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2010年12月

2010年12月31日 (金)

企業結合についての調査を受けた際の対応

企業結合の調査の過程において公取委が結合当事者の競争者や取引先に対して調査(アンケートなど)を行うことがあります。

書面だけによる調査のこともあれば、担当官が来社されることもあります。

企業結合が取引先まで調査するほどの詳細な調査(事前相談でいえば2次審査)に進むこと自体、あまりあることではありませんから、普通の企業にとっては、そもそも一体どのような立ち位置で調査に応じればいいのか、ピンとこないことも多いのではないかと思われます。

なぜ基本的な立ち位置が大事なのかと言えば、それによってどのような範囲でどの程度詳細に回答すべきかが変わってくるからです。

つまり、嘘の回答はしないことはもちろんですが、聞かれたことにだけ答えていればいいのか、聞かれていないことについても関係すると思えば積極的に回答すべきなのか、回答するとしてどの程度詳細に回答すべきなのか、といった点です。

そこで、そもそもなぜ公取委がこのような調査をするのかといえば、企業結合の当事者の話を聞いていただけでは、企業結合が市場にどのようなインパクトを与えるのか、正確なところが分からないからです。

この点、税務調査の反面調査(銀行調査など)は、調査対象者が嘘をついていないか裏を取るためにやるわけですが、公取委の企業結合の調査はそれとは違います。

つまり、市場関係者がその企業結合をどのように捉えているかは、企業結合の当事者も正確には知らないのです。

ですので、当事会社が嘘をついていなくても(性善説に立っても)、市場関係者の調査はする必要があります。

もちろん、究極的に重要なのはその企業結合が市場の競争に与える影響なのであって、市場関係者の認識や意見はその影響を推測するための材料に過ぎないわけですが、それでもやはりそれぞれの市場には独自の特徴というものがあって、市場で取引を行っている当事者に聞いてみて初めてわかる事実というのも多いわけです。

さて、それではこのような調査に基本的にどのようなポジションで臨むかですが、例えば競争者に対する調査であれば、公取委が知りたがっているのは、その企業結合によって競争者に対する(私的独占でいうところの)排除行為が行われる可能性が高まるかどうか、です。

逆に、その企業結合によって非常に強力(効率的)な競争者が誕生してしまうので競争者として困る、というのは、競争者にとっては不利益かもしれませんが、競争にとってはむしろ有益なので、基本的には、企業結合を否定する方向には働きません。

ただ、自社が不利益を受けるというのが、自社に対して違法な排除行為が行われるからなのか、効率的な競争者が誕生するためなのかは、微妙な違いであることもあり得ます。

私的独占の排除行為は現に行われている場合ですら違法かどうかの限界が微妙なのですから、将来を予想して適法かどうかを判断しなければいけない企業結合の場合には、なおさら微妙な判断になります。

ですから、自社に不利益が及ぶと思われるのであれば、情報提供することを検討してみるべきです(それが独禁法的に意味があるかどうかは、公取委のほうで判断してくれます)。

つまり、必要であれば、聞かれていないことでも教えるべきですし、聞かれている程度以上に詳細に情報提供すべきです。

ひょっとしたら、「自社がどう答えたって、企業結合が認められるかどうかの結論にはどうせ関係ないんじゃないの?」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、必ずしもそうではありません。

確かに、反対しているのが1社だけだったりすると、それだけで企業結合が禁止される理由にはなりにくいと思いますが、同じような理由でそれなりの数の関係者が反対していれば、禁止する方向に働くと思われます。

競争者が3,4社とかいうような寡占的な業界だったら、ひょっとしたら競争者1社が反対するだけで企業結合が禁止になるかもしれません。

あるいは、全面的な禁止までには至らなくても、何らかの条件は付くかもしれません。

ですので、「どうせいっても無駄だろう」とか、「ひとさまの合併にとやかく口を挟むものではない」というスタンスで臨むのは、もったいないです。

といいますか、そのような市場の声をくみ取って市場の競争を維持しようとするのが公取委の役割であり、独禁法の理念であるわけですから、正々堂々と情報提供すべきです。

ただ、反対する理由は、競争者であれば、私的独占の排除が行われる恐れがあるという理由である必要がありますし、取引先なら市場支配力が強化されるという理由である必要がありますが、この辺の判断は難しいので、独禁法をある程度分かった弁護士に相談する方がいいと思います。

それから、回答する場合には、自社に対してどのような影響があるのか、よく検討すべきです(時間とコストの制約はありますが)。

公取委のほうとしては、「直接利害関係がある競争者や取引先の言うことなんだから、信用できるだろう」という発想かもしれませんが、現実的にはそれほど単純でもなく、蓋を開けてみたら関係者も予想しない影響があった、という事態になることは十分にあり得ると思います。

それから、公取委の調査の対応をするのは法務部のことが多いと思われますが、むしろこういった問題は営業や、事業部や、場合によっては知財部に聞いてみないと分からないこともあるでしょう。

もちろん、自社に何の影響も無いのなら無理に詳しい情報提供をするのは時間とコストの無駄ですし、独禁法とは関係のない理由で反対するのはいかがなものかと思いますが、公取委の企業結合に関する調査には慎重に対応する価値があるということは認識しておいてよいと思います。

2010年12月30日 (木)

企業結合審査の対象とならない株式保有の例の拡充

企業結合ガイドラインでは、

「ア  株式発行会社の総株主の議決権のすべてをその設立と同時に取得す
る場合」

は通常、企業結合審査の対象とならないとし、さらに、

「イ  株式所有会社と株式発行会社が同一の企業結合集団に属する場合」

も、

「当事会社の属する企業結合集団に属する会社等以外の他の株主と当該企業結合集団に属する会社等との間に結合関係が形成・強化される場合には,その結合関係が企業結合審査の対象となる。」

との留保付ではありますが、

「通常、企業結合審査の対象とはならないことが多い」

としています。

これは、平成21年独禁法改正に合わせてガイドラインが改正される前には

(イ)孫会社の議決権の取得、

(ウ)兄弟会社間の議決権の取得、

(エ)兄弟会社の子会社の議決権の取得、

(オ)自社と自社の兄弟会社が50%超保有する会社の議決権の取得、

(カ)兄弟会社が合わせて議決権の50%超を有する会社間の取得、

と分かれていたものを、整理統合したものです。

これだけ一般化したのだから万全と思いきや、案外そうでもなく、まだ加えるべきものがありそうです。

例えば、A社(親会社)に100%子会社のB社とC社があるとします。

そして、B社が持っているD社の30%の株式全部をC社が譲り受けるとします。

この場合、D社はB社の子会社ではない(持株比率30%に過ぎない)ので、上記イでいうところの

「株式所有会社(←C社)」

「株式発行会社(←D社)」

は、同一の企業結合集団に属しないので、上記イには該当しないことになります。

もしB社がD社の株式50%超を持っているなら、D社はB社の子会社でC社と同じ企業結合集団に属し、イを満たします。

しかし、B社がD社の株式を30%しか持っていない場合であっても、要はこの株式譲渡は、グループ内で右から左(B社→C社)にD社株を移しただけなので、競争上の問題がないことは明らかと思われます。

(なお、届出との関係では、議決権比率は取得会社の企業結合集団単位でみるので、B社の持株比率が30%であろうが50%であろうが、届出不要であることには変わりはありません。独禁法10条2項。ただ、届出の対象にならないからといって、実体審査の対象にならないわけではありません。10条1項)

ですので、審査の対象にならない株式取得の例として、

「株式譲渡会社と株式所有会社が同一の企業結合集団に属する場合」

というのも加えて欲しいと思います。

そもそも、どうして今のガイドラインのような整理の仕方になっているのかを想像すると、実体的問題(10条1項)としても、届出の問題(10条2項)にしても、問題になるのは株式の取得側であって、譲渡側ではない、という発想を律儀に守っているからではないか、と思われます。

なので、ガイドラインでは、もっぱら取得側(「株式所有会社」)と株式発行会社の関係だけに着目した規制になっているのではないかと思われます。

「譲渡側が誰であっても関係ないはずだ」と無意識に整理してしまったんでしょうね。

さらに、建前の上では上述のように実体規制と届出規制は別建てなのですが、本音のところで「届出不要のグループ間株式譲渡の場合にまで、あえて実体規制の除外事由として明記する必要もない」、と、実体規制のルール作りのときに届出規制の発想を引きずったのかもしれません。

でも、ちょっと頭を柔軟に働かせれば、上述のような、グループ内で株を右から左に移すだけの場合も、審査の必要がないことが分かるはずです。

2010年12月29日 (水)

競争者と取引しない者を有利に扱うことの可否

ライバルと取引しないことを条件として取引先と取引をすると、排他条件付取引(一般指定11項)として独禁法違反になり得ます。

例えば、ソフトを販売するインターネットのサイトが、ソフトウェアメーカーに、ライバルのサイトにはソフトを供給しないように求めるような場合です。

では、取引先にライバルと取引しないことまでは要求しないけれど、ライバルと取引しない取引先をライバルと取引する取引先よりも有利に扱うことはどうでしょうか。

例えば、ソフトを販売するサイトが、自社にだけソフトを供給するソフトウェアメーカーには、そうでないソフトウェアメーカーに対してよりも、販売手数料を割り引くような場合です。

この場合は、ソフトウェアメーカーは当該サイトのライバルサイトとの取引が禁止されているわけではないので、排他条件付取引ということはできません。

そこで、より一般的な規定である、拘束条件付取引(一般指定12項)を検討することになります。

一般指定12項では、

「法第二条第九項第四号〔注:再販売価格維持〕又は前項に該当する行為のほか、相手方とその取引の相手方との取引その他相手方の事業活動を不当に拘束する条件をつけて、当該相手方と取引すること。」

