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2010年6月21日 (月)

シェアは数量基準か売上基準か

企業結合の審査において市場における各社のシェアは重要な情報であり、ハーフィンダールハーシュマン指数(HHI)算定にも必要ですが、ここでいうシェアは、販売個数のシェアによるべきでしょうか。それとも販売金額のシェアによるべきでしょうか。

日本の企業結合ガイドラインでは、

「HHIは,当該一定の取引分野における各事業者の市場シェアの2乗の総和によって算出される。市場シェアは,一定の取引分野における商品の販売数量(製造販売業の場合)に占める各事業者の商品の販売数量の百分比による。ただし,当該商品にかなりの価格差がみられ,かつ,価額で供給実績等を算定するという慣行が定着していると認められる場合など,数量によることが適当でない場合には,販売金額により市場シェアを算出する。」

と、個数を基準とするのが原則であるとされています。

しかし、あまりこれを額面どおりに捉える必要はないと思います。

まず、そもそもシェアが重要な意味を持つ理由は、シェアが企業がどれくらい市場での存在感(あるいは、市場支配力)があるのかを測る物差しになるからです。

ということは、高く売れる商品を抱える企業の方が、安くしか売れない商品を抱える企業よりも、相対的に大きな存在感が市場ではあるわけで、本質的には、売上を基準にするほうが理に適っているというべきです。

アメリカの水平合併ガイドライン案でも、

「In most contexts, the Agencies measure each firm’s market share based on its actual or projected revenues in the relevant market. Revenues in the relevant market tend to be the best measure of attractiveness to customers, since they reflect the real-world ability of firms to surmount all of the obstacles necessary to offer products on terms and conditions that are attractive to customers.」

と、原則として売上を基準にしています。

日本のガイドラインが個数を基準にしているのは、伝統的に日本ではシェアを個数で測ることが多かったためで、理論的に強い理由があるわけではないと思います。

公取委の実務でも、その商品や市場の特性などからして各社の力関係が反映されているシェアであることが説明できれば、個数基準であっても売上基準であっても、認められているのではないかと思います。

ですので、

「数量によることが適当でない場合」

に限って売上基準を使用できると読めるガイドラインの記述は、文字通り読むとちょっと厳しすぎて、実際には、

「数量によるよりも売上による方がより適当な場合には売上基準を使用できる」

というくらいに読んでおくべきでしょう。

「数量によることが適当でない場合」の例示として、

「当該商品にかなりの価格差がみられ,かつ,価額で供給実績等を算定するという慣行が定着していると認められる場合」

とあるのも、理屈がよくわかりません。

当該商品にかなりの価格差がある場合には、価格差を無視して個数でシェアを算定してはいけない、というのは理解できるのですが、どうして「かつ」でないといけないのか、「慣行」の有無が個数基準と売上基準の算定にどのように関係するのか、理由が不明であるといわざるを得ません。

もちろん、個数のほうがデータが手に入りやすいことが多いでしょうし、ガイドラインに原則として個数を基準にすると明記しているのですから、特に理由のない限り個数でシェアを算定しても文句は言われないとは思います。

ところで、企業結合ガイドラインの文言を細かくみると、原則として個数基準でシェアを算定するのは「製造販売業の場合」に限るかのようにも読めますが(上記引用部分の括弧内参照)、これもそこまで厳密に考えなくてよく、サービスの場合でも「個数」に当たるものを基準に算定してもよいと思われます。

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