政府系ファンドによる株式取得の届出
平成21年独禁法改正によって、一定の組合(親会社の存在する組合)による株式取得も届出の対象になりました。
しかし、そこで届出の対象になるのは、取得する組合に「親会社」が存在する場合に限られます(独禁法10条5項)。
そして、「親会社」であるためにはその前提として、「会社」でなければなりません。
というのは、独禁法10条7項で、
「第二項及び第五項の『親会社』とは、会社等の経営を支配している会社として公正取引委員会規則で定めるものをいう。」
とされているからです。
(ちなみに、「子会社」は「会社等」であればよいので、会社に限りません。独禁法10条6項。)
そして、独禁法上の「会社」の定義については、9条2項で、
「会社(外国会社を含む。以下同じ。)」
とされている以外、とくに定義らしいものはありません。
なので、「会社」というのは、日本で言えば株式会社や合名会社、合資会社、合同会社、相互会社あたりの営利社団法人を意味し、外国会社の場合はそれに似たもの、ということになると思われます。逆に、一般社団法人及び一般財団法人に関する法律上の一般社団法人などは、「会社」には該当しないと思われます。
ですので、政府が直接100%出資しているファンド(政府が直接持分を有するファンド)による株式取得の場合
政府→ファンド
は、届出義務は生じないと思われます。
政府(日本政府も外国政府も)は、「会社」ではないので「親会社」になれないからです。
では、政府出資の特殊法人がファンド持分を有する場合(いわば、政府が間接的に出資しているファンド)
政府→特殊法人→ファンド
はどうでしょうか。
この場合は、組合持分を有する特殊法人が、「会社」の定義に該当するか否かによります。
ですので、例えば、日本政府が財団法人を設立してその財団法人がファンドに出資する場合
日本政府→財団法人→ファンド
には、財団法人は「会社」に該当せず、「親会社」になれないので、届出は不要になると思われます。
いわゆる独立行政法人も「会社」ではないので、「親会社」にはなれないでしょう。
日本政府→独立行政法人→ファンド
これに対して、特別法があっても株式会社形態の場合には、「親会社」にるというべきでしょう(たとえば日本郵政株式会社など)。
このように、政府系ファンドといっても、それに「親会社」に該当するものがあるか否かによって、株式取得の届出義務の有無が変わってきます。
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