市場」と独禁法上の「一定の取引分野」とが厳密に一致していなければならないとは考えられていないと思います。

つまり、両者が厳密に一致しないと届出が受理されないとか、虚偽届出の罪(独禁法91条の2第3号など)になるとか、排除措置命令の事前通知の期間が延びる(独禁法10条9項2号など)ということにはならないはずです。

当事者が、例えば政府や業界の統計などの分類に従って、ある程度合理的に「市場」と考えるものを書いていれば、とりあえずは受理されているはずです(書き方の詳細は、届出書の記載要領をご参照ください)。

それで充分受理されるのに、どういう場合に「一定の取引分野」に関する議論を届出受理前に公取委と議論する気になるのか、私にはあまりイメージが沸きません。

むしろ実務上相談したくなるのは、現物出資とか逆三角合併とか、2段階、3段階にわたる複雑な買収スキームとかの場合に、どのタイミングでどの届出が必要なのか、とか、事業用の固定資産に帰属する売上の範囲とか、国内売上高の範囲とか、外貨建ての売上を円に換算するときの為替レートとかいったことかなぁと思います。

それから、同方針案では、審査結果の公表について定められています。

公表される場合は2つです。

まず、第1次審査が終了した事案のうち、他の会社の参考になる事案です(5(2))。

次に、第2次審査で問題なしとされた事案は、その結果が公表されます(6(3)イ)。

公表の有無は実務上けっこう重要で、現行の事前相談では、2次審査に入るときに、公取委のホームページで全件公表される上、当事者も自発的に公表しなければなりません。

それと比べると、方針案での第2次審査の結果の公表は、(問題なしという)結果が出た時点で公表されるようなので、現行の事前相談よりは公表が遅いことになります。

また、方針案では「結果」だけが公表されるようにも読めますが、1次審査終了事案の公表の場合と同じく、参考になる事例については理由と共に公表されるのでしょう。

でも2次審査の結果の全件公表というのは、数は多くないと予想されるにせよ、敵対的買収などの場合には秘密にしておきたいという当事者の希望にも配慮して欲しいところです。

それから、届出を要しない企業結合についても、法律上の届出の場合に準じて対応するそうです(7)。

ということは、法律上の届出書の記載事項に相当する情報が当事者から提供されれば、公取委は相談を受理し、30日以内に2次審査に進むかどうかを回答するということです。

もしその通りに運用されるとすれば大変結構なことで、現行の事前相談で時々みられた、事前相談の受理までに1年以上かかるというケースは新制度下では起こりえない、ということになります。

あと細かいことですが、現行の事前相談では結合の当事者が一緒に公取委に行くのが基本でしたが、新制度では届出予定者が行くことになっています。

ですので、例えば株式取得の場合であれば、取得者だけが行くことになり、買収される側は行かないことになります。

事業譲渡なら、譲受人だけです。

ただ実際の運用ではそこまでやかましいことは言わず、当事者両方からの相談にも乗ってくれるんだろうと想像します。

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