【日経法務インサイド1月4日】「公取委、クアルコムに排除命令」
1月4日日経新聞朝刊の「法務インサイド」のクアルコムの非係争条項に関する記事で私のコメントを引用していただきました。新年早々おめでたいです(笑)。
ところで、排除措置命令では「クアルコムは○○を余儀なくさせ」というフレーズが連発されており、いかにも非係争条項を無理矢理押しつけたという認定になっていますが、無理矢理押しつけたとしてもそのことが反競争性の認定にどのような影響を及ぼすのか、今ひとつよく分かりません。
優越的地位濫用であれば不当な条項を押しつけたことが違反の要件であることが素直に理解できますが、本件は一般指定13項の拘束条件付取引に該当するとされた事案です。セブンイレブンが弁当の値引きを禁じたのが(本来は再販売価格維持や拘束条件付取引で規制されそうなのを)優越的地位の濫用に該当するとされたのとは対照的です。
素朴な法感情としては、不当な条項を無理矢理押しつけるなんてけしからん、というのも理解できるのですが、それが反競争性とどういう関係に立つのでしょうか。
やや掘り下げて言えば、双方充分協議を重ねた上で非係争条項を盛り込んだ場合と、無理矢理非係争条項を押しつけた場合とで、公正競争阻害性にどのような差異が生じるのでしょう?同じ条項なのに(=当事者は同じ権利義務を負うのに)、契約締結に至る経緯次第で公正競争阻害性の有無・程度が異なったりするのでしょうか。
素朴な法感情としては「余儀なくさせた」ことに悪質性を見出す公取委の立場も理解しやすいですし、現実の実務がそういう方向である以上、私も「契約締結に際しては対等な立場で充分協議を尽くして下さい」という、当たり障りのないアドバイスをすることはありますが、その理論的根拠については今ひとつ納得できないものがあります。
クアルコムは審判で争うようですが、「余儀なくさせた」かどうかというような素人目に分かり易い議論にばかり注力せず、非係争条項がどのように(=どのような因果関係の流れを経て)公正な競争を阻害するのかという本質論が審判の場で争われることを期待したいと思います。
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