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2011年3月31日 (木)

ABA Spring Meeting初日

毎年恒例の、American Bar Association, Antitrust SectionのSpring Meetingに出るために、ワシントンDCに来ています。

初日(30日)に出たセッションについて、簡単にまとめておきます。

午前中は、カルテルの域外適用についてのセッションに出ました。

カルテルは米国では刑事罰が課される重罪(felony)ですが、犯罪人の引渡しには、自国の国民は引き渡さない(日本など)とか、双方の国で刑罰が課されるものでないと引き渡さないとか(EUではカルテルは刑事罰の対象ではありませんが、イギリスでは対象です)、制約も多く、しかし、容疑をかけられた外国の役員も任意に米国に出頭することが多いそうです。

やはり、これだけ国際化した社会でビジネスをしていくのに、未来永劫米国に入国できないということは採りえない選択だし、米国以外でも、インターポールのレッド・ノーティスで逮捕されることがあるのが原因だろう、ということでした。

しかし、服役期間が長期化すると、将来にわたっても同様の傾向が続くかは不透明、との意見が述べられました。

またDOJのパネリストの方は、外国において服役した被告に米国において再度刑罰を課すか否かは、当該外国の刑罰が米国の観点から見て十分な抑止力となっているか否かで判断する、ということを強調されていました。

つまり、外国での刑罰が十分な抑止力を持つのであれば、米国では再度刑罰を課すことはない、ということです。

しかし併せて、これは二重の危険の法理とは関係がない、とも述べられていました。

カルテル調査の国際協力については、情報交換はするけれど証拠の交換まではしないとのことでした。

また国際協力をしたからといって必ずしも各国で結論が同じになるわけではなく、例えばエアカーゴのケースでは、EUでは2種類のサーチャージについて、韓国では燃料サーチャージだけ、米国では戦争リスクのサーチャージなどその他のサーチャージについても訴追された、という例が紹介されました。

また、何を持って国内売上とするか(罰金や課徴金の基礎になります)についても各国では結論が異なり、韓国では、国内から国外への売上については100%国内売上とし、国外から国内への売上については50%を国内売上としたそうです。

また、証拠の収集については、DOJでは外国に所在する証拠まで差し押さえることはしていないということでした。

ただ、外国で作成された証拠であっても、米国内に所在するものは当然差し押さえられます。

EUでは、リーニエンシーに関する証拠の開示請求がカルテルの被害者からあったとしても、開示は拒否しているとのことでした。

また、事件の調査のために作成されたのではない、生の証拠(いわゆるhot document)についても、開示には応じていないとのことでした。

午後の1つめのセッションは、今年改正されたEUのガイドラインを中心に、情報交換と標準化のセッションについてのセッションに出てきました。

欧州委員会のパネリストの方によると、新ガイドラインでは、情報交換による害の発生として、collusive effectとforeclosure effectについて触れられているが、主な関心は前者にあり、後者は、comprehensiveであるために入れただけ、とのことでした。

collusive effectについては、人為的な透明性を作出する点が問題であるというのが興味深かったです。透明であれば良いというわけではない、ということですね。

また、by objectによる違反は米国の当然違法の法理とは違うものであり、効率性により正当化されることもありうるとのことでした。

標準化については、FRANDコミットメントをしながらそれを遵守しない特許権者を102条(支配的地位濫用)に問えるか、という議論がなされました。

一方米国では、標準化に関して欧州新ガイドラインのような統一的なガイドラインはなく、96年のヘルスケアに関するレポートや、07年のFTCレポートなどに標準化に関する当局の考えが示されているとのことでした。

午後2つ目のセッションは、インターネットのターゲット広告とプライバシーに関するセッションに出てきました。

これに関しては昨年12月に、「Do not Track」レポートというのが出ているそうです。

グーグル・バズの事件やIntelliusの事件の紹介などがありました。

消費者保護の委員会が主催だったのですが、質問に立った女性がいかにもアメリカの消費者保護の弁護士らしく、消費者の同意なく消費者から情報を得ることに強い拒否反応を示していたことが印象的でした。

でも、インターネットのサイトもどこかで収入を得ないといけないので、ターゲット広告を一律認めないという選択肢はあり得ないと思います。

あくまで、情報を得られたくないと思う消費者がオプトアウトできる仕組みがあればよいのだと思います。(米国で議論されているのもそのような仕組みです。)

むしろ自分の関心のある広告が表示されることを喜ぶ消費者も多いのではないかという気がします。

インターネットのサイトは表示面積が限られていることもあり、ターゲット広告を認めないと、ひいてはサイトが維持できなくなるとか、質が落ちるとかいった影響も、無視できないのではないでしょうか。

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