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2010年11月22日 (月)

実際より劣ったと誤認させる表示

景表法では、実際のものよりも著しく優良であると誤認させるような表示は不当表示として禁止されます(景表法4条1項1号)。

ですので、これとは逆に、実際よりも劣ったものと誤認させるような表示は景表法には違反しないことになります。

「自分の商品を実際よりも劣ったものと表示することなんてあるの?」と疑問に思われる方も多いかもしれませんが、実はそれほど珍しいことではありません。

例えば、広告で安売りのミシンを見つけたので買いに行ったら、セールスマンから、「そっちの安い商品はこういった難点があるから」といって高い方の商品を買わせるような場合です。

この場合、高い方の商品を実際より優良と表示すれば、もちろん景表法違反です。

でも、安い方の商品を実際より劣ったと表示しても、景表法違反にはならないでしょう。

その他の例としては、例えば、「聞くだけで脳が活性化する」というCDがあるとして(その表示どおりの効果がなければそれ自体景表法違反ですが、効果があるとして)、メーカーとしては、コピーされたりしては困るので(コピー自体著作権法違反ですがそれはさておき)、

「コピーをしたものを聴いても効果はありません」

と表示したり、付加価値をつけるために専用ヘッドフォンをつけて、

「専用ヘッドホンで聴かないと効果がありません」

と表示するような場合です。

この場合、アイポッドにダウンロードして普通のイヤホンで聴いても効果がある方が明らかに利用者にとっての利便性は高まるので、より優良であることになると思います。

したがって、コピーでは効果がないとか、専用ヘッドホンが必要とかいうのは、実際よりも劣っている表示ということになります。

しかしこれもやはり同様の理由で、景表法違反にはならないというべきでしょう。

微妙な例で、自社の旧商品と新商品を比較する表示なんていうのもあります。

例えば、キッチン用洗浄剤で、

「当社従来品に比べて洗浄力40%アップ!」

なんていう表示があります。

この場合、本当に40%アップしていなかったら不当表示といっていいでしょう。

では、「従来品」のデータをわざと品質の劣ったものと表示して、新製品のデータは真実のデータを表示した場合はどうでしょう。

(「40%アップ」という表示はなしです。)

新製品のデータが真実のデータを表示したものである以上、著しく優良と誤認させる表示というのは難しく、不当表示には該当しないように思います。

比較の対象(参照点)を意図的に悪く見せることで、売りたい商品を良く見せようとするのは、心理学や行動経済学が取り扱う領域ですが、優良誤認表示としてそのような表示を規制するのは、ちょっと難しいように思います。

なので、そのような表示を規制するとしたら、景表法4条1項3号で内閣総理大臣がしているするしかないのでしょう。

表示法というのは、消費者が不合理であることを前提に作られるべきだと思いますが、優良誤認表示というのは、優良か否かが客観的に決まることを前提にしているような気がします。

もちろん判例実務では、優良か否かは消費者がどう感じるかという視点から判断することになっています。

例えば、旬のアブラガニはタラバガニと劣らないくらい美味であっても、アブラガニを「タラバガニ」と表示すれば不当表示です。

しかし、「優良」か否かは客観的に決まると考えるのが本来は合理的なはずで、「優良か否かは消費者が優良と考えるかどうかで決まり、客観的に優良か否かで決まるのではない」というような、小手先の解釈で妥当な結論を導くのは、文言解釈としてしっくりこないものがありますし、微妙な事案で解決の指針を与えてくれないような気がしてなりません。

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