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2009年10月17日 (土)

商品の供給を受けることの拒絶と課徴金

平成21年改正法で、課徴金の対象とするために不公正な取引方法が法律に格上げされ、課徴金の対象にならない不公正な取引方法が一般指定に落とされる形になりました。

例えば、共同の取引拒絶の場合、供給の拒絶だけが課徴金の対象となり(2条9項1号)、購入の拒絶は一般指定1項に規定され、課徴金の対象になりません。

これはこれで明確な切り分けだと思うのですが、疑問がないでもありません。

例えばメーカーが販売店を通じて商品を消費者に販売する、というような場合、通常は、対象商品が、メーカー→販売店→消費者と供給されていく、と考えるでしょう(当たり前すぎて意味が分かりませんね。次をお読み下さい)。

しかし同じ取引を、メーカーが、消費者に商品を販売するための「販売サービス」を販売店から購入している、と構成することもできるように思います。

つまり、メーカーは、商品を製造するためのインプットとして材料や労働力を購入するのと同じ意味で、商品を消費者に販売するためのインプットとして「販売サービス」を販売店から購入する、と考えるのです。

商品の購入拒絶は一般指定1項に該当すると考えるのが通常ですが、以上のように、メーカーが販売店から販売サービスを購入すると考えるなら、販売店による役務の供給の拒絶ということになり、法2条9項1号で課徴金の対象となる、ということになります。

その場合、課徴金対象取引額である、(他のメーカーへ提供した)販売サービスの対価をどう考えるのかは難しい問題ですが、消費者への販売額と仕入額の差額を実質的な販売サービスの対価と考えて課徴金を課す、ということも不可能ではないように思います。

以上は通常の売りきりの場合を前提に説明しましたが、委託販売(所有権は販売店に移転せず消費者に直接移転し、消費者の支払った代金はメーカーに帰属し、販売店はコミッションをメーカーから受け取る)の場合には、コミッションがまさに販売サービスの対価ですから、これを元に課徴金を計算するのは不自然ではないように思います。

翻って考えると、委託販売の場合に販売店が共同してあるメーカーの商品の取扱を拒絶すると、販売サービスという役務の供給拒絶と言うことで、課徴金の対象になることには、それほど違和感がないように思います。

そうすると、経済的実態は委託販売とさほど違わない売りきりの場合だって、以上のような理屈で課徴金を課したって、特に不自然ではないように思います。

以上、私なりのクリエイティブ(?)な解釈論を述べてみましたが、供給だけを敢えて法律に切り出して課徴金対象とした改正法の趣旨からすれば、公取がこのようなクリエイティブな運用をする可能性は低いのだろうなと思います。

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