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2010年4月24日 (土)

ABA最終日

本日はABA春期大会の最終日でした。

午前中の前半は、FTCのメンバーによるブリーフィングに参加しました。

ここでも最初の話題は新合併ガイドラインで、旧ガイドラインに比べて協調的効果についての記述を分かりやすくしたこと、審査手順を(まず市場画定ありきではなく)フレキシブルにしたこと、Upward Pricing Pressureは企業のインセンティブに注目するものであって、利益最大化を必ずしも前提とするものではなく(なので微分の知識も不要)、常識的な感覚にも沿うものであること、これらはFTCの現在の実務を忠実に反映したものであって、目新しいものではないこと、などが説明されました。

次の話題は金融規制とFTCの役割についてで、新しく設立される機関とFTCの権限分配、新規制での「large entity」の意義が明確でないこと、といった問題点が議論されました。

消費者保護については、競争当局と消費者保護というFTCの2つの顔について議論がされ、インテルのケースにはdeceptionの要素もあること、「消費者の選択の自由は市場経済の中枢神経である」との指摘などが印象的でした。

FTC法5条については、一般にシャーマン法より範囲が広いといわれているところ、その具体例として、invitation to collusionがあり(アメリカン・エアラインズのケース)、これからも積極的に運用していく、とのことでした。

また、広告については、行動経済学の知見を用いているとのことであり、誤解を招く表示が有害であることはもちろん、情報が多すぎること、とくに無関係な情報が多すぎることが問題となり得る、という指摘が興味深かったです。

消費者の情報保護について議論され、これからは、プライバシー・ポリシーのような契約ベースの規制では十分ではなく、新しいテクノロジーに対応していくことが問題であろう(たとえば携帯電話やブラックベリーで何ページもあるプライバシー・ポリシーを読む人はいないであろう)、国境を越えて個人情報が蓄えられているような場合(クラウド・コンピューティング)にどう対応するのか、ロケーション・ベースの広告にどう対応するのか、といった問題点が指摘されました。

午前中後半は、Enforcers' Round table という、DOJとFTCとEC委員会とカナダ当局、というフルキャストによるパネルに参加しました。

ここでも、合併ガイドラインが最初の話題で、DOJのクリスティン・バーニー氏が、「新ガイドラインでは透明性を目指した。実際に、司法省で検討されている事項、プロセスを偽りなく記した。全米どこにいるかにかかわらず、DOJが何を考えているか分かるようにした。『ガイドラインにはこう書いてあるけど実態は違うんだよ』などということが起こらないように、ありのままを記載した」と言っていました。

刑事執行については、法人に対する罰金の抑止力について触れられ、バーニー氏が自らの弁護士としての経験から、いかに法人に対する罰金が抑止力となっているかを力説していました。ECでは、カルテルの利益を得ているのは法人なので、個人を罰すべきとの発想は少ないとのことでした。

消費者保護については、ここでも、インターネットを通じたプライバシーの問題が指摘されました。

ハイテク産業については、何がボトルネックになっているのか(たとえばネットワーク効果など)という点に注目している、との発言がバーニー氏からありました。

カナダは昨年独禁法の大きな改正があったそうです。

レメディについては、司法省もFTCも、構造的措置を好むのはそのとおりだけれども、「行為的措置にもアレルギーがあるわけではない」(バーニー氏)、「クリエイティブな行動的措置によって競争の制限がなくなるのであれば、これを受け付けない理由はない」(FTC)との発言がありました。

なお、別のセッションに出た方の話によると、「再販価格維持は最高裁が合理の原則に判例変更した後も実務家の多くは当然違法的発想であり、議会でも当然違法化する法律が成立しそうだ」とのことでした。

午後から、ある法律事務所のランチに招かれました。そこでのスピーチもとても興味深い話でしたが、独禁法に関係するところでは、今度引退するスティーブンス最高裁判事(90歳!)が、いかに反トラスト法の判例形成に貢献したか、彼の引退の影響は大きいであろう、というような話がありました。

そこで面白かったのは、「スティーブンス判事は、弁論で最初に質問することはなく、いつも他の判事の質問が終わったころに、『あまり本論とは関係ないかもしれない質問なんですけれど・・・』といって鋭い質問をするのが常で、代理人はスティーブンス判事が口を開くと、『ここからが本番だ』と思った」というような経験談がありました。

以上、3日間のABAでした。非常に盛りだくさんで、来年もまた来ようと思います。

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