持株会社の受取配当金は「売上」か。
平成21年改正で、企業結合の届出基準が国内売上高を基準とすることに改められました。
それでは、純粋持株会社の国内売上高はどのように計算するのでしょうか。
純粋持株会社はその子会社を持株関係を通じて支配することが仕事であり、通常の意味での「売上」というのは基本的には存在しないはずです。
それでは、純粋持株会社の「本職」であるところの、子会社から受け取った利益配当は、「国内売上高」としてカウントされるのでしょうか。
本職からの収益なので一瞬カウントされるのかなと思ってしまうかも知れませんが、結論からいえば、受取配当は「国内売上高」にはなりません。
実は、独禁法やそれに関係する規則には、「売上」という用語そのものの定義はありません。
わずかに、「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律第九条から第十六条までの規定による認可の申請、報告及び届出等に関する規則」(「届出規則」)の2条に、
「〔国内売上高〕は、会社等の最終事業年度における売上高(銀行業及び保険業を営む会社等については経常収益、第一種金融商品取引業を営む会社等については営業収益とする・・・)のうち次に掲げる額の合計額・・・とする。
(以下省略)」
とあるだけです。
ですので、「売上高」というのが、銀行の場合は経常収益、証券会社の場合は営業収益を意味する、ということは分かるのですが、独禁法の届出手続上、そもそも「売上高」というのが何を意味するのかは、明確には定義されていません。
したがって、「売上高」というのは、世の中で常識的な意味で通用している言葉としての売上高のことである、と考えて良いでしょう。
つまり、独禁法上の届出においても、商品役務の提供の対価としての収益が、「売上」である、と考えてよいでしょう。
純粋持株会社の場合には、子会社から配当を受け取ることがいわば本業なので、「営業収益」に計上されますが、だからといって受取配当金が「売上高」に化けるわけではありません。
ですので、純粋持株会社の場合は、通常は、「国内売上高」はゼロのはずです。
つまり、会社に入ってくるお金には、例えば銀行預金の利息とか、社宅の賃貸料とかもありますし、さらにいえば、「売上高」以外にも経常収益に該当する収益はあり得るわけですが、独禁法の届出は、世の中で通常「売上高」といわれるものだけに注目して届出の要否を判断するようにできているわけです。
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