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2010年5月29日 (土)

株主間契約と企業結合集団の範囲

独占禁止法上の企業結合の届出の要否を判定する場合には、企業結合集団の範囲、つまり親子会社の範囲を画定する必要がありますが、ある会社に大株主が2社あって、両株主の間に株主間契約がある場合、どちらの株主が親会社になるのか、あるいはいずれの株主も親会社にならないのか、迷うことがありますので、まとめておきます。

ここで、ある会社をS社、大株主2社を、P1社、P2社、とします。

そして、P1社とP2社はそれぞれS社の株式の40%を保有しているとします。残りの20%は、多数の一般の株主が保有しているとします(S社は上場されていると考えてください)。

もともとオーナー系の会社(ここではS社)がファンド(P2社)の出資を受け入れた場合に、オーナー側の大株主(P1社)とファンド側の大株主が並存する、というのが、このような設例の株主構成が生じる典型的なパターンです。

このような場合、P1社とP2社との間には株主間契約が存在することが多いです。ここでも、株主間契約があるとしましょう。

さて、S社はP1社またはP2社の子会社となるでしょうか。

子会社の定義は独禁法10条6項と、それを受けた届出規則2条の9第1項にあります。

届出規則2条の9第1項をみると、結局、P1社またはP2社がS社の「財務及び事業の方針の決定を支配している」か否かが分かれ目で、支配の有無は、届出規則2条の9第3項の要件に従って判定されます。

上記設例の場合、P1もP2も過半数の株式は保有していないので、届出規則2条の9第3項2号のに該当するか否かが、子会社か否かの決め手になります。

そこで届出規則2条の9第3項2号をみると、同号のイ、ロ、ハ、ニ、ホの、いずれかを満たせば、S社は子会社になる、ということがわかります。

では順番にみていきましょう。まずはイから。

 他の会社等〔=子会社〕の議決権の総数に対する自己所有等議決権数(に掲げる議決権の数の合計数をいう。次号において同じ。)の割合が百分の五十を超えていること。

(1) 自己〔=親会社〕の計算において所有している議決権

(2) 自己〔=親会社〕と出資、人事、資金、技術、取引等において緊密な関係があることにより自己〔=親会社〕の意思と同一の内容の議決権を行使すると認められる者が所有している議決権

(3) 自己〔=親会社〕の意思と同一の内容の議決権を行使することに同意している者が所有している議決権」

さて、P1社がS社の親会社に該当するか、みてみましょう(P2社も、理屈は同じです)。

(1)(自己計算議決権)は、40%です。

(2)(密接関係者)は、0%でいいでしょう。

問題は、(3)です。ここのでの、「自己の意思と同一の内容の議決権を行使することに同意している」とは、どういうことでしょうか。

P1社とP2社との間には、株主間契約があります。

そして、株主間契約には、何らかの形で議決権の行使に関する定めがあることが多いです。

例えば、オーナー側から2人、ファンド側から2人、取締役候補者を出して、いずれもその選任に株主総会で賛成する、というものです。

しかし、このような合意では、P2が、「自己〔=P1〕の意思と同一の内容の議決権を行使することに同意している」とはいえないでしょう。

というのは、このような場合まで「自己の意思と同一の内容の議決権を行使することに同意している」に該当することになると、P1はP2の意思に同意しており、P2はP1の意思に同意していることになってしまい、P1もP2もS社の親会社となってしまうからです。

また、公取委ホームページの「株式取得に関する計画届出書記載要領」では、

「会社が他の会社等の「財務及び事業の方針を決定している」ことに該当するか否かの判定に当たっては,複数の会社(親子関係にある会社を除きます。)が,それぞれ当該他の会社等の「財務及び事業の方針の決定を支配している」ことにはならないことに留意してください。」

と、直接の親会社が複数存在することはないと明言しています。

つまり、公取委が、上記のような株主間契約を「自己と同一の内容の議決権を行使すること」の同意と考えていないことは明らかです(そう考えないと、P1もP2も親会社になってしまうので)。

要するに、「自己の意思と同一の内容の議決権を行使することに同意している」とは、文字通り、P2がP1のいうとおりに議決権行使することになっている場合を指すと考えるべきでしょう。

そこで、P2がP1の議決権行使に常に従う、という株主間契約なら、S社はP1の子会社ということになるでしょうが、普通、ファンドがそのような株主間契約を結ぶこと自体、まれでしょう。

逆に、ファンド(P2)が、一定の重要な事由(例えば合併)に拒否権を持つということは一般的ですが、このような拒否権だけでは、P2がS社の親会社であるとはいえないでしょう。

なお、上記記載要領では、

「会社〔=P1、P2〕が他の会社〔=S社〕に対して共同で出資を行っている場合にも,当該会社〔=P1、P2〕が当該他の会社〔=S社〕の「財務及び事業の方針の決定を支配している」か否かの判定を行うことになりますが,当該他の会社〔=S社〕が当該会社〔=P1、P2〕によって共同支配されている実態にある場合には,当該他の会社〔=S社〕は共同で出資をしている当該会社〔=P1、P2〕のうち特定の会社の子会社には該当せず,関連会社(会社計算規則(平成18 年法務省令第13 号)第2条第3項第19 号に規定する関連会社をいいます。)として取り扱われます。」

としています。

独禁法には「関連会社」という用語は出てこないので、ここで「関連会社」として取り扱われるといっているのは、親子会社とは扱われないという点に意味があります。

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