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2011年1月23日 (日)

子会社まとめ買いと株式取得の届出

経済的には同じような企業結合でも、片や独禁法の届出が必要で片や不要である、ということは時々ありますが、その例を1つ。

T社(Target)に、t1~t10までの10社の100%子会社があるとします。

これら子会社の株式を、A社(Aquirer)が同時に譲り受けるとします。

A社の国内売上高は優に200億円を超えているとします。

t1~t10の、それぞれの国内売上高は、いずれも10億円とします。

この場合、株式取得の届出は必要でしょうか。

結論としては、不要です。

なぜなら、株式取得の届出に関する独禁法10条2項は、株式発行会社(t1~t10)と、その子会社の国内売上高の合計が、50億円を超えるかどうかで届出の要否を判定しているところ、本設例においては、t1~t10の国内売上高は、おのおの10億円にとどまり、50億円を下回るからです。

この結論は、10条2項が、株式発行会社ごとに50億円を超えるかどうかで届出の要否を判定する建て付けになっている以上、しかたありません。

例えば、一定期間(例えば6ヶ月以内)に同じ企業結合集団(本設例ではT社の属する集団)から譲り受ける株式取得については発行会社の国内売上高を合算するという規定でもあれば話は別ですが、現行法はそうなっていません。

さて、では設例を少し変えて、T社とt1~t10の間に、中間持株会社(H社)が存在し、H社がT社の100%子会社、t1~t10がH社の下にぶら下がっている、という例で、A社がH社の全株式を譲り受ける場合はどうでしょう。

この場合は、届出が必要です。

なぜなら、この場合の発行会社(H社)側の売上要件は、H社自身とその子会社を合算した額で判定するところ、H社は持株会社なので売上ゼロとしても、傘下の子会社t1~t10の国内売上高が合算されて、合計100億円となり、50億円を超えてしまうからです。

このように、競争に与えるインパクトとしては、最初の例でも、次の中間持株会社の例でも同じはずですが、届出の要否は異なります。

ただ、これは法の不備というほど大げさなものというべきではないでしょう。

むしろ、一つの割り切りというべきです。

むしろ気をつけないといけないのは、ストラクチャを組む上で、何らかの理由で中間持株会社(H社)を株式交換などで設立してからH社の株式を譲渡する、というアドバイスをしてしまったために、子会社株式を直接まとめ買いしていれば不要であった独禁法の届出が必要になってしまった、というようなミスが生じないようにすることでしょうか。

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