「同一の商品」と「同種の商品」(企業結合届出書)
昨日の続きです。
平成21年改正後の企業結合の届出書をよく読むと、「同一の商品」と「同種の商品」という、2つの異なった用語が登場することが分かります。
しかも、「同一の商品」については、記載要領を読んでも定義がありません。
「同一の商品」の使い方は、例えば「4 届出会社及び株式発行会社の国内の市場における地位」のところで、届出会社(=株式取得会社)と株式発行会社の市場における順位とシェアを記載するときに、
(1)届出会社と発行会社で同一の事業地域内で「同一の商品又は役務」について競合する場合
と
(2)「同一の商品若しくは役務について競合しない場合(と、異なる地域で競合する場合)
に分けて記載せよ、というように使用されています。
なので順位とシェアは「同一の商品」(その定義はさておき)について記載すれば良いのか、と思うとさにあらず。記載要領には、
「市場占拠率の算出は・・・株式取得後の会社と同種の商品又は役務の総供給量・・・を分母とする次の例式によって算出して下さい。」
と明記されています。つまり、機能及び効用が同種の商品の中での順位とシェアを書かないといけない、ということです。
届出書の書式を全体的にみると、「同一の商品」というのを「同種の商品」と意図的に書き分けているようでもなさそうです。
ですので、「同一の商品」は「同種の商品」と同じ意味だ、と考えておくのが恐らく正しいのだと思います。
そんな細かいことはどうでも良いじゃないかと思われそうですが、「同一」とか「同種」あるいは「種類」という用語は、実は結構厄介です。例えばA社債とB社債は同じ「種類」といえるのか否か、議論が分かれたりします。なので法律家は、「同一」とか「同種」とかいわれると、敏感に反応してしまいます。
恐らく、届出書の「同一の商品」というのは、旧法時代のものが残ってしまっただけなのだと思いますが、同じ意味の異なる用語があるというのはやはり混乱の元です。
しかも、普通の人は「同一の商品」の範囲のほうが、「同種の商品」の範囲より狭いと感じるのではないでしょうか(「同一」の方はまさに同一で、「同種」の方は「同じ種類」というに過ぎない)。
でも、仮に「同一の商品」が旧法の届出書の記載を引き継いだもので標準産業分類で同一性の有無を判定するのだとすると、「同一の商品」の方が「同種の商品」よりも広い、という解釈すら生じうると思われます。
これを読んだ公取委の人が、次の届出規則の改正のときにでもついでに、「同一の商品」を「同種の商品」に統一してくれることを望みます。
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