とされています。

ちょっと分かりにくいですが、

「相手方とその取引の相手方との取引」

というのは、その直後の

「その他相手方の事業活動」

の例示に過ぎないので、結局、

「相手方の事業活動を不当に拘束する条件をつけて、当該相手方と取引すること。」

というのが違反要件になります。

では、今回問題にしている、ライバルと取引しない取引先を有利に扱うことは、相手方の事業活動の不当な拘束といえるでしょうか。

素直な日本語の解釈として、ライバルと取引しない取引先を有利に扱うことは、極端な場合は別として、「不当に拘束」とはいえないのではないでしょうか。

独禁法に限らず法律の世界には、条文に書かれていない不文律みたいなものがあり、初心者(つまり多くの国民)の理解の妨げになることもしばしばですが、ここでの「不文律」は、拘束条件付取引(12項)は排他条件付取引(11項)の一般規定(キャッチオール)である、という理解です。

独禁法の世界でのそういう理解を前提に、排他条件付取引と拘束条件付取引は連続性のあるもの、という発想があります(少なくとも私はそういう発想です)。

なので、「自分とだけ取引する」という誘因がそれほど強くないうちは「拘束条件付取引」で、誘因をどんどん強力にしていくと「排他条件付取引」になる、というイメージです。

(本当は、契約上は「排他条件付取引」であっても、違反したときに違約金を払えば済むのなら完全な「排他」ではないのですが、法律の世界ですから、契約は守られることを前提に解釈します。)

でも、やっぱり素直な文言解釈は無視できないと思います。

素直に、今やろうとしていることを眺めてみて、「不当に拘束」に該当しないのであれば、たとえ理屈の上では排他条件付取引の緩やかなものであっても、拘束条件付取引には該当しないというべきです。

そういう意味で、ウェブサイト運営者が、自分にだけソフトを供給するソフトウェアメーカーに対しては販売手数料を安くするのは、基本的に、「不当に拘束」に当たらないというべきです。

感覚的には、こういう場合だと、自分とだけ取引をするソフトウェアメーカーには手数料を半額にしても、ソフトウェアメーカーを「不当に拘束」しているとはいいにくいと思います。

あるいは、販売手数料を有利にするという戦略だと、仮に専属ソフトウェアメーカーには販売手数料を無料としても、ソフトウェアメーカーは他のサイトでもソフトを扱ってもらったほうが儲かるなら他のサイトとも取引するでしょうから、そもそも「拘束」していない、とも言えそうです。

なお、ほとんど言葉遊びですが、

「ライバルと取引しない取引先を有利に扱う」

という問題設定を、

「ライバルと取引する取引先を不利に扱う」

と言い換えると、何だか問題有りそうな気がするから不思議です。

論理的に考えると後者は前者の裏返しでまったく同じことを言っているので、前者が適法なら後者も適法なはずです。

でも、普通の発想としては多分そうではなくて、無意識のうちに「標準的な取引条件」というものを念頭に置いた上で、前者は「標準的な取引条件より有利に扱う」、後者は「標準的な取引条件より不利に扱う」という場面を想定するのだと思います。

しかし、やはり両者は論理的には同じことを言っているということには注意すべきです。

だいたい、独禁法の世界で「標準的な(=あるべき)取引条件」というのを所与の前提として解釈論を展開することは、問題があることが多いような気がします。

さて、いろいろ考えると、他者(他のサイト)が排除されるかどうかが問題の行為類型なのに、取引の相手方(ソフトウェアメーカー)に対する「不当な拘束」を違法要件にしているところが、そもそも理屈として噛み合っていないのではないか、という気がします。

端的に、「他者を排除するような条件で取引すること」を違法要件とするほうが、理論的には正しいのではないでしょうか。

これを、「他者を排除するような条件で取引することが『不当な拘束』なのだ」と解釈することは、「拘束」の文言を超えているように思います。

いずれにせよ申し上げたいのは、「不当に拘束」という文言は無視すべきでない、ということです。

2010年12月28日 (火)

違反者が買主の場合の書きぶり(20条の6かっこ書き)についての疑問

平成21年独禁法改正で、継続的な優越的地位濫用に課徴金が課せられることになりました(独禁法20条の6)。

しかし、優越的地位にある者(以下「違反者」といいます)が商品役務の買主である場合の20条の6の書きぶりには、やや疑問があります。

まず、20条の6では、違反者が被害者に対して商品役務を売る場合を念頭に、本文で、

「〔違反期間〕における、当該行為の相手方との間における・・・売上額」

を基礎に課徴金を算定するとしています。

違反者が売主である場合というのは実は例外的で、典型的な優越的地位濫用、例えば大手家電量販店(買主)が納入業者(売主)に対して従業員の派遣を要請するような場合や、メーカー(買主)が下請業者(売主)に対して不当な値引きを要求するような場合(通常は下請法で処理されますが)は、いずれも買主が違反者です。

買主は、売主にとってはお客様であり、買主が代金を払ってくれるおかげで商売が成り立っているのですから、売主(被害者)が買主(違反者)の言うことを聞かざるを得なくなりがち、という構図です。

ですので、20条の6の本文で書かれているような、売主が違反者となる場合というのは実はあまり多くはありません。

あえて言えば、例えばフランチャイズにおいて、商標の利用を許諾しているフランチャイザー(=役務の提供者・売主)が、フランチャイジー(=役務の購入者)に対して優越的地位の濫用を行う、という場合くらいでしょうか。

他には、銀行と融資先との関係は、融資という役務を提供する銀行(売主)が融資先(役務の買主)に対して優越的地位に立つ場合と言えます。

さて、そいういうわけで買主が優越的地位に立つ、世の中によくある場合について定めたのが、20条の6の3つめのかっこ書きです。

そこでは、

「当該行為が商品又は役務の供給を受ける相手方に対するものである場合は当該行為の相手方との間における政令で定める方法により算定した購入額」

とされています。

しかしこの条文、素直に読むと誤解しそうです。

というのは、

「商品又は役務の提供を受ける相手方」

といえば、

「商品又は役務の提供」

を受けるのが、

「相手方〔被害者〕」

であるというふうに、読まれはしないでしょうか。

藤井他編著「逐条解説 平成21年改正独占禁止法」(商事法務)p90では、

「優越的地位の濫用は、違反行為者が取引の相手方に対して商品等を供給する立場にある場合〔注:本文の場合〕と需要する立場にある場合〔注:かっこ書きの場合〕とが考えられるところ、違反事業者が前者である場合には相手方への売上額が、後者である場合には相手方からの購入額がそれぞれ課徴金の算定の基礎になる。」

と書いてあり、そういう理解を前提に読めば、かっこ書きの

「商品又は役務の提供を受ける相手方」

というのは、違反者が商品・役務の提供を受ける場合の相手方、つまり違反者への商品役務の提供者のことである、と理解できます。

しかし、そういう前提知識無しに読むと、かっこ書きは、商品役務の提供を受ける相手方に対して優越的地位濫用を行う場合、と読めてしまう気がします。

私などは、久しぶりに条文を読んで、「むむむっ」としばらく考え込んでしまいました。

ですので、

「当該行為が商品又は役務の供給を受ける相手方に対するものである場合は当該行為の相手方との間における政令で定める方法により算定した購入額」

というのは、

「当該行為が、当該事業者に商品又は役務を供給する相手方に対するものである場合は当該行為の相手方との間における政令で定める方法により算定した購入額」

としたほうが良かったと思います。

2010年12月27日 (月)

政府系ファンドによる株式取得の届出

平成21年独禁法改正によって、一定の組合(親会社の存在する組合)による株式取得も届出の対象になりました。

しかし、そこで届出の対象になるのは、取得する組合に「親会社」が存在する場合に限られます(独禁法10条5項)。

そして、「親会社」であるためにはその前提として、「会社」でなければなりません。

というのは、独禁法10条7項で、

「第二項及び第五項の『親会社』とは、会社等の経営を支配している会社として公正取引委員会規則で定めるものをいう。」

とされているからです。

(ちなみに、「子会社」は「会社等」であればよいので、会社に限りません。独禁法10条6項。)

そして、独禁法上の「会社」の定義については、9条2項で、

「会社(外国会社を含む。以下同じ。)」

とされている以外、とくに定義らしいものはありません。

なので、「会社」というのは、日本で言えば株式会社や合名会社、合資会社、合同会社、相互会社あたりの営利社団法人を意味し、外国会社の場合はそれに似たもの、ということになると思われます。逆に、一般社団法人及び一般財団法人に関する法律上の一般社団法人などは、「会社」には該当しないと思われます。

ですので、政府が直接100%出資しているファンド(政府が直接持分を有するファンド)による株式取得の場合

政府→ファンド

は、届出義務は生じないと思われます。

政府(日本政府も外国政府も)は、「会社」ではないので「親会社」になれないからです。

では、政府出資の特殊法人がファンド持分を有する場合(いわば、政府が間接的に出資しているファンド)

政府→特殊法人→ファンド

はどうでしょうか。

この場合は、組合持分を有する特殊法人が、「会社」の定義に該当するか否かによります。

ですので、例えば、日本政府が財団法人を設立してその財団法人がファンドに出資する場合

日本政府→財団法人→ファンド

には、財団法人は「会社」に該当せず、「親会社」になれないので、届出は不要になると思われます。

いわゆる独立行政法人も「会社」ではないので、「親会社」にはなれないでしょう。

日本政府→独立行政法人→ファンド

これに対して、特別法があっても株式会社形態の場合には、「親会社」にるというべきでしょう(たとえば日本郵政株式会社など)。

このように、政府系ファンドといっても、それに「親会社」に該当するものがあるか否かによって、株式取得の届出義務の有無が変わってきます。

2010年12月24日 (金)

