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2010年12月 9日 (木)

優越的地位濫用ガイドライン成立

11月30日に「優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の考え方」(優越的地位ガイドライン)が公表されました。

同時に公表されたパブコメのQ&Aには面白いことがいろいろ書いてありそうですが、ちょっと気が付いたことを、とりあえず1つだけ書いておきます。

「第1」に関するQ&Aのところ(p2)で、

「優越的地位の濫用の要件については強制・強要の存在が要件として示唆されているが、『取引上の地位が相手方に優越しているものが、当該相手方の自由かつ自主的な判断による取引を阻害していること』の定義、どのような行為が『強制』に該当するのか、強制・強要がどの程度に至れば違法とされるのかを明確化されたい。」

という質問に対して、

「第1の2に記載してあるとおり、優越的地位の濫用として問題となる行為は、『自己の取引上の地位が相手方に優越していることを利用して、正常な商慣習に照らして不当に』行われる、独占禁止法第2条第9号5号イからハまでのいずれかに該当する行為であり、『強制』が要件となっているわけではありません。」

と回答されています。

たぶん回答を準備した人は、余り深く考えず、条文をそのまま引っ張って紋切り型の回答しただけだと思うのですが、強制が要件でないと言い切ったのはちょっと意外な感じがしました。

というのは、実務的な感覚としては、強制していることが優越的地位の濫用の当然の前提であろうという意識があるからです。

逆に、強制の契機がまったくない場合には、優越的地位の濫用とは言えないでしょうね、という回答になることが、結果的に多いです。

例えば、ときどき相談を受けることがあるのですが、相手方に押しつけた取引条件が、実は相手方に相当不利なんだけれど、相手方は不利であることすら知らない、というケースがあります。

こっち側(濫用者側)の事情(カラクリ)を相手方(被害者側)が知ったら怒るだろうなぁ・・・と思いつつも、優越的地位濫用は強制なり、相手方への働きかけが必要だという発想があるので、

「こういうのは優越的地位濫用には当たらないのでしょうか。」

と質問されても、

「ばれたら契約違反と言われそうですし、信義則や倫理的にどうかとは思いますが、優越的地位濫用というのとは違いますね・・・」

という回答になります。

しかし、前述のパブコメの回答に触発されて、改めて、

「自己の取引上の地位が相手方に優越していることを利用して、正常な商慣習に照らして不当に」

というのを文字通りに読んでみると、こういった、隠れて不利益を負わせるパターンも、優越的地位濫用と構成できるように、読めなくもない気がしてきました。

有り体に言えば、情報格差が圧倒的であることを「優越」と捉えるわけです(そう考えれば、取引依存性も要らない?)。

このように考えることができれば、相手の知らないことをいいことに「正常な商慣習に照らして不当」な取引条件を押しつければ、優越的地位濫用にあたると考えることも不可能ではないように思えてしまいます。

ま、そこまでクリエイティブな運用を公取委がするとは思えませんし、パブコメQ&Aもそんなことはまったく念頭にないでしょう。

紋切り型の回答のつもりが、思わぬ読み方をされることもあるという例ですね(そんな読み方をするのは私だけかも知れませんが)。

ですので、一般の人に少しでも公取委の考え方のイメージを持ってもらうという観点からは、

「強制していることは相手方の自主的判断を阻害していることの重要な証拠になります」

とか、もうちょっと実態に即した回答をした方が良かったのではないかという気がします。

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