改正法における企業結合の届出の注意点(特に海外子会社)
平成21年改正において、企業結合の当事者の規模の要件が、国内での売上高を基準、かつ、企業結合集団全体で見ることになりました。つまり、「国内売上高合計額」を基準とすることになりました。
当事者の規模要件を企業結合集団全体でみることから、以下のような場合には届出の必要性を見落とさないよう注意が必要です。
例えば、日本の会社(A社)が、その米国子会社(a社)を、他の日本の会社(B社)の米国子会社(b社)と合併させる、という場合を考えます。
そして、いずれの米国子会社(a社、b社)にも、日本での売上は無いものとします。
つまり、感覚的には、完全に米国の会社同士の合併です。
しかし、この場合でも、日本の独禁法上の届出が必要になることがあります。
というのも、合併の当事者規模要件は企業結合集団でみるからです。条文の用語では、a社またはb社の一方の「国内売上高合計額」が200億円超、他方のそれが50億円超であれば、規模要件を満たすことになります。
例えば、A社の国内売上高が200億円超、B社の国内売上高が50億円超、といった場合です。この場合、合併の当事会社であるa社およびb社の国内売上高はゼロであるにもかかわらず、規模要件を満たすことになるのです。
上の例ではB社を日本企業としましたが、B社が米国企業であったりすると、ますます日本の独禁法のことは忘れてしまいがちです。
しかし、米国企業であるB社に、合併当事会社であるb社以外のbb社という日本の子会社(現地法人)が存在することは十分にあり得ます。そして、bb社の国内売上高が50億円超なら、b社の属する企業結合集団の「国内売上高合計額」は50億円を超えるので、日本の独禁法上の届出が必要ということになります。
このような、やや感覚とずれた結果になってしまうのは、企業規模要件を企業結合集団一本やりで見ることにしたためです。合併当事者単体での最低限の国内売上高を定めればこういう事態は避けられたと思いますが、きっと規定が複雑になるのを避けたのでしょう。
いずれにせよ、日本にまったく売上のない海外の子会社の合併の場合にも日本の独禁法の届出が問題になるので、注意して下さい。
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