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2009年10月14日 (水)

累積違反課徴金と確定排除措置命令違反罪の関係

平成21年改正法で、一定の不公正な取引方法を繰り返した場合には課徴金が課せられることになりました。

これに対して、最近、課徴金賦課対象になるのは、過去に排除措置命令等を受けたのと全く同一の行為を繰り返した場合でなく、「もし、過去の排除措置命令等を受けたその行為自体を再度行ったとすると、それは、課徴金賦課対象の再犯行為ではなく、むしろ最初の排除措置命令等に違反したものであり」、確定排除措置命令等違反罪である、との見解を見ました(別冊ビジネス法務「改正独禁法」p78)。

なるほど~確かにそうだ、と思ったのですが、よく考えると必ずしもそうとはいえないのではないか、という気がしてきました。

根本的な発想として、刑罰(排除措置命令違反罪)と行政罰(累積課徴金)が課される場合をA or Bで考える(選択的に考える)必要はないのではないか、というのがあります。

つまり、刑罰は刑罰で、行政罰は行政罰で、それぞれ成立の要件を検討し、それぞれ成立要件を満たすなら両方成立したっていいじゃないか、という発想です。

結論としては、全く同じ違反行為をした場合でも(確定排除措置命令違反罪ももちろん成立しますが)累積課徴金の対象となってもいいのではないか、と考えます。どちらを使うかは公取の裁量に委ねられることになります。

全く同一の行為を繰り返した場合には累積課徴金の対象とならないとすると、「ちょっと違う違反行為である」とか、「一端は途切れて社会的に別の違反行為である」とかいうことを公取が立証しないと課徴金を課せないことになり、据わりが悪いように思います。

「全く同一の行為の場合には正々堂々と確定排除措置命令違反罪で行け」、というのも一つの考え方ですが、刑罰はそれなりに重たいものですし、バランス感覚として課徴金で済ませたい、という場合にあくまで刑罰でなきゃならん、というまでの理由はないように思うのです。

累積課徴金に関する20条の2以下の条文を見ても、全く同一の行為では課徴金を課せない、とは書いていませんし。

課徴金と罰金が両方かかるのは、不当な取引制限の場合でもあることであり、別に不自然ではないと思います。

むしろ理論的に気になるのは、「確定排除措置命令違反罪っていつまで成立しうるの?」ということです。理屈の上では、「永久に」ということなのでしょうけれど、それも極端な気がします。

やはり、外形的には同じ行為でも(例えばガソリンの不当廉売とか)、経営者が変わったとか、安売りする事情が変わったとか、前の違反から随分時間が経ったとか、何らかの事情で社会的に別の違反行為と認められる場合には、確定排除措置命令違反罪にはならない、と解するのが据わりがよいように思います。

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