「景品表示法(第2版)」の疑問

恐らく実務的には景品表示法の解説本として最も権威のある文献と思われる、消費者庁表示対策課長笠原宏編著「景品表示法(第2版)」(商事法務)、通称、「緑の本」(←と私が呼んでいるだけです)ですが、ちょっとおかしなところがあったのでメモしておきます。

第2版p89に、

この要件は、セール前の販売価格を比較対象価格として使用する限り、セール実施期間を通じて満たされている必要がある。」

「ただし、二重価格表示が行われる時点で、セールの期間が明示される場合には、一般消費者にとって価格の変化の過程が明らかであり、セール期間中に要件aが満たされなくなったとしても、直ちに問題とはならないと考えられる。」

という記述があります。

このうち、「この要件」というのが何をさすのか、一見するとよく分かりません。

「要件a」については、何をさすのかどこを探しても見当たりません(笑)。

では、まず「この要件」の方から解読しましょう。

p89を上の方に遡っていくと、

「この中でポイントとなるのは③の『過半を占めている』という要件である。」

との記述があります。

「要件」という言葉を使っているのはここだけなので、おそらく、「この要件」というのも、同頁に、

「① 二重価格表示を行う最近時において〔最近時要件〕、

② 比較対照価格に用いようとする価格で販売された期間〔販売期間要件〕が、

③ 当該商品の販売期間の過半を占めている場合〔過半要件〕」

と掲げられているうちの、③の要件(過半要件)のことであろうと理解できます。

つまり、上で引用した

この要件は、セール前の販売価格を比較対象価格として使用する限り、セール実施期間を通じて満たされている必要がある。」

というのは、(①~③の全部という意味ではなく)③の《過半要件》が、セール実施期間を通じて満たされている必要があるといっているのだろうな、と論理的には理解できます。

しかしそれでもこの引用部分が意味するところは今ひとつはっきりしません。

おそらく、直近8週間(←ガイドラインの「最近相当期間」の定義による)のうち過半を当該価格で販売した実績がないと③の要件は満たさない、といっているのだと思います。

つまり、例えばセール開始から4週間過ぎると、直近8週間のうち4週間はセール価格で販売していたことになるので、③の《過半要件》を満たさない、つまり、セール期間が4週間を過ぎると、セール開始前の価格(通常価格)を比較対象として表示できない、ということです。

実は初版p88では以上のことがかなり詳細に説明されています。第2版では、一気に端折られているので、分かりにくくなっています。

次に、上の2つめの引用部分の「要件a」というのを解読しましょう。

第2版では、いきなり「要件a」と出てくるので、何をさすのか分かりません。

実は、初版p88では、

「・ 当該商品の販売期間の過半を占めていること(要件a)」

「・ その価格での販売期間が2週間未満でないこと(要件b)」

「・ その価格で販売された最後の日から2週間以上経過していないこと(要件c)」

という整理がされており、おそらく第2版の「要件a」も、初版の「要件a」を意味するのではないか、と思われます。

こういうミスは、困りますねぇ・・・

第2版をざっと見た感じ、初版の記述を整理しようという意図は感じられるのですが、どうも商法が会社法に改正されたときのような、澱(おり)を取り去ってしまったような、人肌のぬくもりを感じない記述になっているような気がします。

澱を取り去っても、私などは法律家ですから論理だけで読み進めていけますが、一般の方にはかなり読みにくいのではないでしょうか。

まして、澱を取り去った文章で引用を間違ったりすると、論理を追って理解することもできなくなり、致命的です。

緑の本は、初版も捨てずに大事に使いましょう。

2010年12月22日 (水)

グループ内の売上と単体の「国内売上高」

企業結合の届出においては、グループ全体の売上である「国内売上高合計額」と、会社単体の売上である「国内売上高」の両方が基準になり得ますが、国内売上高合計額の計算においてはグループ内の売上は相殺消去されるのに対して、国内売上高の計算ではグループ内の売上もカウントされるので注意が必要です。

国内売上高合計額の計算においてグループ内の売上が相殺消去されることは、届出規則2条の2第2項に、

「・・・国内売上高合計額を計算する場合においては、当該企業結合集団に属する会社等相互間の取引に係る国内売上高について相殺消去をして合計することができる。」

と書いてあることから明らかです(「できる」なので、必ず相殺消去しなければならないわけではありませんが)。

具体例で見てみましょう。

例えば、A社(持株会社)、a1社(製造子会社)、a2社(加工子会社)、a3社(販売子会社)の4社からなるA社グループ(企業結合集団)があるとします(a1~a3社はA社の100%子会社)。

そして、a1社は製造した商品の全部をa2社に販売し、a2社で加工した上でa3社に販売し、a3社が国内の需要者に販売するとします。

国内売上高合計額を計算するときは、グループ内の売上は相殺消去されるので、a3社の売上だけがA社グループの国内売上高合計額となります。

ですので、A社グループが株式取得における株式取得会社になる場合は、a3社の売上だけが「国内売上高合計額」となり、これが200億円を超えているかが届出の基準になります。

それでは各社の国内売上高はどうなるでしょう。

まず、a3社の国内売上高は、a3社自身の国内売上高です(当たり前ですね)。

ですので、A社がa3社の株式を譲渡する場合には、a3社の国内売上高が50億円超であるかが届出の基準になります。

次に、a2社の国内売上高は、a2社のa3社に対する売上全部となると思われます。

というのは、a2社とa3社は同じグループ会社ですから、a2社は当然a3社が日本国内の需要者に販売することを知っていると思われるからです(届出規則2条1項2号3号参照)。

ですので、A社がa2社の株式を譲渡する場合には、a2社の国内売上高(=a3社への売上高)が50億円超であるかが届出の基準になります。

それではa1社の場合はどうでしょうか。

a2社が国内の法人であれば、a1社のa2社に対する売上はa1社の国内売上高になると考えられます(届出規則2条1項2号)。

これに対して、a2社が国外の法人である場合、a1社の売上が国内売上高と認められるためには、a1社が、

「当該会社等〔=a2社〕が、当該取引に係る契約の締結時において、当該法人等が当該商品の性質又は形状を変更しないで本邦を仕向地としてさらに当該商品を取引すること又は当該法人等の本邦に所在する営業所等に向けて当該商品を送り出すことを把握している」(届出規則2条1項3号)

ことが必要であるところ、a2社は加工してしまうので、「商品の性質又は形状」を変更していることになるからです。

ですので、A社がa1社の株式を譲渡する場合、a2社が外国の法人だと、a1社の国内売上高はゼロとなり、届出は不要になると思われます。

ですので、例えば、精密な製造工程を要する製造業務は国内のa1社が行い、単純作業の組み立てや加工は海外のa2社が行った上で、国内の販売会社であるa3社に販売している、というケースですと、a1社の株式譲渡の場合には、どんなにa1社の届出が大きくても届出は要らないことになります。

さらに一般化すれば、a1社、a2社、a3社がグループ会社でなくても、結論は同じことになります。

このように、実体的な違法性の面からは問題になり得そうな場合でも、届出が要らなくなるということは、細かく見ていくと結構ありえます。

2010年12月21日 (火)

略式届出の導入の提案

企業結合の届出をする場合、セーフハーバー基準に該当するような、実体法上はまったく問題無さそうなケースでも、現行の制度だと、詳細なグループ会社の情報を提出しなければなりません。

つまり、届出書の書式は株式取得なら株式取得用の1種類だけで、結合の結果シェアが高くなるケースも、全然問題ないケースも、同じ量の情報を出さないといけないことになっています。

これは、とくにグループ会社が多いケースではかなりの負担になり得ます。

どうせ結論的にはOKになることが分かっているのに(なので多分公取委でも細かくは調査しないのに)、詳細な情報をださないといけないというのでは、喜ぶのは法律事務所だけということになってしまいます。

このような簡易な届出の例は欧州などにもあるので、日本でも同じような制度の導入を考えるべきだと思います。

公取委の企業結合審査は透明性に欠けるとか(個人的には、「手続が法律で明記されているから透明で、明記されていない事前相談なら不透明」ということはないと思うのですが、それはさておき)、発想が国内市場中心で日本企業の海外進出を妨げているとか(これにはいろいろ異論もあるでしょう)いった点は、批判が強いだけに公取委も随分と気を遣っているように思いますが、こういう批判ま表だってされるため、改善も期待できそうに思います。

しかし、略式届出のような細かい対応をすることも、企業のコスト低減という意味では大事なことではないかと思います。

例えばセーフハーバー基準に満たないようなシェアの場合には、

①企業集団の情報は過半数の持分でつながっている会社(親子会社)だけにするとか、

②両当事会社間で競合する商品役務を提供している会社だけに限定する(現状では、まったく競合しない商品でも売上が30億円を超えると届出書に記載しないといけない)

というのはどうでしょうか。

シェアを基準にすると、シェア算定の前提として市場画定をしなければならないことになり、それはそれで手間がかかるだろうという意見もあるかもしれませんが、逆に市場画定にそれほど迷わないケースもたくさんあると思います。

届出人の市場画定が怪しいと思えば公取委はいつでも調査できるのですから、グループ会社の情報を出し尽くさせる必要性もないでしょうし。

というわけで、略式届出の導入を提案したいと思います。

2010年12月20日 (月)

