親子関係(企業結合集団)の判定時期
平成21年改正で企業結合の届出の要否が企業結合集団単位で判断されることになりました。
そこで、「企業結合集団」(=親子関係)の判定時期はいつなのか、という問題が生じます。
これは一見細かい問題のようでありながら、実務的には大問題になりえます。
公取のパブコメ回答によると、この親子関係は「企業結合行為の実施の直前を基準とすることが原則となります」とされています。
しかし実際問題として、企業結合集団における支配関係(親子関係)は実質基準で判断されることもあり、日々変わりうるものです。
さらに、親子関係の判定時期が企業結合を計画している時点と企業結合行為の実施直前で異なるために当事会社に思わぬ形で「親会社」が出現してしまった場合には、その親会社が支配している会社のみならず、その親会社を支配している会社(の究極親会社)まで遡って、全グループの国内売上高合計額を算定しなければならないことになります。
これは、場合によっては実務上大変な労力を要する作業になるかもしれません。とくに国際的な企業で世界中にグループ会社があるような場合には、手のつけようが無くなるかもしれません。
上記回答に対するパブコメも、「直近に入手可能な通期決算書(有価証券報告書、事業報告書等)の数字を基準とすればよいのか」との質問に対して、公取が明確に「ノー」と答えているものです。
確かに、法律の趣旨を素朴に捉えれば、公取の回答がもっとも素直なのかも知れません。私も正面切ってこういう質問のされ方をすれば、このような答え方をせざるを得ないかもしれません。
しかし以上のような問題があることも踏まえ、公取には柔軟な運用をお願いしたいところです。パブコメ回答でも「原則として」といっているので、例外を広く認める形でお願いしたいと思います。
« 親子会社・兄弟会社間の三社合併と独禁法の届出 | トップページ | ECの制裁金算定方法 »
「2009年独禁法改正」カテゴリの記事
- 7条の2第8項2号と3号ロの棲み分け(2015.05.02)
- 主導的役割に対する割増課徴金(2015.05.01)
- 海外当局に提供する情報の刑事手続での利用制限(43条の2第3項)(2012.11.19)
- 課徴金対象の差別対価(2012.02.20)
- 優越的地位濫用への課徴金と継続性の要件(2011.10.27)
コメント