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2010年5月21日 (金)

景表法の域外適用

インターネット時代で、外国事業者に景表法が適用されるか否かが現実的な問題になってきました。いわゆる域外適用の問題です。

問題は、景品規制と表示規制で分けて考えるのが便宜でしょう。

まず表示規制について。

ここでの問題は、「表示」(景表法2条4項)を外国で行った外国事業者に、日本の景表法が適用されるか、という問題です。外国企業でも日本で「表示」を行えば景表法が適用されるのは当然で、それは域外適用の問題ではありません。

「表示」の定義は、「不当景品類及び不当表示防止法第二条の規定により景品類及び表示を指定する件」(定義告示。http://www.caa.go.jp/representation/index3.html)で確認していただきたいのですが、大雑把に言えば、事業者が顧客を誘引するための以下のような表示を指します。

①商品、容器、包装による表示

②チラシ、口頭による表示(電話を含む)

③ポスター、看板、陳列物、実演による広告

④新聞、雑誌、放送等による広告

⑤インターネットによる表示

現実に域外適用が問題になるのは、⑤でしょう。国際電話を使って広告をするなら②も問題になるかも知れません。

一般論として、表示規制について域外適用を否定する理由はないと思われます。景表法は日本の需要者を保護するのが目的であり、日本の需要者が害されている以上、保護しない理由はないからです。法律の文言上も、域外適用は特に否定されていません。

ですので、インターネットによる表示の場合に、サーバーを日本に置こうが海外に置こうが、問題ではありません。日本の需要者に向けられた表示である以上、景表法が適用されるべきです。

しかし、インターネットでは個人が外国のサイトから商品を購入することも容易であり、あらゆるサイトの表示に対して日本の景表法が適用されるというのも、やや行き過ぎの感があります。

ですので、サイトの言語が日本語であるか否かで分けるのが、まずは穏当ではないかと思います。

つまり、海外の会社の海外のサーバーに置いたサイトであっても、日本語が用いられている以上は、日本人に向けた表示であるとして、日本の景表法を適用するのです。

この点、サイト運営者には購入者が日本にいることが商品発送先を見れば分かるのだから、英語のサイトであっても、日本の景表法を適用すべきという考えもあるかもしれません。

しかし、誤認を招く表示をすればその時点で景表法違反なので、表示を見た人が商品を買ったかどうかは景表法違反の成否には関係がないはずです。したがって、買ったのが日本人であることを根拠に遡って表示が日本向けであるというのは、理屈としてちょっと無理があるような気がします。

ただ、英語のサイトであっても、様々な事情から日本市場向けの商品であることが明らかな場合(例えば、日本の薬事法に適合することを売りにしているような場合)には、日本の景表法が適用されても良いと思います。その意味で、サイトの言語は一つの目安です。

さて、景品規制についてはどうでしょうか。

「景品類」(景表法2条3項)の定義も、詳しくは定義告示を見て頂くとして、大まかにいうと、顧客を誘引するために商品に付随して提供する物品等で、以下に該当するものです。

①物品、土地、建物など

②金銭、金券、有価証券

③饗応(接待のことですね)

④役務

景品類の提供の場合、どこまでが問題なく域内適用の問題で、どこからが域外適用の問題なのかを、ちょっと整理する必要がありそうです。

景表法が禁止しているのは、一定の景品類の「提供」(一般消費者に対する景品類の提供に関する事項の制限1項、懸賞による景品類の提供に関する事項の制限2項など)です。

「提供」というのは、消費者に景品類が実際に手渡ったことまでは必要ではなく、景品類をつかって消費者をおびき寄せる行為があれば「提供」といえるでしょう。

そうすると、景品が消費者に手渡った場所で域内か域外かを分けるのではなく、消費者をおびき寄せる行為があった場所がどこかによって域内適用の問題であるのか域外適用の問題であるのかを分けるのが、論理的には合理的なような気もします。

しかしやはり、景品類が外国から日本に送られてきたような場合に日本の景表法が適用されないというのもおかしな話なので、景品類が日本で交付された場合には域内適用の問題と考えるべきでしょう(よって日本法が当然に適用される)。

そして、日本の需要者に向けられた景品類の提供行為、例えば、日本語のウェブサイトを通じて景品類の提供を申し出るようなキャンペーンをやった場合には、景表法が適用されると考えるべきでしょう。理由は表示規制の場合と同様、景表法の目的は日本の消費者を保護することにあるからです。

以上は、漠然と、消費者が日本で商品・役務を買う場合を念頭においていましたが、商品・役務を外国に取りに来させた場合(景品類の提供や表示は日本語のウェブサイトで行ったと考えて下さい)には、景表法は適用されるでしょうか。

景表法の域外適用の範囲は、景品・表示の場所で決まるのか、商品・役務の提供の場所できまるのか、という問題に一般化できるかもしれません。

私は、商品・役務が外国で提供された場合には、景表法は適用されないのではないか、と考えます。

日本の景表法は、日本国内の需要者を保護するものであり、自ら外国に出かけていって商品を受け取る者まで保護する必要はないように思われるからです。

表示の規制については、誤解を招く表示はいけないというのが割と世界中のコンセンサスのように思われるので、日本法の適用範囲を広げてもそれ程問題ないのかも知れませんが、景品類の規制については各国まちまちで(ドイツでは景品は一切禁止みたいです)、日本の法律をあまり広く海外に適用するのは特に気が引けます。

しかし、この点につては異論もあり得るところだとは思います。

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