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2010年9月 3日 (金)

インターネットと店舗の両方で受け付ける懸賞

小売業者が、インターネットで懸賞の申込ができる場合に、同じ懸賞の申込を店舗に懸賞申込用紙を置くなどして店舗でも行えるようにした場合、景表法の適用はあるでしょうか。

景表法が適用されると景品の額がかなり制限されるので問題となります。

景表法が適用されるためには、提供される物品が「景品類」(景表法2条3項)に該当するのか、とりわけ、「取引・・・に付随して」(取引付随性)に該当するのか否かが、分かれ目になります。

さて、インターネットを通じて行う懸賞については、公取委の平成13年4月26日付通知により、以下のようになっています。

「インターネット上のホームページは,誰に対しても開かれているというその特徴から,いわゆるオープン懸賞・・・の告知及び当該懸賞への応募の受付の手段として利用可能なものであり,既に広く利用されてきている。

また,消費者はホームページ内のサイト間を自由に移動することができることから,懸賞サイトが商取引サイト上にあったり,商取引サイトを見なければ懸賞サイトを見ることができないようなホームページの構造であったとしても,懸賞に応募しようとする者が商品やサービスを購入することに直ちにつながるものではない。

したがって,ホームページ上で実施される懸賞企画は,当該ホームページの構造が上記のようなものであったとしても,取引に付随する経済上の利益の提供に該当せず,景品表示法に基づく規制の対象とはならない(いわゆるオープン懸賞として取り扱われる。)・・・。」

つまり、インターネットで申し込む懸賞は、取引付随性が無いので、懸賞の賞品は「景品類」に当たらない、なので景表法は適用されない、ということです。

問題は、インターネットでも申し込めるし、店舗でも申し込める(申込書を置いたりして)、という場合です。

似たパターンとして、インターネットでも告知するし、懸賞の告知を商品のパッケージにも印刷する、というのもあります。

取引付随性の意味については、昭和52年4月1日の公取委事務局長通達の「景品類等の指定の告示の運用基準について」というのがあり、そこでは、

「小売業者又はサービス業者が、自己の店舗への入店者に対し経済上の利益を提供する場合」

は、取引付随性ありとされています。

(なお、「小売業者又はサービス業者が」というのが1つの大きなポイントで、もしメーカーが景品類を提供する場合には、当該小売業者の資本の過半が当該メーカーであるとか、当該小売店の大半の商品が当該メーカーのものであるといった例外的な場合でない限り、応募用紙や応募箱が店舗に置かれているだけでは当該メーカーの商品を購入する意思に結び付く可能性が高まるとは考えられないので、取引付随性はない、と考えられています。片桐『景品表示法』p167

なので以下でも、小売業者またはサービス業者が店舗の入店者に経済上の利益を提供することが前提です。)

ですので、店舗に入店しないと賞品を受け取れない場合には、「景品類」に該当することになり、ひいては、店舗に入店しないと申し込めない場合にも、「景品類」に該当することになります。

さらに同運用基準4(2)では、

「取引に付随しない提供方法を併用していても同様である〔=取引付随性ありとなる〕。」

とされています。

ですので、この運用基準に従う限り、インターネットで申し込む懸賞は取引付随性なしとなるものの、取引付随性のある方法と併用する場合には、全体として、取引付随性ありとされることになります。

しかし、インターネットでの懸賞の場合にこれをそのまま適用すると、どうも厳しすぎるような気がします。

確かに、商品の包装に企画を告知するような場合(運用基準4(2)ア)だと、それだけでかなりのインパクトがありますので、インターネットでの申込(=取引付随性なし)と併用しても、取引付随性が全体として認められるのも、やむを得ない気がします。

しかし、例えば小売店が、1つの店舗に懸賞申込用紙を1枚こっそり置いておくだけで、インターネット申込分も含めて全体として取引付随性ありとするのは、なんだか納得がいきません。

例えば小売店が、店舗では企画を告知するだけ(申込は受け付けない)で、告知の内容は、「当社インターネットサイトから申し込んで下さい」というだけでも、取引付随性ありとなるのでしょうか。

懸賞を企画する企業としては、できるだけ多くの人に企画の存在を知って欲しいでしょうから、インターネットという媒体が企画を知らせるのに優れた媒体であるとしても、さらに、新聞でも告知したくなるでしょう。それに加えて店舗で告知するだけで、突如取引付随性が生じるというのもおかしな気がします。

運用基準では、「入店者」に経済上の利益を提供する場合には取引付随性ありとなっていますが、店頭で告知する場合も、例えば告知のポスターが店舗に入店して初めて目に触れる場合には「入店者」(の中で懸賞に当選した人)に賞品を提供することになりそうです。

これに対して、店の外にポスターを貼り出した場合には、店の前を通り過ぎただけの人も懸賞に応募することがあるはずで、店に賞品を取りに来なければならないとかいった事情でもない限り、「入店者」に経済上の利益を提供していることにはならないような気がします(「入店」したかどうかで区別するのは形式的すぎて、余り説得力のある議論ではないと思いますが)。

そもそも運用基準はたんなる通達であって法的拘束力は無いので、取引付随性の有無はもっぱら景表法の解釈によって判断されるべきです。

そう考えると、運用基準のように、取引付随性がある方法と無い方法を併用した場合には一律取引付随性ありと考えるのは、法律の解釈として少し厳しすぎるような気がします。

例えば、応募方法に主従の有意な区別があって、主たる応募方法に取引付随性が無い場合(インターネットサイトを通じての申込)には、従たる応募方法(店舗での応募受付)に取引付随性があっても、全体として取引付随性なしという解釈が取れないものでしょうか。

例えば、インターネットでの申込と1店舗の申込用紙での申込を併用する場合のように、圧倒的に取引付随性のない申込の方が多いと見込まれるような場合には、もう少し柔軟に考えられないものでしょうか。

インターネットの場合には各ページを自由に行き来できるから取引付随性なしとされることとのバランスから考えても、店舗に申込用紙を置いただけで全体として取引付随性ありとなるのは、バランスが悪いように感じます。

景表法の管轄が公取委から消費者庁に移ったことですし、消費者庁のみなさんには、ぜひ運用基準の見直しを検討して頂きたいと思います。

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