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2010年2月 9日 (火)

【日経産業新聞フォーラム2010】

本日、日経産業新聞フォーラム2010「グローバル化への試金石-内需関連企業のM&A戦略を検証する」で、

「グローバル化時代の内需関連企業のM&Aにおける独占禁止法上の留意点」

というテーマでプレゼンテーションをさせていただきました。

http://www.adnet.jp/nikkei/ssforum/20100209c.asp

多くの皆様にご出席いただき、ありがとうございました。後日日経産業新聞に講演内容のサマリーが載るようですので、関心のある方は是非ご覧下さい。

キリンとサントリーとの統合が破談になった翌日ということで、タイムリーなのかタイムリーではないのかよくわかりませんが、今後も内需中心の企業が統合して世界規模で競争をしていくというケースは増えるのではないかと思われます。

そして、内需中心の企業が体力をつけるためにM&Aをする上では、日本の独禁法を避けて通ることはできない問題だろうと思います。

私の見るところ、今後公取委の企業結合審査については3つのパターンで事実上異なったスタンダードが適用されていくのではないかと予想しています。

1つめは、キリンとサントリーのような、国内のいわゆる勝ち組企業同士の大型の統合です。このような統合は、世間の耳目を集めるので公取委も相当慎重に審査するでしょうし、違法だと判定するのは相当勇気がいるものと思われます。

2つめは、規模は大きくないけれどもニッチなマーケットで国内シェアが高くなってしまう企業の統合です。1つめのパターンに比べ、小粒で世間の注目も高くないので、案外簡単に違法と認定されてしまうような気がします。

3つめは、世界各国で活動している企業同士の統合です。この場合、日本の独禁法が保護するのは国内の競争(需要者)なので各国の競争法当局とは異なる結論になるのは理論上おかしくないとはいえ、実際上、他の多くの国で適法と認定されているものを違法と認定するのは、また勇気の要るところだと思います。

それから、内需中心の企業が統合していくときに独禁法上重要なのが、統合によって何を目指すのか、ということだろうと思います。

例えば、コスト削減やシナジー効果を目指すというような、需要者の利益になるような(消費者厚生を増すような)統合なら認められるべきでしょう。

これに対して、同じコスト削減とはいえ、効率性に基づかないコスト削減(例えば過剰設備の削減)であるとか、顧客ベースの獲得(囲い込み)なんていうのは、独禁法上あまり褒められた動機ではありません。まして「国内で競争をやめてほっと一息ついて海外へ」なんていうのは宜しくないです。

結局は、需要者の利益になるかどうかが独禁法の評価の上で重要なのであり、会社の都合だけに基づく統合では高いシェアを正当化することは難しいでしょう。

これだけ変化の激しい時代ですから、「シェアを拡大して過当競争を避けて一息つこう」というような安易なM&Aは、ビジネス上もうまくいかないのではないでしょうか。

こう考えると、独禁法上の良いM&Aというのは、ビジネス上も良いM&Aである、といえるかも知れません。

それから、もう一つ内需中心企業のM&Aに関連して注目しているのが、民主党政権の中小企業保護政策です。独禁法上の企業結合規制とは一見関係なさそうですが、企業結合をすることによって下請に対する優越的地位濫用が起こりやすくなる、という理由で統合が認められないということも、理論上はあり得ます(私自身は、優越的地位濫用は他の不公正な取引方法と比べて特殊な行為類型であり、その高度の蓋然性がない限り、優越的地位濫用が容易になることを理由に企業結合を違法とすることは控えるべきであると考えています)。

さらに、とくにグローバル化を目指す内需中心企業同士の統合の場合には、統合によるメリットというのは明らかにあるわけですから、仮に独禁法上問題があるような場合であっても、一刀両断に違法とするのではなく、きめ細やかな問題解消措置で対応するといった柔軟な姿勢が公取委には必要ではないか、と思います。

内需関連企業のM&Aに関してのこの辺りの考えは、もう少し整理してどこかで発表したいと思います。

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