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2010年3月16日 (火)

OEMの独禁法上の問題点

OEM(Original Equipment Manufacturing)が独禁法上問題とされる場合があります。

それでは、OEMが独禁法違反とされるのはどのような場合なのでしょうか。

この問題を考えるには、なぜOEMが独禁法違反となり得るのか、をよく考える必要があります。

OEMというのは、要するに、他社から供給を受けた製品を自社ブランドで売ることです。

例えば、東芝が船井電機からDVDプレイヤーの供給を受けて、東芝ブランドで売る、といった具合です(あくまでたとえ話です)。

これだけ見ると、OEMは製造委託と変わらないように見えるので(東芝がフナイに製造委託しているだけ)、どこが独禁法違反なのか、よく分かりません。

実はOEMの場合、委託側と製造側が競争者であるために、単なる製造委託とは異なる以下のような問題が生じ得るので、独禁法上問題とされるのです。

まず当たり前のことですが、OEMでは委託側(東芝)の調達コストが製造側(フナイ)に丸見えになってしまいます。フナイから東芝に売った値段が東芝の調達コストなので、これを分からないようにするのは無理です(ただ、東芝からフナイに原材料を支給して製造委託料だけをフナイに支払うようにすれば、この事態は避けられます)。ライバルの調達コストが分かれば、どうしても競争制限的行動に結びつきやすくなります。

次に、OEMでは委託側(東芝)の販売量や販売計画が、製造側(フナイ)に丸見えになってしまいます(東芝がフナイだけでなく、同じ商品をサムスンにもハイアールにも製造委託すればそういうことにはならないのでしょうが、そういうことは実際には余り無いようです)。そうすると、フナイとしては東芝の販売計画を睨みながらフナイ製品の販売計画を立てられるわけで、競争制限的な行為に結びつきやすくなります。通常の製造委託では、そもそも製造側は自社ブランドでは販売しませんので、こういう問題生じません。

また、従来自社で製造していた商品をOEMに切り替える場合には、委託側(東芝)が製造設備を縮小することが多いです。しかも、そのことを製造側(フナイ)にはっきり伝えなくても、OEMに至る事情からして製造設備を縮小するんだろうなぁということが、受託側に分かってしまいます。これも、協調的行為に結びつく可能性があります。

さらに、OEMでは製造側(フナイ)も自社ブランド製品を販売せねばなりませんので、もしフナイの生産能力に余裕がないと、東芝分何台、フナイ分何台、というように、割り振りを決めないといけないことになります。もしOEMの対象になっている東芝ブランドのDVDとフナイのDVDの市場でのシェアが高ければ、かなりカルテルっぽくなります。普通の製造委託であれば、製造側の生産能力が足りなくなれば、委託側は他の業者に頼むまでです。

以上のように、OEMに独特の問題がいろいろとあるので、単なる製造委託に比べて独禁法に抵触する可能性が高くなります。

ついでにいえば、OEMは様々な事情でもともと寡占的な業界でなされやすいということもあるのではないかと思います(通常の製造委託では、中小の受託製造業者がいくらでも存在するし、委託側が中小企業であることもある)。

最後に、公取委の相談事例などを見てこういう点が考慮されていると思われる点を、以下に列挙しておきます。

①OEMの対象製品が、製造側(フナイ)の生産能力のどの程度の割合を占めるか(割合が低ければ問題なし)、

②OEMの対象製品が、製造を委託する側(東芝)の販売数量のどの程度の割合を占めるか(割合が低ければ問題なし)、

③製造を委託する側と製造する側のマーケットシェア(低ければ問題なし)、

④製品の販売価格に占める製造コストの割合が大きいか(製造コストが販売価格に占める割合が大きいと販売価格も両社で近づくことになり、問題が大きい)、

⑤販売は独自に行うか(独自に行うなら問題ない)、

⑥必要な範囲を超えて情報交換しないか(すれば問題。当然ですね)。

相互OEMの場合は、各当事者が製造を委託する側と製造する側の両方の立場に立つので、①~⑥を両方の立場からチェックすることになるので、各要素にひっかかる可能性が高まりますが、かといって、一方通行のOEMであれば独禁法上問題ではない、というわけではありません。

独禁法に馴染みがないと、どうしてもOEMという契約形態自体が問題であるかのような錯覚をしてしまいがちで、何が問題なのかの本質が捉えにくくなるのですが、取引のネーミングに囚われず、競争への影響を丹念に見ていくことが必要なのだと思います。

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コメント

なぜ、OEM供給を受ける生産量の割合が大きいほど、当事者間で費用の共通化の程度がたかまり、情報の透明性が高まるのでしょうか?

今勉強しているのですが、OEM供給で相手側会社に供給委託した以上、その委託がそう販売の30パーセントであっても、5パーセントであっても、生産計画などの情報は同じように相手に知れてしまうのではないのかしら・・・と思い、そうであればその相手の計画に協調した製品の価格にしたりすることはどっちでも変わらないのではないかと思ってしまいます。

ある本で、「OEM供給を受ける生産量の割合が大きいほど、当事者間での費用の共通化の程度が高まり競争の余地が小さくなる一方、生産計画、生産数量等の情報の透明化は高まり、競争回避のインセンティブは大きくなる。
製品の販売価格に占める生産費用の割合が大きいほど、当事者間での費用の共通化の程度が高まり、競争回避に近づく。」とあるのですが、疑問なのは①供給を受ける生産割合の大小にかかわらず、供給を受ける以上は情報は相手に知れるし、なぜ費用の共通化が起こるのか。
ということです。
教えていただけますと有難く思います

まず、この記事のおかげでOEMの理解が深まりました。わかりやすかったです。ありがとうございます。

れいさんの質問ですが、東芝が委託するとき、仮にこれ生産量の○%だからね。とか言ってお願いしたなら、船井が委託された生産量から割合計算で東芝の生産量を把握することができるので、5%でも30%でも変わらないという疑問が当たると思うのですが、普通はライバルにそんな形で委託しないと思うんです。なので、行為時の船井の目からみれば、東芝の正確な生産量がわかるということにはならないけど、総販売量の中に占める割合が高まれば、全体量についてのおおよその検討がつく可能性が高まるということなのではないでしょうか。実際、れいさん引用の記述も、「透明になる」とは書かずに「透明性が高まる」と書くにとどまってます。

私もよくわからないところなので、間違いがあれば、植村先生に正して頂きたいと思います。

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