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2010年11月15日 (月)

会員登録をした人にあげるグッズは「景品類」か。

インターネットで商品を販売する場合に、事業者が、当該インターネットのサイトへの会員登録を促すために、会員登録してくれた人の全員または一部に何らかのグッズをあげたい、と考えることがあります。

このようなグッズは景表法の「景品類」に該当するでしょうか。

そもそも「景品類」に該当するのとしないのとで何が違うのかというと、提供できるグッズの価格に差が出てきます。

もし「景品類」に該当するとすると、景表法の適用があることになり、登録者全員にグッズをあげる場合には総付景品告示の範囲内、登録者の一部にあげる場合には「懸賞による景品類の提供に関する事項の制限」(告示)の範囲内でのみグッズを提供できることになります。

これに対して、もし「景品類」に該当しないとすると、景表法の適用がないことになり、提供できるグッズの価格に制限はなくなります(以前はこのような「オープン懸賞」にも一定の制限がありましたが、廃止されて制限は無くなりました)。

結論からいえば、基本的には「景品類」には該当しないと私は考えます。

ただし、インターネットのサイトから会員登録を申し込む方法に限ることが必要です。

お店にきてもらって登録してもらう場合や、インターネットとお店の両方で登録が申し込めるような場合は、取引付随性が認められるため(インターネットと店舗申し込みを併用する場合には、場合によっては取引付随性が無いといえることもあるのではないかと個人的には考えていますが)、「景品類」に該当してしまうため、だめです。

それではなぜ「景品類」に該当しないといえるのでしょうか。

「景品類」に該当するためには、取引付随性が必要です。

お店にきてもらってグッズをあげる場合には、お店にきてもらうということで取引付随性ありと認められます。

これに対して、インターネットで抽選に申し込む場合には、たとえその業者のサイトから申し込む場合でも、取引付随性は無いというのが公取委の立場で、私もそれが正しいと考えています。

あるサイトに行くことを、あたかもお店に行くことと同様に考えれば取引付随性ありということになりますが、インターネットは誰でも手間をかけずにアクセスできるので、お店に行くのではなくて、新聞広告が自宅に届いたり、お茶の間でテレビのCMに映るのにむしろ近い、という発想です。

なので、インターネットで申し込む限りは、「景品類」には該当しないのですが、ここでの問題は、会員登録という行為をさせるために、なんとなく取引に付随しているような感じがするので、すっきりしないのだと思います。

しかし、会員登録とはそもそも何かといえば、突き詰めて考えれば、申込者に、氏名やメールアドレスや住所といった個人情報を登録させて、それを業者の側で勝手に「会員」と名付けている、という場合が多いのではないかと思います。

もしそうだとすると、オープン懸賞(←景表法の適用なし)の申し込みはがきに氏名や住所を書かせるのと何ら異ならないといえます。

仮にオープン懸賞に応募してきた人の情報をデータベース化して、ダイレクトメールを送ったりといった販売促進活動に用いたとしても、(個人情報保護法の問題はさておいて)そのために景表法が適用されるということにはならないでしょう。

これに対して、「会員登録」という行為に気持ち悪さを感じる人は、「会員登録」という行為がインターネット取引を前提にしており、インターネット取引の必須の条件であるので、取引付随性があるのではないか、と感じるのでしょう。

しかし、「会員」というのは、極端に言えば、事業者の側が「会員」と呼べば「会員」である、といえます。

普通は消費者の側が会員になることに同意している場合がほとんどですが、何らかの権利義務が相互に発生しないような関係を、事業者の側が「会員」と呼ぶことは、法的には消費者の側の同意を得ることなく可能であるといわざるを得ないように思います。

(以前、かつて商品を購入した人全員を「○○クラブ会員」と呼んでいる会社がありました。)

会員登録は取引を前提にしているというのも、実際にはそんなことはなくて、グッズ目当てに会員登録だけして買い物しないことも大いに可能で、実際そういう人もおおいでしょうから、会員登録だけで取引付随性ありというのは無理があると思われます。

そのような「ただ登録するだけ」の会員登録でも、企業の側からすれば自分のサイトを消費者に知ってもらうメリット(オープン懸賞と同様のメリット)があるので、グッズをつけたいと思うのでしょう。

(ただ、あまり大きな賞品を付けると、商品に興味のない人がどんどん会員登録してきてしまうというジレンマはありますが。)

いったん会員登録しておくと、次にそのサイトで買い物をしようかどうか迷ったときの敷居が低くなる、というのも会員登録を促す理由かもしれません。

でもその程度の効果で、取引付随性や取引への誘引があるというのは無理でしょう。

ただし、申込者と事業者との間に何らかの権利義務関係が発生するような会員登録の場合は話は別です。

たとえば、会員登録するために会員規約に同意することが必要な場合は、会員規約というのは一種の基本契約ですが、そのような基本契約締結行為自体が取引の一部、あるいは取引と密接不可分な一部と考えられるので、取引付随性ありと私は考えます。

ですので、もし景表法の範囲を超えてグッズをつけたい場合には、会員申込時には規約への同意をさせない仕組みにしないといけないと私は考えます。

その場合には、実際に買い物をするときに「購入条件」などに同意させるのでしょう(それを「会員規約」と呼んでも同じことです)。

あるいは、会員となることで会費の支払い義務が発生するような場合には、会員となることがまさに取引そのものと考えられ、取引付随性ありとみなされると思います。

厳しい立場を取れば、グッズを送るのに必要な範囲を超えて情報を提供させるのは全て取引付随性ありという考えも不可能ではありませんが、限界が不明確ですし(氏名と住所は必要だけれども、Eメールアドレスはどうか、誕生日はどうか等)、そのような微妙なラインで線引きすることは、実務的な感覚としてはちょっと考えにくいです。

そのほかにも、取引付随性ありとみなされる可能性のある行為はいろいろあるかもしれません。

ですので、具体的な問題については、消費者庁の見解が知りたいときは消費者庁の表示対策課へ、消費者庁と議論で戦いたいときは弁護士へ(笑)、ご相談ください。

ちなみに、消費者庁に移管前の公取委のQ&Aでは、以下のとおり、基本的に景品類に該当しないとの趣旨の回答がなされています。

「Q35 インターネット上のショッピングサイトにおいて,無料の会員登録をした人を対象に,抽選により物品を提供することを考えていますが,当該企画は懸賞に該当するのでしょうか。

A. ウェブサイト上で行われる懸賞については,懸賞サイトが商取引サイト上にあったり,商取引サイトを見なければ懸賞サイトを見ることができないようなウェブサイトの構造であったとしても,消費者は当該ウェブサイト内のウェブページや各事業者のウェブページ間を自由に移動できることから,懸賞に応募しようとする者が商品・サービスを購入することに直ちにつながるものではありません,したがって,懸賞応募の条件として,商取引のための無料の会員登録をすることを求めたとしても,商品・サービスの購入を条件としていなければ一般懸賞〔注:Q&Aでは、来店者を対象として行う懸賞のこと〕には該当しません。

ただし,商品・サービスを購入しなければ応募できない場合や,商品・サービスを購入することにより,クイズの解答やヒントが分かるなど懸賞企画に応募することが可能又は容易になる場合には,取引に付随すると認められることから,一般懸賞に該当し,景品規制の対象となります。」

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