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2009年11月 3日 (火)

優越的地位の濫用に対する課徴金

平成21年独禁法改正で優越的地位の濫用に課徴金が課されることになりましたが、課徴金が課される他の不公正な取引方法と、課徴金の算定基準が微妙に異なります。

つまり、優越的地位濫用以外については、「当該違反行為において当該事業者が供給した・・・商品又は役務」という書き方であり、課徴金対象売上が違反行為において供給された商品であるとされています。

例えば、不当廉売の場合だと廉売をした商品と同じ種類の商品(例えばガソリンスタンドならガソリン)は課徴金の対象になりますが、廉売した商品と関係のない商品(例えば同じガソリンスタンドが売るバッテリー)は課徴金の対象ではありません。常識的な結論ですね。

ところが、優越的地位濫用の場合は、課徴金対象売上が違反行為において供給された(あるいは供給を受けた)商品に限定されていません。

例えば、コンビニ業界では加盟店が売上の一定額(例えば40%)をロイヤリティとして本部に支払うのが一般的ですが、あるコンビニ本部が加盟店に対して弁当の値引き販売を禁止したことが優越的地位の濫用であるとされたとします。

この場合、課徴金の対象になるのは全商品の売上に40%を掛けたロイヤリティ全額であり、弁当の売上に対するロイヤリティだけではありません。

このように、優越的地位濫用においてだけ「違反行為において供給された商品」という基準を採用していないのは、優越的地位濫用は商品ごとになされるのではなく、当事者の地位の優劣に基づいてなされるからなのでしょう。

そのため、優越的地位濫用においては、取引の相手方の違反者に対する取引依存性をいちいち認定する必要があります。

以上のように、優越的地位濫用とそれ以外の不公正な取引方法では、課徴金の考え方が違うことがわかります。

しかし、弁当の値引きを禁じただけで全商品の売上に対するロイヤリティを基準に課徴金を課すというのは、素朴な感覚からはやや外れているように思います。実際にそういう例がこれから出てくるかも知れません。

そもそも、優越的地位の濫用という多様な違反類型において売上の1%という一律の課徴金を課すことが合理的だったのか、例えば、値引きを強要した場合には当該値引き額とかその1.5倍とか、人を派遣させた場合にはその人件費相当額とかその1.5倍とか、違法性の程度の実態に即した算定方法を考えた方が良かったのではないでしょうか。

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