「不当な取引制限」の定義の英訳
独禁法2条6項では、不当な取引制限を以下のとおり定義しています。
「この法律において「不当な取引制限」とは、事業者が、契約、協定その他何らの名義をもつてするかを問わず、他の事業者と共同して対価を決定し、維持し、若しくは引き上げ、又は数量、技術、製品、設備若しくは取引の相手方を制限する等相互にその事業活動を拘束し、又は遂行することにより、公共の利益に反して、一定の取引分野における競争を実質的に制限することをいう。」
これに対して、公取委のホームページの2条6項の英訳は以下のとおりです。
「The term “unreasonable restraint of trade” as used in this Act means such business activities, by which any entrepreneur, by contract, agreement or any other means irrespective of its name, in concert with other entrepreneurs, mutually restrict or conduct their business activities in such a manner as to fix, maintain or increase prices, or to limit production, technology, products, facilities or counterparties, thereby causing, contrary to the public interest, a substantial restraint of competition in any particular field of trade.」
http://www.jftc.go.jp/e-page/legislation/index.html
これを見ると分かるように、英訳では、日本語の「取引の相手方を制限する等」の「等」に当たる部分が落ちてしまっています。
これは、「不当な取引制限」という、独禁法適用の範囲を画する根本概念の定義だけに、かなり問題だと思います。
細かいことを言うようですが、現在の英訳では、具体的に条文で列挙されているような、
「対価を決定し、維持し、若しくは引き上げ、又は数量、技術、製品、設備若しくは取引の相手方を制限する」
というものを除いて、不当な取引制限には該当しないという誤解を招きかねません。
例えば、「販売地域の制限はどうなんだ」、「インターネット販売を止めることを合意することはどうなんだ」、というような、無用な議論を招きかねません。
少なくとも、公取委の翻訳だからといって、このまま英文メモで使うのは躊躇われます。
そこで、例えば2条6項の英訳は、
「The term “unreasonable restraint of trade” as used in this Act means such
business activities, by which any entrepreneur, by contract, agreement or any other
means irrespective of its name, in concert with other entrepreneurs, mutually
restrict or conduct their business activities in such a manner as, including without limitation, to fix, maintain or increase prices, or to limit production, technology, products, facilities or counterparties, thereby causing, contrary to the public interest, a ubstantial
restraint of competition in any particular field of trade」
とでもすることを提案したいと思います。
« 親子会社と下請法 | トップページ | IPBA 2010 in Singapore »
コメント