間接取引拒絶の根拠条文

間接の取引拒絶の独禁法上の根拠条文は何条でしょうか。

根拠条文が何条であっても問題の結論にはたいして影響しないのですが、意見書を書くときの引用条文が変わってきますので、整理しておきます。

間接の取引拒絶については、平成21年改正で、

①共同の間接供給拒絶→独禁法2条9項1号ロ、

②共同の間接供給受領拒絶→一般指定1項2号、

③単独の(あるいは競争者でない者と共同してする)間接取引拒絶→一般指定2項後段、

というふうに整理されました(ややこしくなった、というべきか)。

①は法律自体が根拠なのでよいとして、②と③の場合に、独禁法の条文は何条を挙げるのが正しいのでしょうか。

結論からいえば、②も③も、独禁法2条9項6号イ(不当に他の事業者を差別的に取り扱うこと)でOKです(同旨、白石「独占禁止法(第2版)」p163以下、金井他編「独占禁止法(第3版)」p256(川濱先生執筆部分))。

以上は当たり前に思えるのですが、実は学説では争いがあって、間接取引拒絶の独禁法上の根拠は、「相手方の事業活動を不当に拘束する条件をもって取引すること」(独禁法2条9項6号ニ)であるという説があります(以下、適宜現行法に読み替えています)。

例えば、根岸他編「注釈独占禁止法」p348では、直接取引拒絶と違って間接取引拒絶は、

「不当に他の事業者を差別的に取り扱うこと」(独禁法2条9項6号イ)

とはいえないので、独禁法2条9項6号ニ(相手方の事業活動を不当に拘束する条件をもって取引すること)を受けたものというべきだ、とされています。

この説は、「取り扱う」という文言が、いかにも違反者が被差別者を自分の手の中で直接転がしているようなイメージを連想させるので、間接の取引拒絶の場合には、違反者が被差別者を「取り扱ってる」感じがしない、ということを言いたいのだと思います。

しかし、もともと曖昧な「取り扱う」という文言をそこまで律儀に解釈する必要はないでしょう。

なにより、取引拒絶が直接か間接かで独禁法上の根拠条文が異なるというのは、いかにも据わりが悪いというか、もともといろいろなものがごちゃまぜになっている独禁法2条9項6号ニに、さらに異質のものが混じって、とても分かりにくいです。

たぶん、昭和57年当時に一般指定の立案を担当した公取委の方も、まさか間接の取引拒絶が当時の独禁法2条9項4号(「相手方の事業活動を不当に拘束する条件をもって取引すること」)を受けたものと解釈されるとは夢にも思わなかったのではないかと思います。

確かに、日本語の厳密な解釈からすれば、違反者が被差別者を「取り扱っている」(イ説)というよりは、違反者が拒絶者と「不当に拘束する条件をもって取引している」(ニ説)というほうが、しっくりするのかもしれません。

でも、ニ説には実際上の難点もあって、拒絶を依頼される者と依頼者(違反者)との間に取引関係が必要になってしまいます。

これに対してイ説では、拒絶を依頼する者とされる者との間に取引関係は不要であり(拒絶依頼者が被差別者を「差別的に取り扱っている」とさえいえればいい)、より柔軟な適用が可能だと思います。

以上により、間接取引拒絶の独禁法上の根拠条文は2条9項6号イで決まりです。

2010年12月18日 (土)

株式譲渡はなぜ譲受人だけが違反者なのか?

独禁法10条1項では、

「会社は、他の会社の株式を取得し、又は所有することにより、一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなる場合には、当該株式を取得し、又は所有してはならず、及び不公正な取引方法により他の会社の株式を取得し、又は所有してはならない」

とされています。

つまり、株式譲渡には常に譲渡側と譲受側がいるにもかかわらず、10条1項違反となるのは譲受側だけです。

条文にはっきりそう書いてあるので解釈論としては違反者は譲受人だけですが、本当にそれで良いのでしょうか。

「株式を譲渡する側は株式発行会社の支配権を手放すのだから違反になるわけないじゃないか」、という意見もあるかも知れませんが、必ずしもそうとは言えません。

というのは、株式譲渡によって競争制限が生じるのは、会社に対する支配の移転が生じる場合に限られず、譲渡によって株式所有会社の行動のインセンティブが変化することが問題である場合もあるからです(川濱他著「企業結合ガイドラインの解説と分析」p54)。

例えば、A社とB社がジョイントベンチャーを設立することによって、利害が一部共通化する結果、一生懸命競争しようというインセンティブが減るかもしれません。

株式譲渡の例でいえば、A社が、その100%子会社のa社株式のうち、50%をB社に譲渡するような場合です。

この場合、10条1項では、譲受人であるB社だけが違反者となります(これは解釈論)。

でも、それでいいのか?というのがここでの問題意識です(これは立法論)。

上の株式譲渡の例では、A社とB社が競争を止めてしまうことが問題なのですし、例えばA社が株の取得をB社に持ちかけたような場合を考えると、ますますB社だけが違反者となるのが辻褄が合わないような気がします。

実際問題として、もしA社も違反者とすることができると、排除措置命令をA社に出すことも可能となるメリットがあると思います。

B社にだけ排除措置命令を出すとすると、「公取委の認めた者に譲渡せよ」という内容にしかできませんが、A社にも命令を出せると、

「A社はa社の株を●●円で買い戻せ」

という命令も可能なように思います(B社には同じ値段で売る命令を出す)。

ま、値段を公取委が決める必要はありませんが、当事者双方に命令を出せるなら、問題がスムーズに解消できるでしょう。

ちなみに他の企業結合ではどうなっているかというと、役員兼任(13条)では、兼任によって競争を実質的に制限することとなっていはいけない、というだけなので、そもそも名宛人は役員個人ですし、その役員が支配側の出身であるのか支配される側の出身であるのかは問題ではありません。

合併(15条)では、消滅会社でも存続会社でも区別無く、名宛人となっています。

共同新設分割(15条の2第1項)では、共同新設分割の全当事者が名宛人となります。

ちょっと要注意は、吸収分割の場合で、15条の2第1項では、

「会社は・・・吸収分割をしてはならない。」

とされています。

ここで、吸収分割を「する」会社(=15条の2第1項の名宛人)とは、会社法の用例にしたがえば、事業を切り出して他に譲渡する側の会社(会社法の用語でいえば、吸収分割会社。会社法757条)をさすと考えるほか無いのですが(会社法2条29号も参照)、公取委の吸収分割届出書の書式は両当事者名で出すことになっている問題点は以前このブログでも指摘したとおりですし、会社法の用語法に慣れていない人、ないしは、「独禁法の解釈は会社法に従う必要はない」というほとんど暴論に近い立論をする人(会社法の概念を独禁法が借用しているにもかかわらず!)は、吸収分割の場合の15条の2第1項の名宛人は両当事者であると言うかも知れません。

このように、現行法の正しい解釈では、吸収分割の場合には事業を手放す側だけが排除措置命令の名宛人ということになってしまっています(つまり「暴論」のほうが結論は妥当)。

次に共同株式移転(15条の3第1項)では、全当事者が名宛人です。

事業譲渡の場合(16条)は、譲受人が名宛人です。

事業の賃貸(16条1項3号)では、賃借人が名宛人です。

経営の委任(16条1項4号)では、経営の受任者が名宛人です。

損益全部の共通契約(16条1項5号)では、全当事者が名宛人です。

こうしてみると、企業結合の実体規定の名宛人(排除措置命令の対象者)は、事業に対する支配の取得者という形で統一的に説明できるわけではありません。

であれば、株式取得の場合に譲渡人が名宛人となっても、別におかしくないような気がします(ちょっとこじつけですが)。

会社法になってから現金を対価とする合併等が認められるようになり、合併等の企業結合と支配権の移転というのが必ずしも論理的に繋がっているわけではないことが、より一層明確になりました。

つまり、合併して現金を受け取る株主(消滅会社の株主)は、消滅会社の支配を失うのであり、実は株式の取得こそが支配の移転において決定的に重要であることがはっきり見えてきました。

ただ独禁法の世界では、上述のように、インセンティブの共通化による競争制限というシナリオもあるので、支配の取得の有無にかかわらず、競争制限を排除できるような仕組みにしておいた方がいいような気がします。

(その点、controlの移転を届出基準とするECや中国はどうなっているのでしょうか。インセンティブの共通化というのはあまり議論されていないのでしょうか。歴史の浅い中国はさておき、ECについてはそのうち調べてみたいと思います。)

と、ここまできてもう一度10条1項を読むと、

「会社は、他の会社の株式を・・・所有することにより、一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなる場合には、当該株式を・・・所有してはなら(ない)」

となっています。

この「所有」を根拠に、上記の例で、A社がa社の株式50%を所有し続けていることが競争制限につながるという理屈で、A社(譲渡人)を違反者とすることはできないでしょうか。

やっぱり無理でしょうね。

というのは、(そもそも10条1項はそんな事態を想定していないでしょうし)

「所有することにより

競争制限が生じることが必要なのであって、上記の例で競争制限が生じたのはあくまで譲渡した50%の方が原因なのであって、引き続き持ち続けている50%の方が原因ではないからです。

でも、A社が名宛人にならないとしても、A社が任意で残りの株50%をまったく関係のない第三者に譲渡することにより、進んでA社とB社のインセンティブの統一化を解消すれば、結果的にB社に対する排除措置命令が出ることも免れる、という解決を図ることは可能でしょう。

2010年12月17日 (金)

景表法の相談のポイント

景表法の相談を受けることは多いですが、いくつか気をつけていることをメモしておきます。

まず、商品役務の内容を詳しく聞くことです。

たまに、広告等のドラフトを送ってこられて、「これは景表法に反しますか」と聞かれることがありますが、商品役務の内容が分からなければ正確な回答はできません。

広告に明らかな嘘を書いているということは通常あまりないので、問題は、広告全体としてみて商品役務の内容を正しく伝えていないのではないか、ということであることが多いのです。

