不当表示の既遂時期
不当表示は景表法4条で禁止されています。
では、不当表示はいつの時点で「既遂」になるのでしょうか(もちろん刑法犯ではありませんので、ものの譬えとお考え下さい)。
例えば、立派な見本写真を載せた広告(表示)をして、広告をしたときには広告どおりの商品を提供するつもりだったけれど、予想を超える注文をさばききれずに雑な仕事になり、結果として広告どおりの商品を提供できなかった、というような場合、既遂になるのは広告(表示)を出した時点でしょうか。それとも、雑な商品を提供した時点でしょうか。
景表法4条1項柱書きでは、
「〔不当表示〕に該当する表示をしてはならない。」
となっているので、禁止されているのはあくまで「表示」することです。
これがもし、
「表示と異なる商品役務を提供してはならない。」
という条文なら、表示と異なる商品役務を提供した時点で違反が成立するのでしょうが、4条はそうなっていません。
とすると、4条1項では、「表示」をした時点で既遂にならないとおかしいはずです。
不当表示には故意は不要で、まったく不当表示であると知らなくても(例えば、本当にカシミヤ100%のセーターだと信じて売っていても)、違反になります。
でもそれは、事実として「このセーター」を売るということは認識していたのですから、その認識と、「このセーター」を売ったという事実との間には齟齬はなく、まあ妥当な解釈かなと思います。
しかし、冒頭挙げた例のように、表示の時にはきちんと写真どおりのものを提供するつもりだったけど、予想外の事態のためにできなかった、という場合は、一体いつの時点で既遂になるのでしょう?
条文上は「表示」を禁じているので、表示の時点で既遂だ、というのが自然ですが、どうもしっくりきません。
上の例を少し変えて、例えば「国産地鶏100%」を謳って広告を出していて、広告を出したときには国産地鶏を使うつもりで、しばらくは国産地鶏だけを使っていたけど、人気が出てきて地鶏の調達が間に合わなくなったために、途中からブロイラーを使い始めた、という場合を考えてみましょう。
この場合、違反が成立する時点の候補としては、
①広告を出し始めたとき、
②ブロイラーを使い始めたとき、
の2つがあり得ると思います。
しかし、広告を出し始めたときは国産地鶏だけを使うつもりだったのなら、①の時点で既遂(違反成立)というのは、ちょっとおかしな気がします。
かといって、②の時点で既遂とすると、②の時点でも「国産地鶏100%」の広告を出してれば、その継続的な広告行為を捉えて不当表示と捉えればいいのですが、もし②の時点では広告は取りやめていたなら、対象となる不当表示がないことになってしまいそうです。
それとも、消費者庁は、②の時点で既遂になり、その時には実行行為としての表示行為はなくてもいい、という解釈なのでしょうか。よく分かりません。
まず広告で顧客を募って、商品提供の時点には(必要な数の顧客が集まったので)広告は出していない、ということは、けっこうあるように思います。
実務的にはこういう場合、「そうはいっても広告を出す時点で広告どおりの商品を提供できないおそれはあったんでしょう」という形で、事実認定を曲げる形で妥当な解決が図られるのかもしれませんが、理屈の上では釈然としません。
やはり根本的には、表示行為を禁じるだけでなく、表示と異なる商品役務の提供行為のほうを禁じる法律にしておくのが良いように思います。
いずれにせよ、予想外の注文が殺到して提供できない場合には、広告と異なる商品を提供するのではなく、商品を提供しないようにすべきです。そうれば、景表法違反にはならないはずです。
4条1号では、
「実際のものよりも著しく優良であることを示し」
というのが優良誤認ですが、
「実際のもの」=何も提供しないこと、
と考えて、提供しないのに提供するかのように示すことは「著しく優良であることを示し」たことになる、という解釈もあり得ないではないですが、文言的にかなり苦しいと思います。
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