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2010年1月27日 (水)

一橋大学大学院連続講義(アメリカ独禁法)

昨日、一橋大学大学院国際企業戦略研究科の連続講義で、アメリカ独禁法についてお話しさせて頂きました。

お忙しい中、また夜遅い時間に出席頂いた皆様、どうもありがとうございました。

講義の中でも少し触れたのですが、アメリカ独禁法ではシャーマン法1条が共同行為(水平的制限、垂直的制限を含む)、2条が単独行為を規制するという形になっています。

この区別はEU独禁法でも、またそれを参考にした中国独禁法でも採用されているので普遍的に世界に行き渡った感がありますが、合理的な区別であるのか今ひとつすっきりしないものがあります。

例えばシャーマン法1条では再販売価格維持も垂直的合意ということで違法となりますが、合意を違法とするなら合意の両方の当事者を違反としないと辻褄が合わないような気がします。

しかし、メーカーが再販売価格維持を行ったケースで、そのような「合意」をしたことを理由に販売店が独禁法違反とされたという話は聞いたことがありません。

でもそうなのであれば、再販売価格維持という行為をしたメーカーの単独行為というふうに整理するのが論理的ではないのでしょうか。しかし、そのような理屈も聞いたことがありません。

シャーマン法2条の単独行為規制は市場支配力のある者だけが対象になるので、再販売価格維持をシャーマン法1条の問題とするのは結論としては正しいと思いますが、「単独行為か共同行為か」という区別と、「違反の前提として市場支配力を要するか否か」という区別は一致しないこともあると思います。

再販売価格維持を再び例に取れば、再販売価格維持は、「単独行為」、「共同行為」という言葉を文字通りに捉えれば、単独行為なのではないかと思われます。

しかしそうすると違反の要件として市場支配力が要求されてしまって不都合だし、確かに再販売価格維持には必ず(メーカーと販売店のような)二当事者が登場するので「合意」と考えるのが常識的に収まりがよいので、「共同行為」と整理されていたに過ぎないということなのではないでしょうか。

しかも、共同行為の中でさらに垂直的制限と水平的制限があり、両者で違法要件が違ったりするので、ますます条文の整理が直感と結びつかなくなります。

特に勉強を初めて間もない人は、シャーマン法1条がカルテルのような水平的制限で、2条が垂直的制限という理解をしてしまいかねないように思います。

でもその誤解にも理由がないわけではなく、垂直的制限は制限をする側(川上業者)だけが違法となるので、言葉の素直な意味からすれば「単独行為」と呼ぶのが実は自然だともいえるのです。

要するに、市場支配力を有する者だけを対象とするのが「単独行為規制」だ(再販売価格維持などは単独で行うが市場支配力が違反の要件ではないので「共同行為規制」だ)と考える方が、物事の本質を捉えているように思います。

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