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2010年3月 2日 (火)

事前相談の結果に異議がある場合の対応

日本では、統合後のシェアが高くなるなど独禁法上問題が生じそうな企業結合については、公取委に事前相談を行うのが一般的です。

では、事前相談の結果公取委から独禁法上問題有りと指摘された場合、どのように争えば良いのでしょうか。

事前相談の結果に不服があっても当事会社は異議を申し立てることはできません。事前相談が法律上の根拠を持たない任意の制度であることからすれば、当然のことかもしれません。

また事前相談は行政手続法2条6号に定義される「行政指導」にも該当しません。同号では行政指導は「・・・作為又は不作為を求める」指導などを指す、とされており、事前相談はいわば独禁法の解釈をしめす法律相談のようなものであり、作為や不作為を求めているわけではないからです。またそもそも、「行政指導」に該当するとしても行政手続法不服申立の手続があるわけでもありません。

それでは事前相談の結果に異議がある当事者はどうすれば良いのかといえば、正式に、法律上の企業結合の届出をするほかありません。というよりむしろ、こちらの法律上の届出のほうが本来の制度なわけです。

事前相談で公取委が違法だと結論付けた企業結合は、正式届出手続においても当然違法だと言われるでしょうから、そのまま企業結合を実行すれば公取委から事前通知の後排除措置命令を受けるので(独禁法17条の2)、まずは公取委において審判で、続いて東京高裁において審判取消訴訟で争う、ということになります。

以上は届出義務があることを前提にお話しましたが、届出の要件を満たさないために届出義務が無い場合はどうなるのでしょうか(念のためですが、届出義務が無くても企業結合が実体法上違法であるということはありえます)。

この場合は、届出をしないでそのまま企業結合を行うことになります。そして、その場合には、排除措置命令(の事前通知)の期限(独禁法10条9項など)が無いので、理屈の上では永久に、公取委から排除措置命令を受ける可能性がある、ということになります。

なお、排除措置命令の事前通知(独禁法10条9項等)は企業結合が行われる前でも後でもなされることがあり得ますが、排除措置命令自体は、独禁法17条の2において「・・・違反する行為があるときは、」とされているので、当然、合併等が行われた後においてのみなされるものと解されます。

また、公取委が東京高裁に緊急停止命令(独禁法70条の13)の申し立てをすることも考えられますが、緊急停止命令も、10条1項などに「違反する疑いのある行為をしている者に対し」てできるものなので、まだ企業結合していない(=違反していない)者に対して行うことはできないと解されます。

ただ、企業結合を行う前でも立入調査や報告命令はなされる可能性があります(独禁法47条)。

事前相談の制度ができてからは、独禁法上問題のありそうな企業結合が事前相談も無く行われていきなり排除措置命令がでたという話は聞きませんが、もし今後、事前相談をせずに企業結合の届出をしてみよう(届出義務の無い場合はいきなり企業結合してみよう)という場合の参考になればと思います。

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