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2011年3月 7日 (月)

CPRC国際シンポジウム(競争法と企業結合規制)

3月4日の公正取引委員会競争政策研究センターの国際シンポジウム~競争法と企業結合規制~に行ってきた感想をメモしておきます。

(私の誤解も多いかも知れませんので、念のため。)

ネーヴェン教授のお話では、垂直合併の分析で、統合後の企業が川下市場で競争者を締め出す経済的インセンティブを、川上市場での損失と川下市場での利得のトレードオフで見る、という点が興味深かったです。

結局、水平合併であるか垂直合併であるかを問わず、合併の反競争性は、合併当事者の経済的インセンティブを分析することで、統一的に判断できるように思われました。

垂直合併による排除(あるいは囲い込み。foreclosure)には、「インプット・フォークロージャー」と、「カスタマー・フォークロージャー」があるということですが、ネーヴェン教授も指摘されるように、「カスタマー(=流通網)・フォークロージャー」というのは、メーカーにとっての一種のインプット(流通網)を囲い込んでしまうことなので、本質的には両者同じものといえます。

いずれもいわゆるライバル費用引き上げ(Raising Rivals' Costs)戦略です。

小田切教授のお話では、合併の純粋な効果をみるために、「合併しそうな企業だから生じた効果」と「現実に合併したから生じた効果」を分けて、後者だけを抽出する、という考えが面白かったです。

その結果、合併による優位な利益率の向上は認められなかった、ということです。

それから、合併が研究開発に与える影響について、R&D集約度(=研究開発費÷売上高)をみたところ、研究集約型産業では半分以上の合併でR&D集約度が上がった、というのも興味深かったです。

あと、味の素とヤマキの合併の結果、味の素の製品は値上がりしてヤマキの製品は値下がりした、ということから、合併審査においてもプロダクトポジショニングへの影響を考慮すべき、というのも面白かったです。

法律家ではなかなかそこまで細かいことは思いつきません。きっと、それぞれの商品のマージンと需要曲線を推計すれば、プロダクトポジショニングも予想できるんでしょうね。

合併の結果、一部の消費者は利益を受け(例えば、ヤマキのファン)、一部の消費者は不利益を受ける(味の素のファン)場合があるというのも、実は悩ましいですね。

味の素ファンとヤマキファンのトータルで利益になるのか不利益になるのかを見る、というのがオーソドックスだと思いますが、それで良いのか、もっと良い方法がないのか、考えてみる必要があるかも知れません。

川濱教授のお話では、合併による効率性の定量化も必要だが、同様に、合併による悪影響(市場支配力の形成による影響)も定量化する必要がある、というのが、なるほどと思いました。

しかし、単独効果の定量化はまだしも、協調効果になると定量化は難しいのではないかという疑問も沸きました。

それから、合併シミュレーションは反競争効果が生じる前提条件を明らかにする点に意義がある、というのも、なるほどと思いました。

そうだとすると、法律家が合併シミュレーションを理解することも無意味でない気がします。

あと、シカゴ学派のボークらは企業結合において効率性を評価しなかったこと(効率性の判断にコストがかかりすぎるため。いかにも損得で割り切るシカゴ学派らしいと思いました)の紹介、余剰の重み付けをする考え方(レジュメでは、カナダのプロパン事件で、低所得者層からの余剰の移転を2倍に評価したことを紹介)や、個別の事件では消費者余剰基準を採ることがトータルでは総余剰の増加につながる、という議論の紹介が面白かったです。

でも、個別の判断は理屈に合わなくてもトータルで見れば結果オーライ、というような議論は、ちょっと受け容れられないように思いました。

後半のパネルでは、ネーヴェン教授から、「ほとんどの合併は失敗するが、一部は著しい成功を収める。競争法において重要なのは、そのような一部の成功例をブロックしないことだ」というお話しがありましたが、だからといって、「ほとんどの合併は失敗するのだから、ちょっと厳しめに合併を禁じたほうが、トータルでは望ましい」という議論では当事者は納得しないでしょう。

いずれにせよ、非常に内容の濃い、突っ込んだお話しが聴けて、大変ためになるシンポジウムでした。

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