転換社債の転換と株式取得の届出
転換社債を転換して株式を取得して議決権比率が20%または50%を超えてしまった場合にも株式取得の届出は必要でしょうか。
結論をいえば、必要です。
「転換社債」という名前は現行会社法には既にありませんが、会社法でいうところの新株予約権付社債、その中でも、新株予約権を行使すると社債の満期が繰り上がりその償還金が株式の払込に充当されるもの(転換社債型新株予約権付社債)を指します。
(ちなみに、もう1つの新株予約権付社債の類型は新株予約権を行使するときに新たに払込を要し社債はそのまま存続する、「社債存続型新株予約権付社債」です。龍田「会社法大要」p324)
そして、独禁法10条2項では、「・・・株式の取得をしようとする場合」に届出を要するとされており、株式を取得する場合に一般的に届出が必要となる(つまり、売買や贈与のような譲渡に限らない)ことが明らかです。
したがって、転換社債の転換(会社法の用語では、転換社債型新株予約権付社債に付された新株予約権の行使)によって株式が取得される場合も、当然、株式取得の届出が必要です。
ついでに言うと、合併、会社分割、事業譲渡による取得(つまり、合併消滅会社の資産に株式が含まれていた、分割対象事業に株式が含まれていた、譲渡対象事業に株式が含まれていた、というような場合)も「取得」に該当するので、届出が必要です。
これに対して、相続による取得は、届出の対象が会社による取得の場合に限られており個人による取得は届出の対象外なので、「取得」には該当するものの、結果的には届出は不要です。
さて、届出規則2条の7では、予め届け出ることが困難なので届け出なくて良い場合を定めています。
その中には、株式分割による取得、株式併合による取得、株式無償割当による取得、取得条項付株式の取得の対価として株式を取得する場合などが、届出を要しないとされています。これらの場合は取得者が積極的に投資判断をしているわけではない(つまり自分の判断で取得するわけではない)からと説明されます。
以上のような届出免除の場合に、転換社債の転換は含まれていません。転換社債を株式に転換するかどうかは転換社債の所有者が自分の判断で決めるので、当然のことですね。
(届出規則の正式名称は「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律第九条から第十六条までの規定による認可の申請、報告及び届出等に関する規則」といいます。条文は、政府の法令データ提供システムで入手可能です。
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