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2009年11月12日 (木)

排除型私的独占ガイドライン(最終版)

排除型私的独占ガイドラインの最終版が10月28日に公表されました。

ガイドライン案と比べると、本文の記載が注に落ちたりその逆だったりというような体裁上の修正が大半で、大きな内容の変更は無いようですが、いくつか気が付いた点を記しておきます。

まず、違反類型の呼び名が、

「コスト割れ供給」→「商品を供給しなければ発生しない費用を下回る対価設定」

「リベートの供与」→「排他的リベートの供与」

と変わりました。「コスト割れ供給」というのはカジュアル過ぎる、「リベートの供与」とすると一般にリベートが悪いような印象を持たれかねない、という理由でしょうか。

次に実質的な内容の変更としては、コスト割れ販売のところで、「平均回避可能費用」を

「行為者が商品の追加供給をやめた場合に生じなくなる商品固有の固定費及び変動費を合算した費用を追加供給量で除することによって得られる商品一単位当たりの費用」

と定義し、概念的には平均回避可能費用を下回る場合には経済合理性がないとの記載が追加されました。ガイドライン案では「これは平均回避可能費用のことなんだろうなぁ」と公取の意図を読み取るしかなかったのですが、ガイドラインにおける平均回避可能費用の位置付けがはっきりしました。

さらにコスト割れ販売に関して、総費用を下回っても「商品を供給しなければ発生しない費用」(≒平均回避可能費用)以上であれば原則として違反とならないことが明記されました。

略奪的廉売のコスト基準は総費用なのか、平均可変費用なのか、平均回避可能費用なのか、あるいは限界費用なのか(それぞれの費用が何を意味するのか、またなぜそれが略奪的廉売のコスト基準となるのか、については後日整理したいと思っています)、については諸外国でも議論のあるところですが、日本のガイドラインでは、

①価格>総費用 → 常に適法

②総費用>価格>平均回避可能費用 → 原則適法

③平均回避可能費用>価格 → 原則違法

と整理されたことになります。

このこと自体は問題ないのですが、問題は、ガイドラインでは②の例外的に違法となる場合として、

「当該商品の供給が長期間かつ大量におこなわれているなどの特段の事情が認められ(る)」

場合としています。

しかし、この記述では具体的にどういう場合が違法になるのか今ひとつよく分かりません。「短期間よりは長期間のほうが違法になる可能性が高いだろう」、「少量よりは大量のほうが違法になる可能性が高いだろう」という漠然としたことは言えても、なぜ例外が認められるのかという考え方を示さないと、どの辺からが違法になるのかという物差しとして機能しないように思われます。

「商品を供給しなければ発生しない費用」をどう考えるのかにもよりますが、回避可能費用以上でも略奪的廉売となる場合(裏返せば、回避可能費用が極めて低い場合)として、商品供給のための(しばしば多額の)初期投資が既に済んでいて追加費用がほとんどかからない、例えばパソコンのソフトウェアのような場合が考えられます(追加費用はCDロム代と箱代くらいしかかからない)。

ECや米国でも略奪的廉売に関するガイドラインや報告書が出ているのですから、後発の公取はこれらの議論も参考にして、どういう場合が例外に当たるのかをもう少し具体的に示した方が良いと思います。

なお、どうでも良いことですが、目次をみると第3の2の(2)だけ、「ア」「イ」「ウ」・・・のレベルまで目次に上がっています(他の項目では(1)(2)(3)・・・のレベル止まり)。きっと統一し忘れたのでしょうね。

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