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2010年7月16日 (金)

商社取引と下請法

公取委の下請法Q&AのQ2に、

「Q2 当社と外注取引先との取引について,商社が関与することとなった場合,下請事業者に該当するのは商社ですか,それとも外注取引先ですか。」

という質問があります。

公取委の回答は、

「① 商社が下請法上の親事業者に該当しない場合[。] 

商社が下請法の資本金区分を満たす発注者外注取引先の間に入って取引を行うが,

製造委託等の内容(製品仕様,下請事業者の選定,下請代金の額の決定等)に全く関与せず

事務手続の代行(注文書の取次ぎ,下請代金の請求,支払等)を行っているにすぎないような場合,

その商社は下請法上の親事業者とはなら

発注者が親事業者,外注取引先が下請事業者となります。

したがって,親事業者は商社と外注取引先との間の取引内容を確認し,下請法上の問題が生じないように商社を指導する必要があります。」

「② 商社が下請法上の親事業者又は下請事業者に該当する場合[。]

商社が製造委託等の内容に関与している場合には,

発注者が商社に対して製造委託等をしていることとなり,

発注者商社の間で下請法の資本金区分を満たす場合には,商社が下請事業者となります。

また,商社外注取引先の間で下請法の資本金区分を満たす場合には,

当該取引において商社が事業者となり,外注取引先が下請事業者となります。」

というものです。

この回答内容はちょっと分かりにくいのですが、要するに言いたいことは、

(1)商社が製造委託等の内容に関与しない(≒単なる事務代行)ときは、発注者-外注先の関係で下請法の適用が問題になる(資本金額を見るのは、発注者と外注先)。

(2)商社が製造委託等の内容に関与するときは、発注者-商社、商社-外注先、の両方の関係で下請法の適用が問題になる(資本金額は、発注者-商社、商社-外注先、の両方をみる)。

ということでしょう。

さて、以上は下請法の解釈として妥当でしょうか。

まず、(1)の場合(商社が委託の内容に関与しない場合)についてみてみましょう。

(1)の理屈は、要するに、商社が委託の内容に関与しない場合はたんなる事務代行なので、発注者と外注先との間に直接製造委託等がなされたとみなす、ということだと思います。

取引の実質を正面から捉えたものとして、結論としては妥当でしょう。

文言解釈としては、「親事業者」の定義が、

「・・・〔下請事業者〕に対し製造委託等・・・をするもの」(下請法2条7項1号)

となっていることから、親事業者と下請事業者との間に直接の委託関係(契約関係)がなければならないのではないか、という異論もありえますが、形式的には発注者と外注先との間に契約がなくても、実質的に見て、発注者から外注先に委託がなされたとみても、それほど大きく文言を外れた解釈とはいえないと思います。

実務上注意すべき点としては、

①間に商社が介在しても、外注業者との間に直接、親事業者-下請事業者の関係が生じることがある、

②なので、商社を介在させるときも、外注業者の資本金額は確認しておく必要がある、

③(当たり前ですが)書面交付等の下請法上の義務は、商社ではなく発注者が負う、

というあたりでしょうか。

次に、(2)の場合(商社が内容に関与する場合)をみてみましょう。

(2)の理屈を端的に言えば、商社が委託の内容に関与する場合は、商社も下請法との関係で当事者性がある(親事業者、または下請事業者になりうる)ものとして扱う、ということだと思います。

こちらの方は、まさに条文が文言どおり適用される場合ですし、結論も妥当なので、問題ないでしょう。

敢えて理屈を言えば、商社が「関与」するか否かで、外注業者との関係で親事業者になるか否かが決まるというのは納得できるのですが(「関与」すれば外注業者に「委託」をした、と解釈できるので)、商社が「関与」するか否かで、発注者との関係で下請事業者になるか否かが決まるというのは、やや腑に落ちないものがあります。

なぜなら、下請事業者は、委託を「受けるもの」(下請法2条8項1号など)であれば足りるので、委託の内容に「関与」しなくても、発注者から委託を「受け」たといえれば、下請事業者になりうるように思われるからです(「受け」たかどうかは、委託内容に「関与」したかどうかとは別問題でしょう)。

なので、商社が発注者との関係では下請事業者に該当するけれども、外注先との関係では親事業者に該当しない、ということも、理屈の上では、あっておかしくないと思います。

(ただ、Q&Aの「関与」というのはとても広いので、実際には、委託の内容に関与はしたけれど外注先に委託はしていない、というような事態はほとんど生じないのでしょう。後述。)

やや注意すべきは、商社が何をすれば「関与」したことになるのか、です。

上記公取委Q&Aでは、製造委託等の内容として、

「(製品仕様,下請事業者の選定,下請代金の額の決定等)」

が例示されています。

このように、「関与」の範囲はとても広いです。

商社が製品仕様の決定をするということはあまり無いのかも知れませんが、ここでの「決定」には、商社が単独で決める場合だけでなく、発注者と共同で(話し合いながら)決める場合も含まれるのでしょう。

商社が下請事業者の選定をすることは、それなりにあるかも知れませんね。

商社が下請代金の額の決定をすることも、それなりにあるでしょう(発注者から受注した金額に口銭を上乗せするという決め方の場合も「下請代金の額の決定」をしたことになると思われます)。

このように考えると、商社が親事業者になる可能性はそれなりに高いといえそうです。

悩ましいのは、「関与」の限界がはっきりしないために、外注先との関係で、発注者が親事業者になるのか、商社が親事業者になるのか、はっきりしない、という場合が生じそうなことです。

商社が親事業者になるときは、(資本金要件を満たす限り)例えば発注者が商社に3条書面を交付し、商社が外注先に3条書面を交付する、ということになります。

商社が親事業者でないときは、発注者が外注先に3条書面を交付することになります。

なので、はっきりしないときは、商社は、念のために外注先に3条書面を交付すればいいのですが、発注者は、念のため、商社と外注先の両方に3条書面を交付する、ということになります。

ただ、商社と外注先の両方に3条書面を交付するというのはいかにも変な感じがしますし、商社というのが下請事業者として保護すべきかはかなり疑問なので(外注先が保護されれば充分なので、商社が外注先との関係で親事業者に該当するといえれば充分)、商社が委託内容に「関与」してるかどうかはっきりしないときでも、発注者と商社の両方が外注先に3条書面を交付しておけば、まずまず問題はないと思います(商社に3条書面を交付しなくても、あまり大きな問題はない)。

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