« 【閑話休題】Kindle DX買いました。 | トップページ | 投資組合の国内売上高 »

2010年6月28日 (月)

再販の合意は必ず垂直的合意か

再販売価格維持の合意は、例えばメーカーと販売店の間のような、相互に取引関係にある者の間の合意、すなわち垂直的合意である、と一般的には整理されています。

しかし、そのように割り切って良いのか、個人的にはちょっと疑問に感じています。

(問題意識としては、水平的合意か垂直的合意かという硬直的な二分法は余り理論的根拠がないのではないか、ということです。再販売価格維持を例に挙げますが、他の拘束条件付き取引にも以下の議論は当てはまると思います。)

つまりこういうことです。

メーカーが再販売価格を持ちかけた場合に、販売店がこれに応じるのは、他の販売店も同じ価格で売るという期待があるからこそではないでしょうか。

つまり、自分のところだけ再販売価格維持を守って他の販売店が守らずに安売りしたら、お客さんは安売りをした販売店に流れてしまい、再販売価格維持を守った販売店は売上を落とすことになるでしょう。

それにもかかわらず販売店が再販売価格維持を守るのは、メーカーが他の販売店にも再販売価格維持をしてくれると期待しているからとしか考えられません。

さて、水平的合意の代表格であるカルテルの成立が認められるために必要な競争者間の「意思の連絡」は、黙示の意思の連絡でもよい、とされています。

東芝ケミカルⅡ東京高裁判決が、

「『意思の連絡』とは、

(ⅰ)複数事業者間で相互に同内容又は同種の対価の引上げを実施することを認識ないし予測し、これと歩調をそろえる意思があることを意味し、

(ⅱ)一方の対価引上げを他方が単に認識、認容するのみでは足りないが、

(ⅲ)事業者間相互で拘束し合うことを明示して合意することまでは必要でなく、

(ⅳ)相互に他の事業者の対価の引上げ行為を認識して、暗黙のうちに認容することで足りる」

としているものです。

ちょっと細かくみると、(ⅰ)は、相互の認識・予測を要するといっています。

(ⅱ)は、(ⅰ)を裏から捉えて、一方(A社)の対価引き上げを、他方(B社)が一方的に認識しているだけでは足りない、といっています。あくまで、A社の引き上げをB社が認識し、B社の引き上げをA社も認識し、A社が引き上げることをB社が認識していることをさらにA社も認識し・・・ということが必要である、といっていると理解できます。

(ⅲ)は、意思の連絡は明示である必要はない、といっています。

(ⅳ)は、(ⅲ)の裏返しで、暗黙のうちに認容することで足りる、といっています。

さらに、意思の連絡は間接になされたものでもいいとされています。官製談合で「天の声」(発注官庁の指示)にみんなが従う、というような場合です。あるいは、業界のフィクサーみたいなコンサルタントが、各業者の意向を取りまとめた上、受注業者を決め、みんなそれに従っているような場合です。

この場合、入札業者間には、直接の意思の連絡はありません。発注官庁やフィクサーが、扇の要(かなめ)になっているイメージです。

さて、再販売価格維持の場合、扇の要になっているのがメーカーだと捉えることができないでしょうか。

確かに、再販売価格維持の場合、実際には、販売店の数は多数のことが多く、相互に連帯感がないので、「意思の連絡」という言葉にはそぐわない気もします。

しかし、上記東芝ケミカルⅡ判決のいう、

「複数事業者間で相互に同内容又は同種の対価の引上げを実施することを認識ないし予測し、これと歩調をそろえる意思があることを」

という定義は、突き詰めれば、(ここでは販売店)相互に認識・予測をしていれば足りるといっているのであり、メーカーを扇の要にして販売店が相互に認識・予測をしている、という構図が成り立つ場合も、充分にあり得るように思います。

しかし、実際には、そのような構図が成り立つかどうかなど検討するまでもなく、再販売価格維持は垂直的合意と整理されているのが実情だと思います。

でも実際には、このような構図が成り立つ可能性も考えれば、タテかヨコかというのは議論の本質ではないというべきです。

むしろ議論の本質は、再販売価格維持の場合は同一ブランド内での合意なので競争制限効果も同一ブランド内にとどまるが、カルテルの場合はブランド間競争も阻害される、ということだと思います。

別の言い方をすれば、ブランド内競争かブランド間競争かが議論の本質であるのに、再販売価格維持の場合には、扇の要がメーカーであるためか、あるいは販売店相互に連帯感がないために、ヨコの意思の連絡というのがイメージしにくいことから、「黙示の意思の連絡」の成立がカルテルの場合よりも認められにくくなっているのではないか(業界のフィクサーが扇の要の場合と比べてダブルスタンダードではないか)、ということです。

このような議論をしなくとも再販のケースは処理できるのかもしれませんが、足下を固めておかないと、思わぬところで議論が噛み合わなくなってくるものなので、こういう議論もそれなりに大切だと考えています。

« 【閑話休題】Kindle DX買いました。 | トップページ | 投資組合の国内売上高 »

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 再販の合意は必ず垂直的合意か:

« 【閑話休題】Kindle DX買いました。 | トップページ | 投資組合の国内売上高 »

フォト
無料ブログはココログ