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2010年4月 6日 (火)

インターネット販売に関する欧州ガイドラインの改正

2010年5月31日に現行の欧州委員会の垂直的契約一括適用免除規則が失効するのに備えて、改正一括免除規則の案と、改正ガイドラインの案が、昨年7月28日に公表されています。

(欧州委員会のホームページ http://ec.europa.eu/competition/index_en.html のプレスリリースのページで見られます。)

一括免除規則案のほうでは、例えばこういう条項を代理店契約に入れるとEC条約101条(以前の81条から番号が変わりました)に違反する、として、再販売価格維持や、積極的販売(active sales)の制限(後で説明します)などの条項が挙げられており(規則4条・ハードコア制限)、このようなハードコア制限が無い場合には、メーカーと販売店、いずれのシェアも30%を超えない限り、垂直的制限は競争法違反ではない、とされています(規則3条)。

ガイドライン案では、規則の内容を具体的に説明しています。

今回のガイドライン案での改正の1つに、インターネットを通じての販売行為に関する規定があります。

一括免除規則では、メーカーが地域制限や顧客制限を販売店に課す場合、積極的販売行為を禁止するのは構わないけれど、消極的販売まで禁止するのは行き過ぎなので、競争法違反になる、ということになっています。

積極的販売というのは、他の販売店のテリトリーに店を出したりチラシを配ったり、というように、販売店の側から積極的に売り込みに行くことです。

消極的販売というのは、他の販売店のテリトリーに住んでいるお客さんから引き合いがあった場合には売る(こちらからの売り込みはしない)、ということです。

積極的販売を無制限に認めるとテリトリー制が崩壊してしまうので禁止してもOKだけれど、消極的販売まで制限する(例えば、商品を売るときにお客さんの住所を確認して、テリトリー外のお客だったら断らせる)のは行き過ぎだろう、ということで消極的販売の禁止は違法とされます。

そこでインターネットを通じた販売活動の問題です。

ガイドライン案は、インターネット販売に関係する消極的販売の制限の例(つまり、これらの制限を課すとハードコア制限で違法)を挙げています。

①テリトリー外のお客さんから、販売店のホームページが見られないようにすること。

②テリトリー外のお客さんからホームページにアクセスがあったら、そのお客さんのテリトリーを担当する別の販売店のホームページに飛ばすようにすること。

③クレジットカードの住所からお客さんの住所がテリトリー外だと分かった場合に、注文を断らせること。

④インターネットを通じての販売を、全販売の一定割合に制限すること。

⑤インターネットで販売する場合には、そうでない場合よりも高い値段で卸すこと。

②は、例えばフランスのお客さんがドイツの販売店のサイトにアクセスしようとしたら、自動的にフランスの販売店のサイトに行くようにする、というものです。

確かに外国の会社のホームページを見ようとして「.com」のアドレスを入れたら、同じ会社の「.co.jp」のアドレスに飛ばされて「あれっ?」と思うことがありますが、アクセスするサーバーの場所によって振り分けられているのですね。

ただ、この②の制限は、ドイツとフランスの販売店が別法人である場合に問題になるのであって、例えば日本企業が欧州で代理店を1社だけ任命していて、その代理店が各国語のホームページを運用しているような場合に、ドイツの顧客からフランス語のページにアクセスがあったときにはドイツ語のページに飛ばす、というのはOKだと思われます。

直接契約している代理店が欧州で1社で、その100%子会社がドイツとフランスにある、という場合でも同様で、ドイツからのアクセスをフランス子会社のページに飛ばすのは問題ないと思われます。

⑤については、インターネットで販売する場合には販売店もコストが安上がりなんだから、メーカーの立場からすればその分高く仕入れて欲しい気もしますが、インターネット販売分だけ高く卸す実際の動機は、「インターネットでたくさん売ると値崩れするから、できるだけインターネットでは売らないでね」ということが多いでしょうから、一律違法というのも、やむを得ない気がします。

欧州で代理店を使って商売をしている日本企業は、新規則と新ガイドラインが施行される6月1日までに、代理店契約の内容をチェックしておく必要があります。

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