IPBA大会のプレゼンを終えて
本日無事、IPBAでのプレゼンが終わりました。
日本の独禁法についていろいろな国の人に知ってもらう、よい機会になったと思います。
他のスピーカーの話も興味深く、後でじっくり調べてみようと思いました。
いくつか以下に興味深かった点を記します。
中国では、単独行為がSAIC(非価格制限を担当)とNDRC(価格制限を担当)の2つに管轄が跨ってしまい得る点が問題(単独行為は価格と非価格両面の効果を持つことが多いので)。
アメリカではシャーマン法でカバーできない行為をFTC法5条でカバーしようという動きがある。また、反トラスト法に消費者保護の基準を適用する傾向がある(N-Data事件、インテル事件)。
シンガポールでは、反競争性の判断にあたり、消費者余剰よりも総余剰を重視する傾向がある。
このシンガポールの弁護士にはあとで聞きましたが、シンガポールの当局は経済学者が多くてシカゴ学派的発想の人が多いのと、シンガポールのような小さな経済で消費者余剰基準をとると企業が海外で戦えないから、という背景があるそうです。
日本でも総余剰基準を取ればキリンとサントリーのような合併が認められやすくなるでしょうし、経済学的な理屈では総余剰基準が正しく個人的には総余剰基準を採用すべきと考えていますが(消費者余剰基準だと、買い手独占(消費者余剰は増えることが多い)が違法であることの説明が難しいでしょう)、理屈をそのまま政策に採用している国があるというのは驚きでした。
ところで大会2日目に本大会のハイライト(?)ともいえるアル・ゴア氏のスピーチを聞いてきました。
生ゴアの迫力はすごいです。カリスマ性があります。これを聞くために来たとしても値打ちがあったかも。
最近問題になった温暖化の論文データ改ざんについても、「世界中のアカデミーが温暖化について意見は一致しており、温暖化の論文は何千何万ページもある中で、批判家は、たった2つのミステークをあげつらう」と、一刀両断でした。
こういう国際カンファレンスで独禁法の話を聞くと常々思うのですが、独禁法は各国当局が本当の意味で協力するインセンティブがある、まれな法律だとしみじみ思います。
例えば国際カルテルは世界中で協力する必要があるし、合併規制も各国で考え方がまちまちでは困ってしまいます。
でも刑法が各国で違っても「そんなもんだ」で終わりでしょう。
これからも日本の独禁法が世界標準に追いつくというレベルではなく、世界に貢献できるよう(ましてガラパゴス化などすることがないように)、微力ながら頑張っていこうと思います。
公取委は国際協力に慣れているので、案外、弁護士の取調べ立会い権が認められるのは、独禁法が日本法の数ある分野の中で最初だったりするかもしれません(というのは淡い期待でしょうか)。
« IPBA 2010 in Singapore | トップページ | 個人版リニエンシーの必要性 »

コメント