« 私的独占と不公正な取引方法の切り分け | トップページ | セブン・イレブンへの排除措置命令に思う »

2010年4月15日 (木)

下請法の罰則規定の不整合

下請法10条から12条に、下請法違反についての罰則の規定があります。

下請事業者に必要事項を記載した発注書面(いわゆる3条書面)を交付しなかった場合に、50万円以下の罰金に処せられることになっています(10条)。

ただ、下請法の両罰規定は、論理的にやや整理されていないように思われます。

まず10条では、

第十条  次の各号のいずれかに該当する場合には、その違反行為をした親事業者の代表者、代理人、使用人その他の従業者は、五十万円以下の罰金に処する。

 第三条第一項の規定による書面を交付しなかつたとき。 」

とされています。

素直な日本語の読み方になれていると、ここでの「その違反行為をした」を、直後の「親事業者」にかかると読んでしまいそうですが、そう読むと、「代表者、代理人、使用人その他の従業者」個人が違反行為をしたか否かにかかわらず、親事業者の従業員であれば誰でも罰則の対象になってしまい不自然です。

ですので、「その違反行為をした」は(さらに言えば、「親事業者の」も)、「代表者、代理人、使用人その他の従業員」にかかる、というふうに読むべきです。

したがって、親事業者社内で本来発注書面を交付すべき立場にあった従業員(例えば発注担当者)のみが、罰則の対象になる、ということになります。

親事業者の代表者も、社内でそのような立場にあったなら、罰則の対象になり得ますが、代表者個人がそのような立場にあることは稀でしょう。

以上より明らかなように、行為者である個人は、10条で処罰されることになります。

問題はここからです。

両罰規定である12条では、

第十二条  法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、前二条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対して各本条の刑を科する。」

とされています。

12条の規定振り自体はごく一般的な両罰規定なのですが、実はこのタイプの両罰規定では、「行為者〔=従業者個人〕を罰する(ほか)」という文言が、本来法人を名宛人とする違反規定の行為主体を広げる結果、自然人従業者を罰する根拠規定となると、判例上解されています。

例えば、独禁法の両罰規定である独禁法95条について、そのような趣旨の説明がなされています(「注釈独占禁止法835頁」)。

ですので、独禁法95条のような一般的な規定振りに慣れていると、下請法10条と12条のような規定の仕方は、ちょっと重複気味な感じがします。

しかし、「行為者を罰する(ほか)」という、とってつけたような文言を自然人行為者の処罰根拠にする判例の見解こそがおかしい、という立場に立てば、下請法の規定振りのほうが本来あるべき姿だということになるのでしょう。

ちょっと気になるのは11条の報告義務違反罪です。

11条では、

第十一条  第九条第一項から第三項までの規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した者は、五十万円以下の罰金に処する。」

とされています。

しかし、9条の報告の名宛人は、条文上明らかに「親事業者」であって、従業員ではありません。つまり、従業員個人は、9条に違反しようがありません。

したがって、11条の、報告をしなかった者、というのは、法人たる親事業者のことであると考えざるを得ません。

そうすると結局、報告をしなかった親事業者の従業者(報告をすべき地位にあった者。報告には代表者名で回答するのが通常なので、代表者は当然含まれるでしょう)を処罰する根拠は、独禁法95条の解釈と同様に、12条の「行為者を罰する(ほか)」という文言に求めざるを得ないように思われます。

このように、11条、12条、13条の規定振りは、何となくちぐはぐした感じがします。

まとめると、

10条→発注書面等を交付しなかった個人の罰則、

11条→報告命令に応じなかった法人の罰則、

12条→10条違反については、法人の罰則、11条違反については、個人(と法人)の罰則、

ということになると思われます。

下請法違反で刑事罰が適用された事例は未だありませんが、将来の参考になればと思います。

« 私的独占と不公正な取引方法の切り分け | トップページ | セブン・イレブンへの排除措置命令に思う »

下請法」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/1240660/34238275

この記事へのトラックバック一覧です: 下請法の罰則規定の不整合:

« 私的独占と不公正な取引方法の切り分け | トップページ | セブン・イレブンへの排除措置命令に思う »