つまり、書いてあることは事実だけれど、その商品の短所を記載せずに、長所だけを強調する場合も、有利誤認表示になりうるのですが、その判断のためには、短所についても詳しく聞いて、書かなくても大丈夫かどうかを判断する必要があります。

たとえば、途中解約の場合には違約金がかかるのにそれを書かなくても大丈夫かどうかは、どのような場合に違約金がかかるのか、実際の取引においてそのような事態はどの程度生じるのか、ということも聞かないといけません。

権利行使に制限はあるのか、例えば週末は利用できないという制限はあるのか、といったことも、聞いてみなければ分かりません。言われれば当たり前のことですが、当たり前のことだけに、これを忘れると重大なミスにつながります。

途中解約したときの返戻金は月割りか、日割りか、なども聞きます。

その他手数料や隠れた負担が顧客に発生しないか、も詳しく聞きます。

それから、これらの注意書き(不利な点)は、顧客への訴求ポイント(有利な点)と同じ視野に入るように書いてもらうようにしています。

同じ紙に入りきらない場合には、矢印で視線を誘導するなりして、注意書きのところに目がいくようにします。

ですので、パンフレットの表に訴求ポイントを書いて、裏に注意書きを書くのも危ないです。別の紙にして一緒に渡すというのはもっと危ないです。

その他には、全体的な印象を重視します。

広告等の内容を細かく検討すればするほど、細かいところばかりに目が行くようになってしまうのですが、一般の消費者は弁護士がチェックするように細かく広告を読んだりしないので、じっくり読まないと分からないような注意書きは、分かりやすく書き直してもらいます。

それから、景表法の場合には、正式な措置命令にまでは至らなくても、注意や警告を受けることがあり、それはそれで企業にとってはダメージですから(しかも、措置命令と違って争う機会が法律上保証されていない)、注意や警告を受けるリスクもできるだけ低くするにはどうすべきか、という点に頭を絞ります。

例えば注意書きに下線を引くとか、枠で囲むとか、一目見て「読まなきゃいけない」ということが分かるように工夫をします。

また、景表法違反が生じるケースは、どうも社内のチェック体制が甘い(あるいは存在しない)場合であることが多いような印象を受けます。

広告等の内容をいちいち法務部がチェックしないケースの方が多いでしょうから、上記のような視点をもって、担当者の方がチェックして頂ければと思います。

それから、弁護士がチェックできる内容ではありませんが、世の中では、特定の食材を使っていると表示しながらそうでない(たとえば地鶏と表示しながらブロイラーだった)というケースがよくあります。

原因を聞くと、「発注担当者が勘違いした」という具合です。

どうしてそういうことが生じるのかを想像すると、結局、発注する人に広告の内容がきちんと伝わっていないのが原因だと思います。

「地鶏を発注するように」と発注担当者に指示するだけでは不充分で、

「広告に『○○産地鶏』と書くから、地鶏でないと景表法違反になるんだ」

ということまできちんと説明しないと、地鶏が品不足のときには、地鶏と食べて区別の付かないくらい上質なブロイラーでもいいじゃないかと思うのも当然です。

「国産」とか「中国産」とかいう表示もそうです。

そこまで徹底して初めて、景表法違反が防げるのではないかと思います。

2010年12月 9日 (木)

優越的地位濫用ガイドライン成立

11月30日に「優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の考え方」(優越的地位ガイドライン)が公表されました。

同時に公表されたパブコメのQ&Aには面白いことがいろいろ書いてありそうですが、ちょっと気が付いたことを、とりあえず1つだけ書いておきます。

「第1」に関するQ&Aのところ(p2)で、

「優越的地位の濫用の要件については強制・強要の存在が要件として示唆されているが、『取引上の地位が相手方に優越しているものが、当該相手方の自由かつ自主的な判断による取引を阻害していること』の定義、どのような行為が『強制』に該当するのか、強制・強要がどの程度に至れば違法とされるのかを明確化されたい。」

という質問に対して、

「第1の2に記載してあるとおり、優越的地位の濫用として問題となる行為は、『自己の取引上の地位が相手方に優越していることを利用して、正常な商慣習に照らして不当に』行われる、独占禁止法第2条第9号5号イからハまでのいずれかに該当する行為であり、『強制』が要件となっているわけではありません。」

と回答されています。

たぶん回答を準備した人は、余り深く考えず、条文をそのまま引っ張って紋切り型の回答しただけだと思うのですが、強制が要件でないと言い切ったのはちょっと意外な感じがしました。

というのは、実務的な感覚としては、強制していることが優越的地位の濫用の当然の前提であろうという意識があるからです。

逆に、強制の契機がまったくない場合には、優越的地位の濫用とは言えないでしょうね、という回答になることが、結果的に多いです。

例えば、ときどき相談を受けることがあるのですが、相手方に押しつけた取引条件が、実は相手方に相当不利なんだけれど、相手方は不利であることすら知らない、というケースがあります。

こっち側(濫用者側)の事情(カラクリ)を相手方(被害者側)が知ったら怒るだろうなぁ・・・と思いつつも、優越的地位濫用は強制なり、相手方への働きかけが必要だという発想があるので、

「こういうのは優越的地位濫用には当たらないのでしょうか。」

と質問されても、

「ばれたら契約違反と言われそうですし、信義則や倫理的にどうかとは思いますが、優越的地位濫用というのとは違いますね・・・」

という回答になります。

しかし、前述のパブコメの回答に触発されて、改めて、

「自己の取引上の地位が相手方に優越していることを利用して、正常な商慣習に照らして不当に」

というのを文字通りに読んでみると、こういった、隠れて不利益を負わせるパターンも、優越的地位濫用と構成できるように、読めなくもない気がしてきました。

有り体に言えば、情報格差が圧倒的であることを「優越」と捉えるわけです(そう考えれば、取引依存性も要らない?)。

このように考えることができれば、相手の知らないことをいいことに「正常な商慣習に照らして不当」な取引条件を押しつければ、優越的地位濫用にあたると考えることも不可能ではないように思えてしまいます。

ま、そこまでクリエイティブな運用を公取委がするとは思えませんし、パブコメQ&Aもそんなことはまったく念頭にないでしょう。

紋切り型の回答のつもりが、思わぬ読み方をされることもあるという例ですね(そんな読み方をするのは私だけかも知れませんが)。

ですので、一般の人に少しでも公取委の考え方のイメージを持ってもらうという観点からは、

「強制していることは相手方の自主的判断を阻害していることの重要な証拠になります」

とか、もうちょっと実態に即した回答をした方が良かったのではないかという気がします。

2010年12月 8日 (水)

商品の買い占めと独占禁止法

インフレが問題になっている中国で、政府の政策を批判して、地方の農作物の卸売市場で農作物を買い占めている業者に独禁法を厳格に適用すべきだとの指摘がなされている、という記事を見かけました(日経ヴェリタス11月28日号p65)。

確かに、「独占禁止法」という名前から普通の人が想像するのは、「独り占めを禁止する法律」ということなので、こういう買い占めも独禁法違反になり得る、というか、ひょっとしたら典型的な独禁法違反に見えるのかも知れません。

しかし、独禁法を仕事にしている私などからみると、こういう行為は、「できるだけ安く買ってできるだけ高く売る」という、普通の商売そのものなので、まったく独禁法上問題ないという気がします。

ただ、まったく問題ないというのは少し言い過ぎかも知れなくって、例えば特定の事業者が希少な原材料を買い占めることによって原材料を手に入れられなくなった需要者が市場から排除される、という形でなら、独禁法の問題にもなり得ます。

しかし、この方(香港中文大学の教授さんらしいです)がインフレに対する中国政府の政策を批判する文脈で独禁法を持ち出していることからも分かるように、ここでこの方が問題にしているのは、要するに、農作物を安く買い占めて、高く売る、ということそのものです。

時代劇で、飢饉の時に強欲な庄屋が米を買い占めて、庶民が困っているようなイメージですかね。

でも、そういうのはやっぱり独禁法の問題ではないと思います。

経済学の教科書では、ダフ屋を取り締まるべきかという議論が出てきて、経済学的観点からは、法律で取り締まるほどのものではないということで、意見が一致しているようです。

つまり、チケットをより高い値段で買っても良いと思っている人に渡るようにすることは、消費者厚生を増大させると考えます。

もし早い者勝ちだったり、抽選だったりすると、もっと高い値段で買っても良いと思っていた人の手に渡らず、それほど欲しくもなかった人の手に渡ってしまう、という理屈です。

たしかにダフ屋は不労所得を得るわけですから、ダフ屋行為が公平かといえば異論もあるかも知れませんが、経済学的観点からは、それでも一番欲しいと思っている人(=一番高い値段を払う人)の手に渡るのだから望ましいのだ、と考えます。

私もそういう発想です。

つまり、安く買って高く売ることは、市場経済の中では別に問題ない行為ですし(それが人間が一生を賭ける仕事にふさわしいのかは、また別の話ですが)、競争保護法である独禁法上も、もちろん問題ないことになります。

でも、感情的に納得できないことは確かにあって、経済学者と法律家の意見が分かれるところだと思います。

最近ベストセラーの、マイケル・サンデル著「これから『正義』の話をしよう」の中に、アメリカでハリケーンのために住むところがなくて困っている人が多数出たのをいいことに、モーテルが宿泊料を何倍にも上げることは取り締まるべきか、という話が出てきますが、同じような話ですね。

