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2010年2月12日 (金)

欧州企業結合規則(ECMR)の審査期間の数え方

本日は、日本の事前相談と欧州の企業結合規制の審査期間(日数)の数え方の違いについてご紹介します。

日本の事前相談では、当事会社が一定の提出義務を果たしてから何日以内、という形で期限が算定されます。

例えば、第1次審査は当事会社が必要な資料を提出した日から起算し、提出した日から原則30日以内に公取委は第2次審査が必要か否か通知する、とされています。

したがって、当事者による資料提出が遅れれば、いつまでたっても第1次審査の回答期限は到来しないことになります。

さらに、日本の事前相談では、第1次審査または第2次審査の全体の日数について、事前相談の申請日から何日以内というような形での制限がありません。

これに対して欧州では、第1次審査は申請日から25営業日、第2次審査は第2次審査開始の通知日から90営業日、というふうに、各段階の全体の日数(タイムリミット)が明記されています。

そして、欧州企業結合実施規則(Commission Regulation (EC) No 802/2004 of 7 April 2004 Implementing Council Regulation (EC) No 139/2004 on the control of concentrations between undertakings)では、以下の場合に、上記の「25営業日」、「90営業日」のタイムリミットが停止する、とされています(実施規則9条1項)。

(a)委員会が当事者に要求した情報を当事者が期限までに提出しない場合。

(b)委員会が第三者に要求した情報が、当事者の責に帰すべき事由により期限までに提出されない場合。

(c)当事者が調査を拒んだ場合。

(d)当事者が計画の変更を委員会に通知することを怠った場合。

では、日本の期限の定め方と欧州の期限の定め方で、どこが異なるのでしょうか。

一言で言えば、当局側の検討中(いわば当局側のコートにボールがある間)に、期限までの日数がカウントされるか否かが異なります。

日本の場合、例えば第1次審査の回答期限は必要な資料が提出されてから30日以内ですが、必要な資料の要求が公取委からあるまでは、事実上、時計は止まったままです。

事前相談ガイドラインでは、申請(と計画内容を示す資料の提出)から20日以内に追加資料の要否について公取委が当事者に通知することにはなっていますが、その通知が遅れても、第1次審査の回答期限(公取委の持ち時間)が延びることはありません。

つまり、公取委側の処理が遅れたらその分全体の手続が遅れるということです。

これに対して欧州の場合は、例えば第1次審査の場合であればトータルの審査期間が25営業日と決まっており、欧州委が追加質問の内容を考えている日数も、この25営業日に含まれます。

つまり、欧州委の側で対応が遅れると、それだけ審査期間が短くなる、ということです。

このような実務を反映して、欧州の弁護士は、「欧州委が追加要求をすると時計が止まる(stop the clock)」という言い方をします。いわば、ボールが当事者側のコートにある間は時間が止まる、というイメージですね。

しかし日本では、トータルの審査期間というものが決まっていないので、「追加質問があったことで時計は止まるのか?」と質問されると答えに難渋します。時計が止まるといえば止まるのですが、全体の審査日数に制限がないので、時計が止まること自体に余り意味はないからです。

恐らく欧州の弁護士には、当局側に玉を投げ返している間は時計が進むという大前提があるのでしょうけれど、日本はそうではありません。公取委からの追加質問リストの提出が遅れれば、それだけ第1次審査の手続が遅れることになりますし、それに対する何らの救済もありません。

日本の事前相談は法律上の手続ではないので、きっとこのような緩い運用がまかり通るのでしょう。

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コメント

日本では一次審査のスタートが切られる時までの期間に何ら制約がない一方で、一次審査の期間には制約があるという立て付けですので、ご説明は、この意味では、少し違うのではないでしょうか?

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