インターネット懸賞のチェックポイント
インターネットを通じた懸賞について、景表法の観点からのポイントをまとめておきます。
まず、「懸賞」とは何でしょうか。
「懸賞」の定義は、「懸賞による景品類の提供に関する事項の制限」(懸賞制限告示)にあり、
①くじその他偶然性を利用して定める方法、または
②特定の行為の優劣または正誤によって定める方法
によって、景品類の提供の相手方や提供する景品類の価額を定めること、と定義されています。
昔、「オープン懸賞」という用語があったので紛らわしいのですが、現在「懸賞」といえば、景品類の提供をすることに限られます。
そして、「景品類」といえるためには取引付随性が必要ですので(景表法2条1項)、取引に付随しない経済上の利益は「懸賞」に該当しないことになります。
余談ですが、この「懸賞」という言葉は、法律用語としてあまりよろしくないと思います。懸賞という言葉に「取引付随性」をイメージさせる要素が無いからです。むしろ民法529条の「ある行為をした者に一定の報酬を与える」という懸賞の定義のほうが、普通の言葉の意味に近いと思います。
時々、「こういうことをすると懸賞に該当しますか」という質問を受けるのですが、たぶん質問する人は、昔オープン懸賞と呼ばれていたものと、景品類の提供方法としての懸賞とをごちゃまぜにしている可能性が高いです。
ですので、このような質問を受けるとまず、「昔『オープン懸賞』と呼ばれていたもの」と「景品類の提供方法としての懸賞」の違いを説明するところから始めないといけません(勝手にこちらで懸賞告示に定義された懸賞だと解釈して答えると質問の趣旨を誤解していることになります)。
そこでちょっと長いですが、懸賞告示にいう懸賞のことを以下では「景品類の提供方法としての懸賞」と呼ぶことにします。
現行法上は、「景品類の提供方法としての懸賞」に該当しなければ、仮に民法529条の懸賞に該当しても、景表法上または独禁法上の規制はありません(昔あった「オープン懸賞告示」は廃止されました)。
そこで、インターネット懸賞が「景品類の提供方法としての懸賞」に該当するかを考える必要があります。
この点については、公取委から「インターネット上で行われる懸賞企画の取扱いについて」というものが出ています。
これによれば、懸賞サイトが商品の販売を行うサイト上にあったり、商品販売サイトを見なければ懸賞サイトを見ることができないような構造であったとしても、取引付随性はなく、「景品類の提供方法としての懸賞」には該当しない、としています。つまり、いくらでも懸賞として物品を提供してよいことになります。
要するに、オープン懸賞告示が廃止された現在では、インターネットを通じた懸賞は無制限に行うことができる、ということになります(なお、取引付随性がない場合には、自己と取引することを誘因していることにもならないので、一般指定の不当な利益による顧客誘因にも該当しないと考えられます)。
ただし、商品販売サイトで商品を購入することが懸賞への応募の条件になっていたり、商品を購入することで懸賞が当たりやすくなる場合には、取引付随性があり、「景品類の提供方法としての懸賞」に該当するので注意が必要です。
また、こちらのほうが実際にはありがちな方法ですが、インターネットでの懸賞とその他の方法(例えば商品の包装に懸賞を告知するなど)を通じた懸賞とを併用する場合(典型的には、両方の方法で同じ内容を告知して、同じ物品を提供する場合)には、注意が必要です。
この場合、インターネットを通じた部分は価格等無制限に行えますが、包装等で告知する部分については「景品類の提供方法としての懸賞」に該当してしまいます(ちなみに、「景品類等の指定の告示の運用基準について」4(2)では、取引に付随しない提供方法を併用していても商品包装に告知している場合には取引付随性ありとしています)。
両者を明確に分ければいいのでしょうが、企業としては同じ内容を告知したいでしょう(両者異なっていれば消費者が混乱しそうです)。
さらに、購入した商品の包装の告知を見て懸賞を見た人が、「はがきを買って申し込むのも面倒だし、切手代ももったいない」ということでインターネットにアクセスして申し込むこともあるでしょう。
このような可能性もあることを考えると、景品の最高額と総額については、インターネットを通じて申込があった分と、(おそらくは商品包装をみて)はがきで申込があった分を分けることなく、景品類の最高額と総額が懸賞制限告示の範囲内にするようにすべきでしょう。
(こういうアドバイスをすると、「ではホームページからの申込フォームに『私はこのホームページを見て申し込んだのであり商品包装に告知されている表示を見て申し込んだものではありません」という文言を入れたらどうか」と提案するクリエイティブな(?)事業者が出てきそうですが、やめておいた方が良いと思います。)
つまり、
①懸賞により提供する景品類の最高額は、懸賞に係る取引額の20倍以下(当該金額が10万円を超える場合は10万円以下)、
②懸賞により提供する景品類の総額は、当該懸賞に係る取引の予定総額の100分の2以下、
となります(懸賞制限告示3項。なお4項に例外あり)。
最後に関連する問題を2つ記します。
海外のサイトでも、英語のサイトでも、サーバーが海外にあっても、日本の需要者が応募できる場合には、日本の景表法が適用されると考えられます。事実上すべてのサイトがこれに該当するでしょう。どうしても日本の景表法の適用を排除したいなら、応募者に住所を記入させて日本の住所なら申込無くするか、「あなたは日本人ですか」と質問して「Yes」と答えたら申し込みできなくするかしかないでしょうね(それで本当に大丈夫かちょっと疑問ですが)。
それから、取引付随性がないとしても、応募に金銭の支払いを要するような場合には刑法の富くじ罪(刑法187条)に該当し得ます。
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