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2010年7月15日 (木)

「競争減殺」と「競争回避」と「競争停止」と「競争排除」

独禁法に限らず法律の世界には、言葉の印象からその内容がすぐにイメージしにくく、しかも一見すると似ていて区別がつきにくい用語が少なくないのですが、今回は、標題の4つの用語についてまとめておきます。

1.「競争減殺」

競争を減らすこと(最も広い意味で)。

「競争減殺」=競争変数が左右されうる状態(白石教授の整理)。

「競争減殺」が生じるパターンとしては、

ライバルが手を組む(あるいはライバルに手を組ませる)方法と、

ライバルを市場から追い出す(あるいは入ってこないようにする)方法

がある。

手を組む(あるいは組ませる)のが、「競争回避」。

追い出すのが、「競争(者)排除」。

「競争減殺」は、不公正な取引方法の中で、不正手段型(欺まん的顧客誘因など)でも優越的地位濫用でもないものを議論する際に、競争の実質的制限よりも程度の低い反競争性を意味して用いられることが多い。

裏から言えば、競争減殺がなくても、不正手段か優越的地位濫用があれば、公正競争阻害性ありとなる、というのがポイント。

2.「競争回避」

ライバル間で互いに競争を避けること。あるいは、ライバル同士に競争を避けさせること。

値段も品質もほどほどに、みんなで共存共栄を図ること。

入札談合などは、競争回避の典型(ヨコの関係)。

本来価格などで競争すべき複数の販売店を、メーカーが拘束して、同じ値段で販売させるようにすれば、再販売価格維持で、「競争回避」となる(ヨコの関係)。

このように、「競争回避」には、ヨコの関係も、タテの関係もある。

2’.「競争停止」(collusion)

「競争停止」=「競争回避」

3.「競争(者)排除」(exclusion)

「競争者排除」=他者排除

ライバルを市場から追い出すこと。

4.まとめ

まとめると、

「競争減殺」=「競争回避」+「競争(者)排除」

ちなみに、私は、意見書を書いたりとかの仕事でこれらの用語を使うことはほとんどありません。

専門家同士で議論するときには便利かもしれませんが、意見書を読むのは独禁法に詳しくない人であることが多く、内輪でしか通じない言葉を定義もしないで使うのは非常に不親切だと思うからです。

他の弁護士が書いた意見書にこういう言葉が出てくるのを見ると、「どっかの基本書からパクッてきたのでは?」と不安になります。

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