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2010年5月 7日 (金)

仕切価格は当然にそれ以上の再販売価格維持か?

メーカーが販売店に商品を販売する場合、あたりまえですが、その価格を決めないといけません。

しかし、たとえば商品の価格を1個100円と定めた場合、それが当然に100円以上の小売価格を指示する再販売価格維持とみなされる、ということがありうるのでしょうか。

常識的に考えるとそのようなことはなさそうですし、実際その通りなのですが、どうしてそういえるのかは、少し考えておく必要があると思います。

再販売価格維持は、明確に一定の再販売価格を合意した場合だけでなく、守った場合の利益で誘導したり、違反した場合の不利益で誘導したりする場合にも成立します。再販売価格維持を守った小売店には、メーカーからリベートを支払うような場合です。

そのようなリベートは、当該リベートがなければ小売店の経営が立ち行かなくなってしまうほど大きなものである必要は無く、小売店が再販売価格を守ろうというインセンティブを抱くに足りる程度であれば十分であると考えられます(あまりにリベートの額が少ないと、販売店は再販売価格を守るよりも値引きをして販売を増やし、利益を増やそうとするでしょう)。

そこで仕切価格(メーカーから小売店への販売価格)を100円と定めた場合、100円以下で売ると小売店は赤字になるので、必然的に、再販売価格を100円以上に誘導していることになるのではないか、というのがここでの問題意識です。

はっきりとこの点について述べた文献は見たことが無いのですが(あまりに当然のことなので裁判になることもなければ学者の先生の問題意識に上ることもないのでしょう)、やや関連するといえそうな記述として、ECの技術移転ガイドラインの再販売価格維持についての記述の中に、

「しかしながら、一定の最低額のロイヤリティを支払わなければならない義務をライセンシーに課すことは、それ自体としては、価格拘束には該当しない。」

というのがあります。

例えば、特許権のロイヤリティを商品1個につき100円とした場合、当然、ライセンシーは1個100円以上で売らないと赤字になるわけですが、これは価格拘束には該当しない、ということでしょう。

やはり、メーカーが販売店に1個100円で売るという行為自体をもって、小売価格(再販売価格)を100円以上にせよとの拘束である、というのは無理でしょう。

逆に言うと、「原価割れになるような小売価格では販売しないで下さいね」と念押ししたりすると、再販売価格維持になり得ます。

しかし、原価割れ販売は不当廉売として違法とされているので、このような念押し行為を再販売価格維持として違法とすることは、不当廉売との関係で緊張関係にあるともいえそうです。

不当廉売を防ぐために再販売価格維持をしていいのか、もっと一般的にいえば、違法行為(=不当廉売)を防ぐためにした独禁法違反の行為(=再販売価格維持)は違法性が阻却されるのか、という問題だといえます。

難しいところですが、不当廉売を防ぐために再販売価格維持をすることは、やはりできないと解釈すべきなのでしょう。

いろいろ理屈は考えられますが、独禁法違反を排除するのは公取委の排除措置命令や訴訟によるべきであって、独禁法違反に独禁法違反で対抗するのは自力救済のようなものでよろしくない、あるいは、不当廉売は他者を排除する程度にいたって初めて違法なので再販売価格維持によって原価割れ販売を一切封じるのは行き過ぎである、といったところでしょうか。

また上記の問題の応用バージョンとして、小売店がインターネットで販売する商品については店舗で販売する商品よりもメーカーが高い仕切り価格(メーカーから小売店への販売価格)をつける、というのもあります。

今回もだんだん話がそれてきました。またゆっくり考えてみたいと思います。

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