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2009年11月11日 (水)

独禁法規則改正案等パブコメ

平成21年独禁法改正に伴う規則等とパブリックコメントの結果が10月28日に公取のホームページで公開されました。いくつか目にとまった点を記しておきます。

企業結合届出規則案では、連結財務諸表規則5条1項但し書きにより非連結子会社とされる子会社(支配が一時的な子会社、連結に含めることで利害関係人の判断を著しく誤らせる恐れのある子会社)の売上高も「国内売上高」に含まれていましたが、確定版では、これらの非連結子会社の売上は国内売上に含まれないことになりました(「考え方」p1)。

同じく届出規則改正案では、株式の事前届出が困難として届出が免除される場合として「金銭の信託」が規定されていましたが、確定版では、金銭と有価証券を包括的に信託する信託契約(包括信託)も届出免除とすべく、「金銭又は有価証券の信託」が免除対象であると明記されました(p1)。

課徴金算定の基礎である売上から控除される割戻金の範囲として、施行令では「書面によって明らかな契約があった」割戻金に限ると規定されていますが、パブコメ回答では、「契約を証する書面があるのと同じであるとみられる場合」(メールなど)にも、割戻金の控除が認められるとの公取の見解が示されました(p7)。良い意味で思い切った解釈だと思います。

投資組合については何をもって「国内売上」とするのかとの質問に対して、「投資収益を国内売上高とする方向で考えていますが、今後、必要に応じて、Q&A等で考え方を明らかにしてまいります」という公取の見解が示されました(p9)。銀行・保険会社については経常収益、証券会社については営業収益とすることが規則で明記されていますが、規則で明記せずに「投資収益」を「売上」であると解釈するのは、文言解釈としてはやや疑問に思います。

「国内売上高の原則となる考え方は、商品又は役務の需要者の所在地によって国内売上高であるか海外売上高であるかを配分するというものです」という考え方が記されました(p9)。独禁法の域外適用に関するいわゆる需要者所在地国説の発想ですね。「実体に応じて適切に判断してまいります・・・」とかいうような紋切り型の回答ばかりでなく、こういう基本的な考え方を示すのは大変好ましいことだと思います。

合併と会社分割に伴って(会社財産の一部として)株式取得が生じる場合には合併・分割届出書に当該株式取得について記載すれば別途株式取得の届出は不要なのだから事業譲渡の場合にも同様の扱いにして欲しいとの質問に対して、事業譲渡(=「事事業又は事業上の固定資産」の譲渡)は株式の取得とは別個の行為なので事業譲渡とは別に株式取得自体を届け出るべき、と回答されています(p10)。形式的に考えれば確かにそのとおりなのですが、合併や分割と決定的な差はなく、実質的な理由になっていないように思われます。

企業結合集団の範囲を判断するための役員等の割合の算定基準時について、「企業結合行為の実施の直前を基準とすることが原則となります」とされています(p14)。例えば株式取得の契約の時点では企業結合集団に含まれてもクロージング時点でそのような関係が解消されていれば企業結合集団に含まれないということになりそうですが、あくまで「原則」なので、例外もあるということでしょうか。逆に、例えばA社がB社にC社株式を譲渡しようとする場合、株式譲渡契約時点ではA社とB社が同じ企業結合集団に属さなくとも、クロージング時に同じ企業結合集団に属していれば、届出不要となる、ということになりそうです。

議決権保有割合が取得直前まで確定しない場合株式取得の届出書をどう書けばよいのかとの質問に対して、取得が見込まれる最も大きな割合を記載すればよいとされています(p17)。

リニエンシーの共同申請について、共同申請と単独申請を同時に行うことは認められないとされています(p21)。その代わり、法7条の2第15項の通知(今の実務では「10項通知」と呼んでいるもの)を受ける前までは、共同報告者の一部が撤回して残りを単独(あるいは共同)申請として生かすことができる、とされています(p22)。理屈としてもっともですし、こういうのが事前に明らかになっているのは有り難いです。

パブコメをみていると、なるほどこういう問題もあるのだなと気づかされますね。

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