だいぶ話がそれましたが、要するに、強欲な庄屋が安いときに米を買って高く売るのは、独占禁止法違反ではない、ということです。

「独占禁止法」という名前は、「名は体を表さない」ことの代表例であると思いますが(笑)、ここでも、その弊害が出たといえるのではないでしょうか。

中国の独占禁止法は、「反壟断法」といいます。

「壟断」(ルゥォン・トゥアン)というのは、日本語の「独占」の意味なので、文字通り読めば、「反独占法」です。日本の独禁法と同じ、独り占めを禁止するニュアンスですね。

さらに、中国語での「壟」というのは、畝とか畦とかいう意味なので、「壟断」は、畝を断つ、つまりは庶民に米を行き渡らないようにする、という語感によりぴったりなのかも知れません。

中国の「反壟断法」という名前が日本の独禁法を参考にしたのかどうか分かりませんが、もし参考にしたなら、良くないところを真似しちゃったなぁという感じがします。

やっぱり、「競争法」の方がよかったのではないでしょうか。

中国はとくに、独禁法の解釈がまだ安定していないので、名前から受ける印象で、とんでもない運用されてしまう可能性が否定できないように思います。

2010年12月 7日 (火)

事業の廃止と国内売上高

A社が、自社の事業(α事業、β事業)のうち、一部の事業(例えばα事業)を廃止した場合、その直後に行う別の企業結合の届出における国内売上高は、α事業を除いて計算されるべきでしょうか。

例えば、国内売上が、

(α,β)=(120億円,120億円)

のA社が、α事業を廃業したとします。

その直後に、まったくこれとは関係なくB社の株式を取得する場合(B社の国内売上高は50億円超とします)、株式取得の届出の判定の際に、α事業の120億円が国内売上高に含まれるのか、という問題です。

含まれれば、A社の国内売上高は240億円となり、届出を要することになりますが、含まれないとすると、120億円となり、届出は不要となります。

さて、どちらでしょうか。

この点、α事業を別会社に譲渡した場合には、α事業の売上高は、その事業が決算を経たものである限り、当該売上高は当該別会社に引き継がれる、というのが公取委の立場です。

例えば、届出制度Q&Aの「株式取得の届出の要否について」のところで、

「 Q13  当社はA社の株式のすべてを10月1日にB社から買い取ることを予定しています。A社(株式発行会社)はB社が10月1日に単独新設分割により設立を予定している会社で,B社の事業の一部(国内売上高50億円超)を承継する予定です。株式取得の届出は必要ですか。

A13  届出が必要となる場合があります。A社は設立された直後のため売上高はありませんが,B社から事業を承継しており,当該分割対象部分に係る国内売上高について,B社が決算を経ている場合には,当該国内売上高をA社の国内売上高として国内売上高の合計額を計算してください。

とされています。

このQ&Aの場合に、承継対象事業の売上が、譲渡後にB社(譲渡会社)の売上にもカウントされるということは、さすがにないはずです(それではダブルカウントです)。

では、今問題にしている、事業廃止の場合はどうでしょうか。他社にα事業を譲渡した場合と同様、α事業の売上はゼロとカウントしてよいでしょうか。

困ったときは条文をみてみましょう。

10条2項で国内売上高は、

「国内売上高(国内において供給された商品及び役務の価額の最終事業年度における合計額として公正取引委員会規則で定めるものをいう。以下同じ。)」

と定義されています。

これを文字通り読むと、α事業の「最終事業年度」(決算を経た最後の事業年度と考えてよいでしょう)に売上が計上されている以上、その後α事業を廃止しても売上の数値は残る、とも読めそうです(とくに、「国内売上高」が、「事業」の存廃に影響を受けることを裏付ける文言の根拠はなさそうですし)。

でも、そうすると、前述の、α事業を譲渡した場合も同じに考えないと辻褄が合わないと思います。

ですので、事業を譲渡した場合に譲受会社にα事業の売上が承継されると考える公取委の立場に立つ限り、10条2項はα事業廃止の際にその売上を除外することを否定する決定的な根拠にはならないように思います。

やはり、譲渡の場合と同様に、廃止の場合も、「国内売上高」から除外されると考えるべきではないでしょうか。それが常識に適うように思いますし、条文の文言に反するとまでは言えないと思います。

確かに、

①事業は一応存続しているけれど最近売上が激減している場合(←この場合は、最終事業年度の売上をカウントすべきことに争いはないでしょう)と、

②完全に廃止してしまった場合

との限界は微妙なこともあるかもしれませんし、両者で結論が正反対になるのはバランスが悪いのではないか、という意見もあるかもしれません。

しかし、そこは常識で判断すれば良いのではないかと思います。

イメージでいえば、事業の廃止は事業の譲渡のほうに近く、売上の激減とは違う、ということです。

でも、「常識で」といっても、やはり微妙な場合はあるでしょうね。

事業を廃止したといっても、当該事業用資産を廃棄したような場合は、もう生産することはできませんから、競争法の観点からも、「なし」と扱ってよいと思います(←こういう実質的な考慮を形式的な届出要件の判断に持ち込むと、ますますわけが分からなくなるので、賛否両論あろうかとは思います)。

これに対して、景気が悪くて一時的にラインを止めているだけなら、「廃止」にはならないでしょうし(しかもここでの問題設定の前提では、「一時的」というのは、必然的に1年未満ということになりますし。2年止まっていれば、何もしなくても「最終事業年度」の売上はゼロになります)。

やはり、競争単位として操業できるような事実上の状態が残っている限りは、廃止には当たらないのでしょうね。

ちなみに、α事業の最終事業年度の売上をゼロにするために決算期を変更して期中で決算すれば良いのではないか(例えば、廃止後3ヶ月後に決算をすれば、α事業の最終事業年度はゼロなので、4倍して1年分にしてもゼロ)、と一瞬思ったのですが、これは無理っぽいです。

というのは、公取委の見解では、足りない9ヶ月分は前年度の売上からもってくるということなになっているからです(Q&Aの「届出の要否について」の第1問)。

2010年12月 5日 (日)

公取委の地域市場の考え方は変わったのか。

最近、公取委の地域市場での競争に関する考え方が変わってきたのではないか、という趣旨の論説を見かけました(「独禁法によるM&A規制の理論と実務」p171)。

論者の方によれば、例えば平成17年度事例(東武ストアを傘下に置く丸紅によるダイエーへの出資)で、公取委が、スーパーの商圏は半径500m~1kmとみるのが適当と判断したのは、

「従前の全国的量販店という市場の捉え方を修正したもので、需要者にとっての代替性という観点からすると当然の変更であり」、

「全国規模の事業者が全国規模で競争していると捉えるのは、供給者の観点であり、需要者の観点とは異なる。全国ランキングで競争を捉えていた時代の名残といえるであろう。」

とのことです。

市場は需要者の視点から画定すべきというのは私もまったく同感です。

全国規模で競争を展開しているから市場は全国だ、というのは、独禁法における市場というものを理解していないのではないかと考えざるを得ません(例えばメガバンクの合併が相次いだときに、預金サービスについて公取委は、当事者が競合する都道府県とともに、「全国」も市場として画定したことが思い出されますね)。

ただ、この文脈で前述の丸紅とダイエーの事例を引用するのは、読む人によっては、ちょっと誤解を招くのではないかと思われます。

なぜなら同事例で公取委は、前述のような市場画定をした後、

「また、スーパーの事業地域価格設定方法等を考慮し、都県別でも地理的範囲を画定した。」

としているからです。

これは、全国市場を画定したものではないものの、供給者側の事情を考慮して、需要者の目から見た商圏よりも広い地理的市場を画定したものと考えざるを得ません。

そうすると、この事例で地域市場における公取委の考え方が変わったといえるのか、ちょっと疑問を感じます。

繰り返しますが、市場は需要者の目から見て画定すべきという考え方にはまったく賛成です。

公取委も、そのような運用にすべきです。

ただ、以上に述べたような次第で、公取委の地域市場の考え方が変わったと言えるのかについては、個人的には、そこまで言うには躊躇を覚えるのです。

また後知恵のようではありますが、メガバンクの合併の件で預金サービスで「全国」を地理的市場と画定したのは、頻繁に全国を転勤するようなサラリーマンは全国に支店がある金融機関にしか預金しないので、そういう需要者層を想定して「全国」と画定したのかも知れません(ただ、公取委の決定からはそのような考慮がなされた気配は読み取れませんし、そのような転勤族だけを狙い撃ちにして預金金利を下げたり(あるいは上げないようにしたり)することはできないので、いずれにせよそのような市場は画定すべきではないのですが)。

そう考えると、スーパーの場合とメガバンクの場合で、全国と市場画定されたりされなかったり、ということも、あり得るような気がします。

ちなみに、平成元年独占禁止白書のローソンとサンチェーンの合併についても、関連市場を「コンビニエンス・ミニスーパーで全国2位」(p140)と紹介するのも、ややミスリーディングのように思います。

というのも、同独禁白書p78では、

「コンビニエンス・ミニスーパー業界において全国で引き続き第2位を占め」

という記述は確かにありますが、その直前に、

「行為後のシェアが25%以上となる行政地域が特に大阪府、兵庫県、奈良県においてかなり増加する」

という事実が認定されており、全国シェアだけが問題にされているわけではないからです(コンビニだと、「行政地域」でも広すぎるとは思いますが)。

確かに、人様の著したものに些細な難癖をつけるのは余りお行儀がよろしくないと自分でも思うのですが、開かれた場で意見を述べるのもそれはそれで公共の利益に適うことかと思いましたので、あえて書かせて頂きました。

