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2010年4月26日 (月)

詐欺的商法と景表法

当然無料のサービスを有料で提供することは景表法上問題ないでしょうか。

米国に渡航する際には、保安上の理由から、現在、米国大使館のウェブサイトで「ESTA」というものへの登録が必要なのですが、グーグルなどで「ESTA」で検索すると、このESTAの申請代行サイトというのがヒットします。

しかし、ESTAの申請はもちろん無料ですし、米国大使館のウェブサイトでものの10分ほどで簡単にできます。

米国大使館のウェブサイトには、

ESTA申請は無料です。 米国政府と無関係な第三者が独自のウェブサイトを設け、旅行者に代わりESTA申請のための料金を請求していることがありますのでご注意下さい」

という注意書きまであります。

つまり、当然無料である登録サービスを有料で請け負う業者がいるということですが、これを景表法で取り締まることは可能でしょうか。

景表法4条(不当な表示の禁止)1項1号では、不当表示として

「商品又は役務の品質、規格その他の内容について、一般消費者に対し、実際のものよりも著しく優良であると示・・・す表示であつて、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるもの」

が挙げられています。

まず、ウェブサイト等での宣伝文言、説明が「表示」(景表法4条1項柱書)であることは問題ないでしょう。

しかし、上記のようなESTA代行サービスは、実際に表示どおりの申請代行サービスを提供するものです。したがって、サービスの内容が「実際のものよりも著しく優良」というのは無理がありそうです。

続いて同項2号では、

「商品又は役務の価格その他の取引条件について、実際のもの・・・よりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示であつて、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるもの 」

とされています。

しかし、ここでも、例えばその業者のサイトで「4000円でESTA申請を代行します」と書いてあって、実際そのとおりの代金しか請求されないのであれば、「価格その他の取引条件」が実際のものより著しく有利ということはできないように思われます。

しかし、何だか釈然としないものが残ります。

そこで、このような、当然無料であるサービスを有料で提供する場合には、

「この申請は米国大使館のホームページで簡単にできます。当然無料です。それでも、自分で申請するのに不安がある人は、当社のサービスをご利用下さい」

というような断り書きをしないと役務の「内容」を偽ったことになる、という解釈を取れないでしょうか。

やはり難しいと思います。

なぜなら、ここでの表示は、申請代行サービスなるものが、本来価値がない(米国大使館のホームページで無料でできるので)ものであるにもかかわらず、もっともらしホームページを作ることで価値があるものであるかのような体裁を取っている、というだけで、やはり、サービスの「内容」に偽りはないからです。

このように、景表法の規制は、実際に支払わなければならない対価や実際に受け取れる商品の内容についての虚偽の表示は取り締まれますが、無料のものを、さもお金を払う価値があるかのように装う表示は取り締まれない、ということなのだと思います。

ですので、例えばある商品の市場での相場が1000円であるのに、その商品を1万円で売るという表示をしても、不当表示にはなりません。この場合に、「市場では1000円で手に入りますよ」という表示をしないと不当表示になる、なんていうのはばかげているでしょう。

景表法も競争法の一分野であるという観点から説明をすると、景表法は自己の商品役務の内容・価値をありのままに伝えることを要求するものであってそれ以上のものではなく、市場での客観的価値を表示することまでは求めていない、さらに言えば、市場経済においては、商品役務の価値を他社と比べたり価格コムでチェックすることによって調べる責任は、需要者の側にある、ということなのでしょう。

一般の方からすると、どうしてそんな杓子定規な解釈をするんだ、詐欺は取り締まるべきだろう、ということかもしれませんが、やはり法律の文言を無視するわけにはいきません。

景表法の管轄が公取委から消費者庁に移ったことで、消費者庁は、競争政策というよりむしろ消費者保護の観点から、公取委よりもクリエイティブな解釈をすることがあるかもしれませんが、やはり、詐欺的商法を景表法で取り締まることには一定の限界がありそうです。

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コメント

2011年7月21日にこの記事に付けられたコメントには、関係者の固有名詞と思われるものが含まれていたので、誰でも見られるこのブログに掲載するのは不適当と考え、削除させて頂きました。

内容はなかなか興味深かったですが、そのようなわけですので、ご了承下さい。

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