公開買付期間中の措置期間満了と訂正届出書
平成21年改正法により株式取得が事前届出化されたことに伴い生じる公開買付との関係に関する問題点について、金融庁より「株券等の公開買付けに関するQ&A」の追加が出ています。
http://www.fsa.go.jp/policy/m_con/20091126.html
その問10に、
「公開買付けに係る株券等の買付け等について、公開買付期間中に措置期間〔注:公取委が独禁法10条9項により排除措置命令の事前通知を出せる期間〕が終了した場合、公開買付届出書の訂正届出書を提出する必要がありますか。」
というのがあります。
回答の内容はQ&Aを見ていただくとして、結論を要約すると、
①公開買付届出書の提出までに事前相談での「問題なし」との回答を得ている場合には、公開買付届出書にその旨を「許可等」として記載すればよく、措置期間の満了時に訂正届出書を提出する必要はない、
②事前相談を行っていない場合、措置期間の満了時に「許可等」があったものとして、訂正届出書を提出する必要がある、
ということです。
株式取得に当局の「許可等」が必要な場合には「許可等」の有無について公開買付届出書に記載する必要がありますが、事前相談をしたときには事前相談での「問題なし」という回答を「許可等」とみなし、事前相談をしないときには措置期間の満了したことをもって「許可等」とみなす、ということですね(①のルート)。
競合他社を買収する場合でシェアがそれなりに高くなる場合には事前相談をするのが通常でしょうから、①のルートに乗ることになります。
これに対して、ファンドによるTOBの場合などは、通常、競争を実質的に制限することにはならないため、事前相談をしないのではないかと思います(②のルート)。
しかし上記のとおり、②のルートに乗ると、公開買付届出書の訂正届出書の提出が必要になります。
そして、公開買付届出書の訂正届出書を提出した場合には、訂正届出書を提出した日より起算して10営業日を経過する日まで公開買付期間を延長しなければなりません(他社株買付府令22条2項)(公開買付期間が訂正届出書を提出した日から10営業日後より後に満了するよう公開買付届出書で設定されていた場合には、もちろん延長は必要ありません)。
つまり、公開買付期間中に措置期間が満了することが分かっている場合には、(訂正届出書の提出を要することから)措置期間満了日から公開買付期間最終日までに10営業日空くように、当初の公開買付期間を設定する必要がある、ということです。
(もちろん、当初の公開買付期間をあえて措置期間満了日ぎりぎりに設定した上で延長しても良いのですが、最初から延長されることが目に見えているのにぎりぎりに設定することもないでしょう。)
訂正届出書を出すことを嫌うのであれば(例えば、最短の20営業日に設定したい場合)、公開買付届出書の提出前に措置期間が満了するように、株式取得の事前届出書を早めに公取委に提出しておくべき、ということになります。
ただ、株式取得の事前届出書には株式取得の意思決定をしたことを示す書面を添付する必要があり、このような意思決定をすると、場合によっては適時開示をする必要が出てきます。
このような適時開示を嫌うのであれば、公取委に事前相談をして、公開買付届出書提出までに「問題なし」の回答を得ておけばよい、ということになります(事前相談での「問題なし」の回答は、「許可等」として扱われますので)。つまり、①のルートに乗せるということですね。
以上のような次第で、今後は、競争上何ら問題がないのに「許可等」を得るためだけにする、「なんちゃって事前相談」をすべきケースが出てくるかも知れません。
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