ただ強調したいのは、まとまった著書なり論文を著すというのは、本当に大変なことなのです。

日々のブログでお茶を濁している私としては、自らの知的活動の成果をまとまった形で世に問う方々に対しては、本当に尊敬の念を感じます。

ですが、ブログにはブログの、こういった敷居の低さがありますので、これはこれで議論の場として意味があるのだと思います。

2010年12月 4日 (土)

2社以上から事業を同時に譲り受ける場合の届出

S1社のs1事業と、S2社のs2事業を、B社に同時に譲渡する場合、独禁法16条2項の届出は必要でしょうか。

ここで、s1事業とs2事業の国内売上高は充分に大きく、B社の国内売上高は無いとします。

また、S1社、S2社、B社は、同じグループには属さないとします。

結論としては、届出は不要であると考えます。

16条2項で、届出義務を負う会社は、

「会社であつて、その会社に係る国内売上高合計額が二百億円を下回らない範囲内において政令で定める金額を超えるもの」

と規定されています。

そして、B社の国内売上高は、s1事業とs2事業を譲り受ける前はゼロなので、この国内売上高合計額200億円の要件を満たさないことになります。

なので、届出が要らないわけです。

注意が必要なのは、2つの事業譲渡が相前後して行われる場合(例えば、s1事業→s2事業という順番で行われる場合)には、届出が必要になるということです。

なぜなら、s1事業を譲り受けた時点でB社の国内売上高はs1事業の国内売上高を引き継ぐので、その時点で国内売上高200億円超の要件を満たしてしまうからです。

この点、「同時」といえるためには同じ日であればいいのか、ということが問題になり得ますが、私は、同時と言えるためには全く同時点でなければならず、例えばs1事業の譲渡をある日の午前、s2事業の譲渡を同じ日の午後に行う、と言う場合は、届出が必要であると考えます。

ただ、同じ日なら同時だと考えて届出不要と考えるのも、実務的にはそれなりの合理性がある(あんまり細かいことを言い出すと実務的にいろいろとしんどい)と思われますし、公取委もそれでOK(届出不要)というかもしれません。

同時であるとするためには、両方の事業譲渡の効力発生日を、日にちだけではなくて、例えば「日本時間の○年○月○日午後3時」とか、特定の時点で定めておくことが考えられます。

そこまで細かいことをいわず、同じ日付なら良いじゃないか、という考えもあり得ることは、上述のとおりです。

あるいは、s1事業の譲渡契約書とs2事業の譲渡契約書をまとめて、1通の3者間契約にしてしまう、ということも考えられます(その場合でも、私は、特定の時点を譲渡の効力発生時点として定めた方が良いと思います)。

以上のような届出不要とする考え方については、「脱法ではないのか?」とか「相前後したら届出必要なのに同時になった途端不要となるのはバランスを失するのではないか」といった異論もあり得るところかと思われます。

しかし、3つ以上の会社が合併する場合に、15条2項では、そのうち1つの会社の国内売上高合計額が200億円超で、残りの2つ以上の会社の国内売上高合計額が50億円超であることを届出の要件と明示しており、この考えに従えば、2つ以上の事業の同時譲受の場合に届出不要と考えるのは、何らおかしなことではありません。

つまり、A社(国内売上高合計額160億円)、B社(同60億円)、C社(同45億円)の3社が合併する場合、15条2項の条文からは、明らかに届出不要です。

なぜなら、200億円超の売上のある会社が1社も無いからです。

しかし、これは論理的に絶対的な基準ではなくて、別の考え方も立法論としてはあり得ます。

例えば、同時の場合は、それぞれが別時点で起こると考えて、どのような順番で起こっても届出要件を満たさない場合に初めて届出不要とする考え方です(米国のHSR法についての当局見解はこの考え方に従っているます)。

上の設例では、以下の、3×2×1=6パターンを考え、要件を満たすか見ていきます。

①A→B→C (売上は、160+60=220。次に、220と45の合併)

A→C→B (160+45=205。次に、205と60の合併

③B→A→C (60+160=220。次に、220と45の合併)

④B→C→A (60+45=105。次に、105と160の合併)

C→A→B (45+160=205。次に、205と60の合併

⑥C→B→A (45+60=105。次に、105と160の合併)

そうすると、②と⑤が届出要件を満たすことが分かります。

よって、ABCの3社間合併も届出必要と考えるのです。

しかし、15条2項は、このような、同時の行為を異時点のものと擬製する制度を、明文で排除しています。

とすれば、事業譲受の場合も、同時のものは同時(異時点の譲受とは犠牲しない)と考えるのが論理的に整合的ですし、文言にも忠実な解釈であろうと思われます。

さらに、例えばs1事業とs2事業が同じS社の事業で、S社からB社にs1事業とs2事業を同時に譲渡するような場合を考えてみます。

同じくs1とs2の国内売上は充分に大きく、B社の国内売上はゼロとします。

この場合には、届出要件の判定において、譲受対象事業の売上はs1とs2の売上の合計であり、譲受会社の売上はB社の売上(つまりゼロ)であることには、誰も異論はないでしょう。

であれば、売主がS社1社からS1社とS2社の2社になったからといって、別異に考える理由はないように思われます。

こういう考え方に立つと、s1事業とs2事業がB社という単独の支配の下に置かれるのに届出不要になって不都合ではないか、との異論もあるかも知れません。

しかし、16条2項の文言からしても、合併に関する15条2項とのバランスを考えても、同時点の行為を異時点のものと犠牲する解釈は導きようがありませんから、そのような不都合が生じても仕方のないことだと思います。

もちろん、届出要件は満たさなくても、事業譲渡が実質的に競争を制限する場合には実体法上違法であり、公取委の調査を受けることがあることはいうまでもありません(16条1項の文言上明らか)。

だからこそ、届出という手続面では多少の取りこぼしがあっても大して実害はない、ということもできます。

2010年12月 3日 (金)

原則違法な独占的グラントバックの範囲

「知的財産の利用に関する独占禁止法の指針」(知財ガイドライン)では、

「ライセンサーがライセンシーに対し、ライセンシーが開発した改良技術について・・・ライセンサーに独占的ライセンス(注19)をする義務を課す行為は・・・原則として不公正な取引方法に該当する(注20)(一般指定第12項)。」

としています。

つまり、このような独占的グラントバックは原則として違法、ということです。

知財ガイドラインのグラントバックの考え方を整理すると、

①独占的グラントバックは、原則として違法(第4・5(8)ア)、

②非独占的グラントバックは、2つに分かれ、

 (a)ライセンシーが自由に利用できる場合、原則として適法(第4・5(9)ア)、

 (b)ライセンシーのライセンス先を制限する場合、公正競争阻害性を個別に判断(第4・5(9)イ)、

ということになります。

注意を要するのは、「独占的」の意味です。

ガイドライン(注19)では、

「(注19)本指針において独占的ライセンスとは・・・独占的な通常実施権を与えるとともに権利者自身もライセンス地域内で権利を実施しないこと等をいう。権利者自身がライセンス技術を利用する権利を留保する形態のものは非独占的ライセンスとして取り扱う。」

とされています。

この定義は独占的ラインセンスの定義一般としては妥当なものですが、これを文字通りグラントバックに当てはめると、少々おかしなことになります。

例えば、ある特許のライセンサーがライセンシーに改良技術のグラントバックを義務づける場合に当てはめると、上記定義は、

「改良技術の独占的グラントバックとは、

ライセンシーがライセンサーに独占的な通常実施権を与えるとともに、

ライセンシー自身もグラントバックのライセンス地域内で権利を実施しないこと」

ということになります。

(グラントバックなので、ライセンサーがラインセンスを受ける側、ライセンシーがライセンスをする側、と逆になりますので注意して下さい。)

ところが、現実には、グラントバックは、独占的か非独占的かを問わず、地理的範囲については、「全世界」と定められることが多いです。

とすると、ガイドラインの独占的グラントバックの定義は、

「・・・(改良技術の所有者である)ライセンシー自身も、全世界で権利を実施しないこと」

となります。

では、ライセンサーが特許の日本国内における実施をライセンシーに許諾し、ライセンシーが改良技術のグラントバック義務(全世界)を課されている場合、ライセンシーが改良技術を日本国内に限って実施できるとき、このグラントバックは独占的でしょうか、非独占的でしょうか。

この点、グラントバックの地理的範囲が「全世界」の場合には、

「全世界で権利を実施しないこと」

の意味を、

「全世界のどこででも、まったく権利行使しないこと」

と解釈すれば、ほんの一部ででもライセンシーが行使できれば非独占的ということになります(結果的に、「独占的」の範囲は狭くなります)。

この解釈だと、改良技術をライセンシーが日本で実施できる場合には、「非独占的グラントバック」ということになり、上記説例では妥当な結論です。

しかし、この解釈には難点があって、「世界中」のほんの一部ででもライセンシーが改良技術を行使できれば「非独占」ということになってしまいます。

そうすると、例えば「ライセンシーは、改良技術Bを太平洋のとある無人島でだけ行使できる」というような場合でも、「非独占的グラントバック」になってしまい、明らかに変です。

そこで、2つめの解釈として、世界中どこででもライセンシーも権利行使できる場合に限って、「非独占的グラントバック」になる、という解釈があり得ます(結果的に、「独占的グラントバック」の範囲が広くなります)。

しかし、この解釈では、上記説例の場合に、日本で特許の使用を許諾した場合に、日本で改良技術の使用をライセンシーに認めた場合でも、「独占的グラントバック」ということになってしまいます。

しかし、それは「独占的グラントバック」の語感に合いませんし、結論としてもおかしいと思います。

もともとの特許のライセンスの範囲が日本だけなのですから、ライセンシーとしては、改良技術も日本だけで使えればよいはずで、改良技術のインセンティブとして充分なはずです。

