株式取得の計画に変更があった場合の取扱い
平成21年改正で株式取得が事前届出化されたために、以下のような問題が生じ得ます。
すなわち、計画を届け出て何事もなく待機期間を過ぎた後、何らかの理由で計画で届け出ていた取得予定数と異なる数を取得したくなった場合、どうすれば良いのでしょうか(現行法では、既に終わった株式取得を報告する事後報告制度なので、このような問題は生じません)。
株式取得の計画届出書(様式4号)案では、議決権保有割合の変動予定内容(何パーセントから何パーセントに変動するか)と変動の予定日を記載することになっています。
そこで、極めて厳密に考えれば、届け出た計画と異なる場合には届出を全部やり直すべきということになりそうですが、そこまで厳密に考える必要は無いでしょう。
具体的には、届け出た取得予定を上回る数を取得する場合には再度届出をやり直す必要がありますが、取得予定を下回る場合には、再度の届出はもちろん、何らかの訂正の届出をすることも必要ない、と考えます。より多くの取得数で届け出た内容でOKをもらっているのですから、それより少ない取得数の場合(=より結合の程度が小さく、したがってより競争への影響が小さい場合)については、既にもらったOKの範囲にとどまっている(大は小を兼ねる)と考えられるからです。
しかし、さらに考えると、例えば51%取得予定ということで届け出て待機期間が経過した場合には、予定が変わって51%でなく一気に100%取得しても、別に問題ないように思います。51%取得した時点で発行会社は取得会社のコントロール下にあるのであり、それ以上の買い増しは競争に与える影響の分析という点からは余り意味がないからです。
では、待機期間後に、何らかの理由で、届け出た予定日と違う日に取得したくなった場合はどうでしょうか。
このような取得日の変更については、届出のやり直しも、何らかの訂正の届出も、原則として必要ないと考えます。何月何日に株式取得するかというのは、競争に与えるインパクトを審査する上で大して重要とは思われないからです。
ただし、取得予定日から余り何年も経った後に取得するというのは考えものです。余り時間が経つと市場の状況が変わってしまうからです。
そうすると、例えば、A社(取得会社)がB社(譲渡会社)からX社(株式発行会社)の株式を取得する場合で、仮にA社のX社に対する持株割合が現在0%で徐々に買い増していき将来的には100%取得する予定の場合に、(20%と50%の届出を1回で済ますべく)取得予定日については「取得予定日は未定」とか「取得予定は1年後から5年後」として、取得予定数については一纏めに「100%」として届け出る、ということも認められないと考えます。
なお、待機期間後に予定からの変更が生じた場合には上のような処理になると考えますが、待機期間中に変更が生じた場合には変更の届出をするべきでしょう。
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