そこで、3つめの解釈として、日本国内での特許のライセンスについては、日本国内でライセンシーが改良技術を使用できる限り、非独占的グラントバックと考える、という解釈です。

知財ガイドラインはそもそも日本国内のライセンスしか念頭に置いていないようですし、(注19)の「独占的ライセンス」の定義も、グラントバックを念頭においた定義ではなくて、ライセンス一般を念頭に置いた定義のように思われますので、この3つめの解釈がガイドラインの意図に反するということもないと思います。

ですので、日本で特許の使用の許諾を受けたライセンシーが改良技術を日本で自由に使用できる場合には、「非独占的グラントバック」と認められ、原則として不公正な取引方法には該当しないと考えます(ガイドライン第4の5(9)ア)。

さらに、ライセンシーが日本で改良技術をサブライセンスできる場合には、「改良技術のライセンス先を制限する場合」(ガイドライン第4の5(9)イ。この場合、公正競争阻害性を個別に判断します)には該当せず、やはり、原則として不公正な取引方法には該当しない類型だと考えます。

2010年12月 2日 (木)

不当廉売しない旨の合意

競争者間で、「不当廉売を行わないこと」という合意をすることは許されるでしょうか。

理屈の上では、独禁法上違法なこと(不当廉売)をしないでおこう、という合意なので、やっても良さそうですが、実務的には、このような合意はカルテルにつながる恐れ(しかも、その恐れはかなり強いと思われます)があるので、避けるべきです。

なぜ避けるべきかというと、安く売ることは本来競争そのものなので、それを禁じる不当廉売というのは本来独禁法上例外的な自体であることと、違法な不当廉売かそうでないかの区別があいまいなため、かかる合意は、結果的にどうしても適法な行為まで禁じてしまうことになるからです。

そもそも、事業者が他の事業者の販売価格を「不当廉売ではないか」と考えるケースのうち、本当に独禁法上違法な不当廉売に該当するのは、一部に過ぎないと思われます。

平成21年度には、公取委に1万2000件弱の不当廉売の申告があったそうですが、そのうち公取委が注意を行ったのが3000件余りに過ぎません(公正取引718号30頁)。

排除措置命令に至っては、しばらくゼロ件です。

そして、注意というのは、違法だと認定されたわけではありませんから、約1万2000件のうち違法な不当廉売と認定されたケースはゼロということになります。

それくらい、世間一般に事業者が同業他社に対して「不当廉売をやっているのではないか?」と疑うケースと、公取委が不当廉売と認定するケースには、大きな開きがあるのです。

このような現状を踏まえれば、「不当廉売をしない」という競争者間の合意は、独禁法上許されるべき競争までやめてしまう合意につながる恐れが大きいと言わざるを得ないと思うのです。

私もクライアントから、「競合他社のこの行為は不当廉売に当たらないか」と相談を受けることもありますが、実感からすると、不当廉売に該当しそうな場合はほとんどなく、むしろ公取委が年に約3000件も注意を出しているほうが驚きという感じがします。

なぜこのようなギャップが生じるのかというと、まず、他社を不当廉売だと主張する者は、自分のコストと比べて不当廉売だと言っているケースが多いように思います。

でも、比べるべきは競争者のコストとその価格なので、自分のコストと比べて安いと言っても、そもそも主張自体失当です。

それから、これが見落とされがちですが、コスト割れだけで不当廉売になるわけではありません。

つまり、一般指定で違法とされる不当廉売は、

「不当に商品又は役務を低い対価で供給し、他の事業者の事業活動を困難にさせるおそれがあること。」

なのです(一般指定6項)。

つまり、単に低い対価で供給するだけでなく、他の事業者の事業活動を困難にさせるおそれがあることが必要なのです。

他社の安売りに文句を付けている事業者からすれば、

「自分の事業活動が困難になると思うから文句を言っているんじゃないか。」

ということなのでしょうが、自分が困難になっていると思っているだけでは足りません。

不当廉売ガイドラインによれば、そのようなおそれがあるか否かは、

「他の事業者の実際の状況のほか,廉売行為者の事業の規模及び態様,廉売対象商品の数量,廉売期間,広告宣伝の状況,廉売対象商品の特性,廉売行為者の意図・目的等を総合的に考慮して,個別具体的に判断される」

ということなのです。

ですので、競争者間で不当廉売をしないようにする合意は、

「コストを下回る販売は止めましょう」

という内容だと、事業活動の困難かの要件を充足しない適法な価格競争まで止めることを合意していることになります。

もし合意の内容が、

「コスト割れで、かつ、『他の事業者の実際の状況のほか,廉売行為者の事業の規模及び態様,廉売対象商品の数量,廉売期間,広告宣伝の状況,廉売対象商品の特性,廉売行為者の意図・目的等を総合的に考慮して,個別具体的に判断』して他社の事業活動が困難になると認められるような安売りは止めましょう」

というのなら、禁じているのは独禁法上違法な行為だけ、ということなので、理屈の上では、かかる合意も適法になるのかもしれません。

しかし、このような合意を正確に理解できる人はほとんどいません(笑)。

聞く方からすれば、「ああ、価格競争はほどほどにしとけと言うことだな」と理解するのが普通でしょう。

ですので、このような合意をしても、適法な競争まで抑制してしまうといわざるを得ないと思います。

さらに合意だけではなく、例えば事業者団体の新年の挨拶で、団体の理事が、「不当廉売は独禁法に違反する違法な行為なので、みなさん行わないように」と呼びかけるような行為も、同様の理由で止めておくべきです。

事業者団体が会員から、他の会員の行っている不当廉売についての苦情を受けて、不当廉売をしていると疑われる会員のところに調査に行ったりするのも、独禁法上問題があり得ます。

このように、不当廉売については業界自らの力で是正しようとすると何かと問題が大きいので、公取委の力を借りるべきでしょう。

つまり、事業者団体名で、公取委に不当廉売の疑いのある事例を申告して調査を依頼する、ということはOKだと思います。

ただその場合でも、申告の準備の段階で価格やコストに関する情報が交換されてしまうリスクを考えれば、やはり単独で申告したほうが無難でしょう。

2010年12月 1日 (水)

企業結合ガイドラインの「結合関係」の改正

平成21年独禁法改正に合わせて、企業結合ガイドラインの「結合関係」の内容が、地味に改正されています。

株式取得の場合の「結合関係」(複数の企業が株式保有、合併等により一定程度又は完全に一体化して事業活動を行う関係)は、3段階で判断されます。

A社が株式を取得する会社、T社が株式を発行する会社とすると、以下のとおりです。

①A社グループ全体でのT社に対する議決権比率が50%超の場合、当然に「結合関係」ありとなり、企業結合審査の対象になります。

②A社グループ全体でのT社に対する議決権比率が20%超で、かつ単独で1位の場合も、当然に「結合関係」ありとなり、企業結合審査の対象になります。

①と②は、平成21年改正で、企業結合の届出がグループ単位での議決権比率で判断されることになり、届出の閾値が50%と20%の2つに整理されたことに合わせてガイドラインを改正したものです。

その証拠に、①も②も、改正前は、A社グループ全体での議決権比率ではなく、A社単体での議決権比率で判断することとされ、かつ、②については「25%超」でした。

やや注意を要するのは次の場合です。

③A社単体でのT社に対する議決権比率が10%超で、かつ3位以内のときは、以下の事情を考慮して「結合関係」が形成・維持・強化されるかを判断する。

(ア) 議決権保有比率の程度

(イ) 議決権保有比率の順位,株主間の議決権保有比率の格差,株主の分散の状況その他株主相互間の関係

(ウ) 株式発行会社が株式所有会社の議決権を有しているかなどの当事会社相互間の関係

(エ) 一方の当事会社の役員又は従業員が,他方の当事会社の役員となっているか否かの関係

(オ) 当事会社間の取引関係(融資関係を含む。)

(カ) 当事会社間の業務提携,技術援助その他の契約,協定等の関係

(キ) 当事会社と既に結合関係が形成されている会社を含めた上記(ア)~(カ)の事項

さて、③だけA社単体の議決権比率になっています。

しかし、これは、改正前の届出制度では10%、25%、50%の閾値で届出が必要で、しかも比率は単体でみることに合わせていたのが、改正後は10%超の届出が無くなったのに、ガイドラインでは③だけがそのまま残ってしまったからで、特に深い意味は無いと考えるべきでしょう。

つまり、ガイドラインを文言どおり厳密に読めば、A社の子会社がT社の議決権を10%超保有していても、A社単体での保有がゼロの場合には、A社が新たに9%取得しても、

「(A社の)・・・議決権保有比率・・・が10%を超え」

の要件を満たさず、結合関係の形成・維持・強化が生じないということになりそうです。

((キ)で、グループ会社の持株数も考慮されますが、それは、A社単体での議決権比率が10%超という要件を満たした上での話です。)

しかし、それでは不都合な場合もあり得ることは容易に想像できますから、きっとそのような厳密な読み方はしないのだろうと思います。

ただ、元を辿れば、平成21年改正前のガイドラインで実体的な違法要件であるべき「結合関係」をA社単体の議決権比率で判断していたこと自体に問題があるのであって、③はそれを引き継いだだけではあります。

しかし、どうせ①と②も改正するなら、ついでに(目立たないように?)③も改正しておけば良かったのにと思います。

今のままでは、なぜ③だけが単体基準なのか、疑問が沸いてきそうです。

有り体に言えば、「10%という低い比率でも結合関係を認めるのは慎重であるべきなので、単体基準にした」ということになるのかも知れませんが、それは後知恵というべきでしょう。

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